体が不自由になると、今までの自宅の設備では生活しづらくなってきます。
在宅介護を行う場合、被介護者が自立して生活できるように手すりを付けたり、段差をなくしたり、自宅を改修したいケースが出てくるでしょう。
そんなとき、介護保険を使えば一定額が支給され、改修費の負担を少なくできます。
そのため、介護保険の住宅改修について理解しておくことが大切です。
この記事では、介護保険における住宅改修の基本や住宅改修でできること、住宅改修の流れまでわかりやすく説明します。
介護保険の住宅改修について疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてくださいね。
介護保険についての疑問、ご自身やご家族の老後の生活について不安がある方は、ぜひ私たちあしたばにご相談ください!
介護保険を使って住宅改修ができる!
手すりの取付けや扉の取替えなど、介護が必要になっても住み慣れた自宅で生活し続けられるように、介護保険を使って自宅を改修することができます。
ここでは、対象者や支給額の上限について説明します。
順に解説します。
介護保険における住宅改修の支給対象者
支給の対象となる要件は以下のとおりです。
- 要支援・介護認定を受けている
- 介護保険被保険者証に記載の自宅で生活している
上記の両方を満たす必要があります。
要支援は1〜2、要介護は1〜5の区分がありますが、区分に関係なく認定されれば支給対象になります。
介護保険における住宅改修の上限
住宅改修の支給限度基準額は20万円です。
基準額は要支援・要介護の区分に関係なく一律20万円ですが、自己負担割合によって支給の上限額が異なります。
支給の上限額は次のとおりです。
自己負担割合 | 支給の上限額 |
---|---|
1割 | 18万円(20万円×9割) |
2割 | 16万円(20万円×8割) |
3割 | 14万円(20万円×7割) |
ここで、具体的な支給額の例を挙げてみましょう(9割が支給される場合)。
例①15万円の改修を行った場合
- 支給額:13.5万円(15万円×9割)
- 自己負担額:1.5万円(15万円-13.5万円)
例②30万円の改修を行った場合
- 支給額:18万円(20万円×9割)
- 自己負担額:12万円(30万円-18万円)
改修費用が20万円までなら1割の自己負担、30万円でも半額以下で改修できます。
しかし、こういった制度を利用しても、介護期間の全体を通して約580万円以上の費用が必要だというデータがあります(※)。
(※参照:生命保険文化センター | 介護にはどれくらいの費用・期間がかかる?)
「公的な介護保険だけでは貯金が足りなくなるかも⋯」と不安がある方は、民間の介護保険も検討してみましょう。
民間の介護保険の必要性については、こちらの記事をご確認ください。
介護保険の住宅改修でできること6つ
介護保険の対象になる住宅改修は以下の6種類です。
順に解説します。
①手すりの取付け
転倒防止や移動のために廊下、浴室、トイレなどに手すりをつける工事です。
手すりがないと介助が必要だった人でも、手すりをつけることにより自分で歩いたり、一人でトイレに行けたりできるようになるでしょう。
②段差の解消
ほんの少しの段差でも転倒の原因になったり、車椅子で移動する際の障壁になったりしますよね。
転倒防止や車椅子での移動を楽にするために、段差を解消する工事にも介護保険が使えます。
例えば、敷居を撤去したり、スロープを設置したりする工事があります。
③床や通路の材料変更
床や通路の材料を変更する工事も介護保険の対象です。
浴室や廊下の床を滑りづらい材質に変更したり、介護ベッドを置くために畳の部屋をフローリングに替えたりする改修が該当します。
④扉の取替え
開き戸を引き戸や折戸、アコーディオンカーテンに取り替える工事です。
開き戸は前後に動く動作が発生するため、被介護者にとっては使いづらいもの。
開き戸を引き戸や折戸に替えることで扉の開閉がスムーズにでき、転倒の予防になるでしょう。
⑤トイレの便座の取替え
和式便座から洋式便座への取替え工事が対象です。
和式便座では、かがむ必要があったり、かがんだ姿勢から立ち上がれなかったり、体が不自由になると自分で排泄することが難しいでしょう。
和式便座を洋式便座に替えると、スムーズに用が足せるようになり、介護者の負担も軽減します。
⑥上記の工事に付帯して必要になる改修
上記の工事をする際に必然的に必要になる工事も、介護保険における住宅改修の対象となります。
例えば、以下の工事が該当します。
- 手すりを設置するための下地の補強
- 扉を設置するための壁や柱の補強
