このように、退職金の相場について気になっている方も多いのではないでしょうか?
退職金は、老後の生活設計を左右する重要な資金源です。とくに近年は退職金制度の縮小や廃止も進み、対策が必須の時代となっています。
本記事では、企業規模や業種、勤続年数別の退職金相場を詳しく解説。
さらに、退職金が少ない場合に老後資金を確保するための具体的な方法まで、実践的にご紹介します。
・退職金の相場はいくら?基本知識と平均額を解説
・企業規模別にみた退職金相場
・業種別にみた退職金相場
・勤続年数別にみた退職金相場
・【退職金】少ない・もらえない人が老後資金を確保する3つの方法
・まとめ
退職金の相場はいくら?基本知識と平均金額を解説

そもそも退職金とは?仕組みや支給条件
退職金は、長年勤めた従業員への労いとして企業が支払う一時金や年金形式の報酬です。
支給方法は「退職一時金制度」「確定給付企業年金(DB)」「確定拠出年金(DC)」などがあり、企業ごとに制度設計が異なります。
退職一時金の場合、基本的には勤続年数に退職時の基本給を乗じた金額になるため、勤続年数が長いほど支給率が高くなるのが一般的です。
ただし、企業の規模や財務状況、業界ごとの慣例などが金額に大きく影響します。
退職金の全国平均額
厚生労働省「就労条件総合調査(2023年)」によると、定年退職時の平均退職金額は以下の通りです。
- 大学卒(定年退職):約1,896万円
- 高校卒(定年退職):約1,682万円
(※勤続20年以上かつ45歳以上の退職者)
ただし、退職金は企業規模などによって大きな差があります。次章で詳しく見ていきましょう。

企業規模別にみた退職金相場

大企業の退職金相場
厚生労働省(中央労働委員会)の令和3年度調査によると、大企業(調査では資本金5億円以上かつ労働者1,000人以上)の退職金は以下の通りです。
大学卒は22歳、高校卒は18歳で入社し、同一企業に定年退職するまで勤務した場合です。
- 大卒定年退職:約2,230万円
- 高卒定年退職:約2,017万円
参照:中央労働委員会「令和3年賃金事情総合調査(確報)」
大企業は退職金制度が維持されている割合が高く、業績による上乗せ支給や、役職者にはさらに加算があるケースも少なくありません。
中小企業の退職金相場
一方、東京都産業労働局の令和4年度調査によると、中小企業の退職金相場は以下が目安とされています。
卒業後すぐに入社し、同一企業に定年で退職するまで勤務した場合の「モデル退職金」です。
- 大卒定年退職:約1,092万円
- 高卒定年退職:約994万円
参照:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
また、中小企業では退職金制度自体が存在しないケースもあり、全体の2〜3割の企業が「退職金なし」というデータも出ています。
参照:厚生労働省「就労条件総合調査(2023年)」
退職金への依存度が高いと、老後資金計画に大きなリスクが生じるため注意が必要です。
公務員の退職金相場
公務員の退職金は法令に基づいており、基本的には民間より安定して支給されます。
職種によっても大きく異なりますが、国家公務員、地方公務員の退職金目安はそれぞれ平均約2,100万円(定年退職の場合)となっています。
参照:内閣人事局「退職手当の支給状況」
参照:総務省「給与・定員等の調査結果等」
公務員は直接的な景気の影響を受けづらく、計画的に老後資金を準備しやすいのが特徴です。
業種別にみた退職金相場

業種別に見ると、同じ勤続年数・学歴でも金額に大きな開きがあります。以下は主な業界の平均退職金額です。
業種 | 退職金相場(大卒者) |
建設業 | 1,220万円 |
製造業 | 1,069万円 |
情報通信業 | 1,193万円 |
運輸業・郵便業 | 1,332万円 |
卸売業・小売業 | 1,133万円 |
金融業・保険業 | 1,442万円 |
不動産・物品賃貸業 | 1,013万円 |
学術研究・専門・技術サービス業 | 965万円 |
生活関連サービス業・娯楽業 | 847万円 |
教育・学習支援業(学校教育を除く) | 1,245万円 |
医療・福祉 | 342万円 |
その他サービス業 | 904万円 |
参照:東京都産業労働局「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」
金融・保険業界などは比較的高めの水準になっている一方、医療・福祉業界などは全体的に水準が低く、十分な退職金が得られないケースが目立ちます。
勤務年数別にみた退職金相場

