iDeCo(イデコ)と呼ばれる個人型確定拠出年金を活用して、老後資金を準備する人が増えています。
しかし、「60歳まで出せないのは構わないけど、その前に自分が死んだらどうなるの?」と考える人もいるでしょう。
今回は、iDeCoの加入者が亡くなった場合にどうなるのか、具体的にお伝えします。
iDeCo(イデコ)加入者の死亡時は「受取人」が受給できる
「自分が受給する前に死んだら、それまで貯めてきたお金は消えて無くなってしまうの!?」と、相談時に非常に心配される人もいますが、無くなることはないため安心してください。
iDeCoは公的な制度ですが、あくまでも加入者の「個人口座」で積み立てていくものであり、加入者が死亡した場合は遺族などがその資産を受け継ぐ(=相続する)のが、基本的な考え方です。
その際、下記ルールに基づき「受取人」が死亡一時金という形で残余資産を受給できることになっています。
ポイントは、受取人を指定していたかどうかですので、この点を軸に以下を確認しましょう。
事前に親族の誰かを「受取人」に指定していた場合
加入者は、あらかじめ本人の「配偶者、子、父母、孫、祖父母または兄弟姉妹」の中から死亡一時金の受取人を指定することができます。
指定していた場合、一般的な「相続順位」とは関係なく、その受取人が優先的に受給できます。
事前に「受取人」を指定していなかった場合
もし受取人の指定がなければ、法令に基づく受取人の順位が考慮されます。
詳細は以下の通りです。
順位 | 受取人 |
第一順位 | 配偶者(事実婚も含む) |
第二順位 | 子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹であって、死亡の当時、主としてその収入によって生計を維持していた者 |
第三順位 | 第2順位の者のほか、死亡の当時、主としてその収入によって生計を維持していた親族 |
第四順位 | 子、父母、孫、祖父母および兄弟姉妹であって、第2順位に該当しない者 |
なお、同順位内はその並びの順番によりますので、例えば第二順位の中では子が最優先され、その後は父母・孫と続きます。
また、子が2人いた時など同順位者が2人以上いる場合は、その人数によって等分して支給されます。(実務上は代表者に一括して支給されるようです。)
配偶者が第一順位ですが、事実婚も含む点も確認しておきたいですね。
受給するには受取人による所定の手続きが必要
先述の通り、受取人の設定次第で受給者は変わります。
いずれの場合でも、iDeCoの残余資産を死亡一時金として受給するには、受取人(または法令に基づく受取人)による裁定請求が必要です。
なお、死亡に伴うiDeCoの裁定請求は、遺族年金などの手続きとは連動しておらず、加入者が死亡したら自動的に受給できる仕組みではない点には注意しましょう。
そのため、iDeCo加入者の方は、指定した受取人や配偶者・子などにiDeCoに加入していることと、万が一の時は手続きが必要である旨を伝えておいてください。
ここで、「iDeCoの加入者の多くは受取人を指定しているのだろうか」という疑問が浮かぶかもしれません。
実はiDeCo加入者のほとんどが受取人を指定していないのが実情です。
これは、iDeCoの場合、生命保険などと異なり受取人の指定は必須でないため、iDeCo加入時の手続きでほとんどの金融機関(運営管理機関)が省略しているからです。
よって、受取人を指定したい場合は、ご自身で加入している金融機関へ申し出る必要があるので、コールセンターなどを経由して受け取り人を設定しておくと良いでしょう。
※受取人の指定状況は、iDeCoの加入者サイトで確認できます。
iDeCo(イデコ)の給付時と死亡一時金の違い
おそらく、新規加入者や増額を検討中の人にとって、「60歳以降の受給時と比べて死亡時はデメリットがあるのか」も気になるかと思います。
60歳以降の給付時と加入中の死亡時の違いを以下にまとめました。
【60歳以降の受給時】3つの選択肢がある
iDeCoの加入者が、運用実績に応じて60歳以降に受け取るお金を「老齢給付金」と言いますが、その受け取り方は下記3つから選ぶことができます。
- 一時金受給(貯まった資金を全て一括で受け取る)
- 年金受給(貯まった資金を「10年」などに分割して受け取る)
- 併給(一時金と年金を組み合わせて受け取る方法で、運営管理機関ごとに取り扱いの可否は異なります)
【死亡時】「死亡一時金」のみ
一方、iDeCoの加入者が亡くなった時に遺族が受け取る給付金は、老齢給付金と違って選択肢が無く、「死亡一時金」という一時金での受け取りしかありません。
なお、死亡した時点の運用成果などに基づく資産残高ではなく、受取人が「裁定請求」という手続きをしてから投資信託などの残余資産が現金化され、受給金額が決まります。
死亡時が大きく不利とは言えないものの老齢給付のほうが柔軟性は高い
先述の通り、死亡時は一時金でしか受け取ることができないという制限があることを考えると、死亡時の給付は老齢給付よりも不利になってしまうのでしょうか?
結論としては、大きなデメリットがあるとまでは言えないものの、老齢給付のほうが柔軟性が高いといえます。
60歳以降にiDeCoで積み立てたお金を受け取る場合、年金受給または一時金と年金の併給を活用すると、資金が無くなるまでの間ずっと運用を継続できます。
ここでは詳細は割愛しますが、年金タイプでの受給は約20年間かけた長期的な受給を選べる金融機関も多く、それだけ長い期間があれば、受給中も運用を続けることによる運用成果の期待値も大きくなります。
しかし、死亡一時金は、年金受給を上手に活用するという選択肢がなく、そもそも一時金で受け取るしかなく、死亡時の給付のやや不利な点といえるでしょう。
ただし、死亡一時金にしても老齢給付の一時金受給にしても、「受給したお金を自分で運用する」ことは、当然ながら可能です。
遺族が受け取ったお金の一部を運用に回して育てていくことで、年金受給で運用し続けるのと同様の効果が期待できます。
「死亡時はまとめて受け取るしかなく、不利だな」と思わず、遺族が受け取った一時金をさらに運用に回すなどすることで、年金タイプで受け取れないというデメリットを小さくできるでしょう。
まとめ
今回は、iDeCo(イデコ)加入時に、加入者が亡くなった場合についてお伝えしました。
本記事の内容を通して最もお伝えしたいのは、「iDeCo加入中に万が一死亡したとしても、大きな不利益・デメリットはない」ということです。
お金が消えて無くなることもなければ、運用や税金面で何か大きなペナルティがあるわけでもありません。 iDeCoは「税金の優遇」と「期待できる運用効果」の二点から、長期的な老後資金づくりの最強の制度といわれています。
あまり万が一のデメリットを気にし過ぎず、積極的な活用を検討しましょう。
弊社では、受給時の税制面や死亡時の取り扱いなどについてもきちんと説明することを心がけています。
「iDeCoって最近よく聞くし、とりあえず加入しておけばいいか」といった安易な考えはせず、1人ひとりに応じたコンサルティングをさせていただきますので、ぜひお気軽にご相談ください。