高齢化が進む中、介護は切っても切り離せないテーマですが、昨今さらに増えているのが、独身者が抱える介護の悩みや、鬱などの精神病患者を支える家族の悩みです。
たとえば両親は既に年金生活で、息子または娘である自分が一緒に同居して仕事と介護を両立させるような場合には、介護の負担が大きくなった際に仕事を休まざるを得ない時もあるでしょう。
また、必ずしも身体的なものだけではなく、精神的な症状により常にそばで心の支えにならなければならないときもあるでしょう。
そういった際に助けとなる制度が「介護休業給付」です。
本記事では、介護休業給付がどういった場合に有効なのか、また、具体的にどれぐらいもらえるのかといった気になるポイントをわかりやすく解説していきます。
介護休業給付とは
介護休業給付は、家族を介護するために仕事を休む場合に支給される雇用継続給付のひとつです。
男女問わず支給され、介護中は3回に分割して取得でき、通算で最高93日間支給されます。
「休業」給付のため、あくまでも職場復帰を前提としており、支給には以下の要件をクリアする必要があります。
◆支給要件◆
- 介護休業を開始した日前2年間に、被保険者期間が12か月以上あること
- 有期雇用労働者の場合は上記要件に加え、介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日から6か月を経過する日までにその労働契約が満了になることが明らかでないこと
※参考元:厚生労働省ホームページ「Q&A~介護休業給付~」
93日を経過する日、つまり介護休業給付を最大限受給できる期間から、少なくとも半年以上は必ず同じ職場で働くことが大前提ということです。
さらに、介護の状況によっても受給できるかどうかが変わります。
◆対象となる介護状況◆
- 負傷、疾病又は身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護(歩行、排泄、食事等の日常生活に必要な便宜を供与すること)を必要とする状態にある家族※を介護するための休業であること
※対象家族は、被保険者の「配偶者(事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む)」「父母」「子」「配偶者の父母」「祖父母」「兄弟姉妹」「孫」です。また、養父母、養子なども含まれます。
- 被保険者が、その期間の初日及び末日とする日を明らかにして事業主に申し出を行い、これによって被保険者が実際に取得した休業であること
※参考元:厚生労働省ホームページ「Q&A~介護休業給付~」
老化による身体的な介護のみならず、対象が孫まで含まれる点や、精神的な症状の介護にも適用される点がポイントです。
また、不正受給を防ぐために、勤め先にも介護のための休業であると認められていることが必須条件です。
介護休業給付の支給額について
それでは、実際に受けられる給付額はどれぐらいになるのでしょうか。
介護休業給付の計算方法は、ずばり以下の通りです。
~介護休業給付計算式~
休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
元となる休業開始時賃金日額の算出方法は以下の通りです。
~休業開始時賃金日額計算式~
休業開始前6か月の総支給額※ ÷ 180
※賞与を除いた、保険料等が控除される前の金額
所得状況により大きく差が出てくることにはなりますが、たとえば休業開始時日額が5,000円で、1ヶ月間給付を受けた場合には
5,000円 × 30日 × 0.67 = 100,500円
日額だとイメージしづらいかもしれませんが、日額5,000円は月給約15万円ですので、月給15万円ぐらいの人が1か月間介護で休業した場合の給付額目安が約10万円ということです。
同じように計算していくと、それ以上の所得の場合の目安は以下の通りです。
月給約20万円の場合…13万4千円程度
月給約30万円の場合…20万円程度
月給約40万円の場合…26万8千円程度
いずれも介護休業期間が1ヶ月だった場合の給付額目安です。
介護休業給付は3回に分けて通算93日まで受給できますが、一度の支給期間は原則30日まで(介護休業終了日が含まれる期間はその終了日まで)と決められていますので、上記給付額目安が一度に受け取ることができる金額の最大値になります。
※参考元:厚生労働省ホームページ「Q&A~介護休業給付~」
介護休業給付を受ける際の注意点
介護休業給付を受ける際にはいくつか注意点もあります。
給付を受けられないケースはもちろんですが、逆に実は給付が受けられるというケースも併せてご紹介しますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
注意点①休業期間中に休業前の賃金の80%以上が支払われている場合はNG
介護休業給付は、あくまでも介護のために仕事ができなくなることにより著しく減少してしまう収入を補う制度ですので、休業前の賃金の80%以上が支払われている場合には支給されません。
また、80%に満たない場合でも、収入額に応じて減額されることもありますのでよく確認しましょう。
※厚生労働省ホームページを参考に、筆者にて図解作成
注意点②別の休業給付との併給は不可
育児休業給付などの別の休業給付と介護休業給付との併給はできません。
休業自体も給付が発生するものに関してはいずれかひとつを選ばなければなりませんので、介護休業中に育児休業を取得した場合にはその日から介護休業は終了し、給付も停止されます。
注意点③症状が変わっても同じ対象家族に使える休業給付は93日まで
一度の介護で上限の93日間まで給付を受け復帰した後、要介護状態が変わって再び介護休業を取得した場合でも、同じ対象家族は再度給付を受けることはできませんので注意しましょう。
たとえば、会社員Aさんが母親の介護のために70日間介護休業給付を受給し職場復帰した後、母親が要介護4に認定されてしまい更なる介護が必要となった場合でも、給付はあと23日間しか受けられません。
※厚生労働省ホームページを参考に、筆者にて図解作成
注意点④二人で一人の対象家族を介護する場合は併給可
複数の家族と協力して一人を介護する場合は、介護者はそれぞれ給付を受けることが可能です。
たとえば、夫Aさんの母親を介護するために、妻と夫の二人とも同時に介護休業を取得した場合は、支給要件を満たしていれば対象家族が同じであってもいずれも給付を受けることができます。
※厚生労働省ホームページを参考に、筆者にて図解作成
また、要介護者とは同居していなくても給付の対象ですので、介護休業中だけ実家に帰って介護したような場合も支給対象です。
注意点⑤2週間以内の休業の場合も受給可
介護状態の要件としては「2週間以上にわたり常時介護が必要である状態にある家族を介護すること」がありますが、これは介護状態を示すものであり、自宅で介護を受ける期間は必ずしも2週間以上でなくても構いません。
たとえば25日間の介護が必要で、そのうち病院に入院できる期間が15日だった場合、入院前の10日間だけ自宅で介護するために休業するという場合には10日分の介護休業給付が支給されます。
※厚生労働省ホームページを参考に、筆者にて図解作成
「休業期間が2週間以上だから…」と思っていると損をしてしまいますので、気を付けましょう!
まとめ
- 介護休業給付は介護中の収入減を補うものであり、職場復帰が前提の制度
- 対象となる介護は精神的な症状のケアも含まれる
- 他の休業給付との併給は不可
- 一人の介護につき受けられる給付は93日まで!介護状態が変わったとしても再受給は不可
- 介護自体が2週間以上にわたるものであれば、2週間以内の休業でも受給は可能
将来的にどのような状況になっても、介護休業給付は一人につき93日までという上限があることが一番気を付けなければならないところですが、注意点をきちんと理解し、計画的に活用すれば介護休業給付は仕事を継続していくための大きな助けとなります。
また、一般的な介護と比べるとまだ補助制度の少ない精神面の病気についてもケアをすることができるのも、介護休業給付の魅力です。
会社員の方はぜひ積極的に活用していきましょう。
同時に、万が一給付上限に達してしまった後のことも考え、日頃から万が一の際のお金を備えていくことも大切です。
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