- 便座交換のための給排水設備の工事
- 便座交換のための床材の変更
介護保険の対象外となる住宅改修
「介護のため⋯」と思って工事を検討しても、介護保険の住宅改修の対象外になるものもあります。
介護保険の対象外となる住宅改修には、以下のようなものが挙げられます。
順に確認しましょう。
①浴室の段差を解消するためにすのこを設置した場合
浴室の段差を解消するための浴室内すのこは、介護保険の住宅改修の対象外です。
浴室内すのこは、特定福祉用具の入浴補助用具に該当し、福祉用具購入の支給対象となるためです。
②リフトや昇降機を設置した場合
リフトや昇降機など、動力で段差を解消する機器の設置は住宅改修の対象外です。
しかし、リフトについては介護保険を使って安くレンタルすることは可能です。
③洋式便座を洗浄機能付きの洋式便座に取替えた場合
もともとが洋式便座のトイレで、洗浄機能が付いた洋式便座に取り替えることは介護保険の住宅改修の対象外です。
便座の取替えの支給対象は、かがんだり、立ち上がったりする際の困難の解消を目的としており、洗浄機能は関係ありません。
和式便座から洗浄機能付きの洋式便座に取り替える場合は支給されます。
介護保険の住宅改修の流れ
介護保険における住宅改修の流れは以下のとおりです。
- ケアマネージャーに相談する
- 住宅改修業者を選び、見積を依頼する
- 工事前に自治体に書類を提出する(事前申請)
- 申請が通れば施工を開始する
- 完成、業者へ支払いをする
- 工事後に自治体に改修費の支給申請をする(事後申請)
改修費を支給してもらうには、工事前の事前申請と工事後の事後申請が必要です。
事前申請で保険給付に必要な改修かを判断され、事後申請によりきちんと適切な工事が行われたかがチェックされます。
事前申請と事後申請の必要書類は以下のとおりです。
- 支給申請書
- 工事費見積書(複数の業者からの見積が望ましい)
- 住宅改修が必要な理由書
- 完成予定の状態がわかるもの(写真や間取り図など)
- 住宅改修費用の領収書
- 工事費内訳書
- 完成後の状態を確認できるもの(改修前後の写真など)
- 住宅所有者の承諾書
事後申請後に正式に支給が認められれば、数ヵ月後に支給額が振り込まれます。
介護保険で住宅改修をするときのよくある質問
最後に、介護保険を使って住宅改修をするときのよくある質問に回答します。
2回目もできる?
ただし、上限の20万円を使い切っていない場合は、複数回の改修を行えます。
また、一人1回なので、お父様の介護保険で住宅改修をした後にお母様も要介護認定を受けた場合などには、同じ家に対してもう一度介護保険を使った工事ができます。
さらに、20万円を使い切っていても、以下の場合は枠がリセットされて20万円が復活します。
どのような場合か詳しく解説します。
介護の必要度が3段階以上上がった場合
要支援・要介護度の区分に応じて、介護の必要度は以下のよう6段階に分けられます。
介護の必要度の段階が3段階以上アップすれば、20万円の枠がリセットされます。
例えば、要支援1のときに介護保険を使って手すりを取り付けていても、要介護3になったときに20万円の枠がまるまる使えます。
別の家に引っ越した場合
引っ越し先で工事が必要になった場合は、再度20万円の枠が使えます。
そのため、住所変更の手続きをしていない場合や、一時的にお子さまの家に身を寄せている場合にはリセットされません。
前述の介護の必要度が上がった場合のリセットは1回きりですが、引っ越した場合は何回でもリセット可能です。
入院中でもできる?
入院中だったり、施設に入居していたりする場合は、支給の対象外です。
ただし、退院や退去により自宅に住むことが決まっている場合は、介護保険を利用する予定で退院前に住宅改修を行えます。
実際に退院してから支給申請を行うため、退院しないことになった場合は申請できません。
自分で工事した場合は対象になる?
施工業者に頼まずご自身や家族が工事した場合、材料費は支給の対象となります。
手すりの設置など簡単なものはDIYするのも、費用を抑える一つの手でしょう。
まとめ:介護保険の住宅改修により住み慣れた家で自立した生活を
今回は、介護保険における住宅改修について詳しく解説しました。
最後に、介護保険の住宅改修でできることを確認しておきましょう。
自宅を改修して自立した生活がしやすくなれば、被介護者の自己肯定感も上がり、介護者の負担も軽減されます。
介護費用について不安がある方は、ぜひ私たちあしたばにお気軽にお問い合わせください。
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