勤務年数による相場の目安を示すと、以下のようになります。
※大学卒、高校卒ともに「事務・技術労働者」「総合職相当」「退職一時金制度」の場合
【大学卒】
勤続年数 | 自己都合による退職 | 会社都合による退職 |
---|---|---|
10年 | 約180万円 | 約310万円 |
20年 | 約727万円 | 約953万円 |
30年 | 約1,707万円 | 約1,915万円 |
【高校卒】
勤続年数 | 自己都合による退職 | 会社都合による退職 |
---|---|---|
10年 | 約138万円 | 約214万円 |
20年 | 約557万円 | 約665万円 |
30年 | 約1,197万円 | 約1,368万円 |
参照:e-Stat「賃金事情等総合調査 退職金、年金及び定年制事情調査」
このように、長く勤めるほど累積して金額が増える設計となっているため、転職を繰り返すと退職金の額はどうしても伸び悩みます。
そのため、キャリア設計と老後資金計画はセットで考えることが重要です。
【退職金】少ない・もらえない人が老後資金を確保する3つの方法

iDeCo
iDeCo(イデコ)は、自分で作る年金制度(個人型確定拠出年金)のことです。
公的年金(国民年金・厚生年金)にプラスして、老後資金を自分で積み立て、運用して増やしていく仕組みです。
最大のメリットは、掛金が全額所得控除されるなどの税制優遇が受けられる点です。
iDeCoの主な特徴
① 掛金を自分で拠出し、自分で運用
投資信託(株式・債券など)や定期預金などから自分で運用商品を選び、毎月一定額を積み立てて運用していきます。
② 原則60歳まで引き出せない
iDeCoは老後資金形成が目的のため、基本的には60歳まで引き出し不可です。
(加入年数や開始年齢によっては受け取り開始年齢が遅くなることもあります)
③ 税制優遇が大きい
iDeCoには「3つの税制メリット」があります。
税制優遇の内容 | 詳細 |
---|---|
掛金の所得控除 | 毎年の掛金が全額所得控除 |
運用益非課税 | 通常約20%かかる税金がゼロ |
受取時も控除 | 退職所得控除or公的年金控除が適用 |
NISA
2024年からNISAの制度が大きくリニューアルされました。最大の特徴は、制度が恒久化され、非課税投資枠が大幅に拡充されたことです。
NISAの主な特徴
① 制度の恒久化
従来のNISA(一般NISA・つみたてNISA)は期間が設けられていましたが、新NISAは恒久制度となり、期限を気にせず長期運用が可能になりました。
② 2つの投資枠
新NISAは、以下の2つの投資枠で構成されています。
年間投資枠 | 投資対象商品 | |
---|---|---|
つみたて投資枠 | 年間120万円 | 積立型の投資信託など(長期・積立・分散投資向け商品) |
成長投資枠 | 年間240万円 | 個別株、ETF、投資信託など(より幅広い商品が対象) |
2つは併用することもできるため、年間で最大360万円までの非課税投資が可能です。
③ 非課税保有限度額
新NISAでは、生涯非課税限度額が1,800万円に設定されています。
※このうち、成長投資枠は最大1,200万円まで
この枠を使い切るまでは、毎年コツコツ投資が続けられます。
④ 非課税期間は無期限
従来は非課税期間が5年や20年と制限がありましたが、新NISAでは非課税期間が無期限になりました。これにより、じっくり長期投資することが可能です。
個人年金保険
個人年金保険は、将来の老後資金づくりのために民間の保険会社が提供する年金保険商品です。
契約時に決めた期間、保険料を積み立てて、60歳や65歳など決めた年齢から一定期間または一生涯、年金として受け取れる仕組みです。
個人年金保険の主な種類
① 確定年金
年金受取り開始後、被保険者の生死に関係なく契約時に決めた一定期間(例:10年、15年)、年金を受け取れる。
年金受取期間中に被保険者が死亡した場合は、残りの期間に対応する年金、または一時金を受給できる。
② 終身年金
年金受取り開始後、亡くなるまで一生涯、年金を受け取れる。
③ 有期年金
年金受取り開始から一定期間(例:10年、15年)のみ受け取れる。期間終了後は年金は終了。


まとめ

退職金は、私たちの老後資金計画において非常に重要な役割を果たします。
しかし、企業規模や業界、勤続年数、さらには退職理由によって金額は大きく異なり、必ずしも期待通りの金額が受け取れるとは限りません。
iDeCoやNISAなど、税制メリットのある制度を積極的に活用し、コツコツと老後資金を準備して、将来の安心につなげていきましょう。
退職金や老後資金について不安な方は、お気軽にFPオフィスあしたばにご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【あしたばライター:藤元綾子】
弊社横浜のFPオフィス「あしたば」は、創業当初からiDeCo/イデコや企業型確定供出年金(DC/401k)のサポートに力を入れています。
収入・資産状況や考え方など人それぞれの状況やニーズに応じた「具体的なiDeCo活用法と注意点」から「バランスのとれたプランの立て方」まで、ファイナンシャルプランナーがしっかりとアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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