退職後、次の就職先が決まっていない場合、以下の手続きが必要になります。
- 雇用保険と失業手当
- 健康保険
- 年金
- 税金(住民税、所得税)
前回の記事では「①雇用保険と失業手当」について解説しました。今回は②~④について解説していきます。
(できるだけ“簡単に・分かりやすく”いきたいと思いますので、細かいルール・用語の説明は一部省きながら進めていきます。ご容赦ください。)
健康保険の手続き
会社勤めの方の場合、多くは会社の健康保険に加入しています。そのため、退職に伴い次の3通りのうちどれかの方法を取る必要があります。
- 国民健康保険に加入する
- 前の会社の健康保険の任意継続被保険者制度を利用する
- 家族の扶養に入る
①国民健康保険 | ②任意継続被保険者制度 | ③家族の扶養 | |
条件 | 特になし | 特になし | 家族の健康保険組合に確認(退職後の収入条件があることが多いです。) |
いつまでに | 退職の翌日から14日以内 | 退職の翌日から20日以内 | |
どこで | 市区町村役場(国民健康保険担当窓口) | 加入していた健康保険組合または地域の社会保険事務所 | |
必要なもの | ①次のうちどれか1通 ・健康保険被保険者資格喪失証明書 退職証明書 離職票 ②各市区町村で定められた届出書 ③印鑑 | ①健康保険任意継続被保険者資格取得申請書 ②住民票 ③印鑑 | |
保険料 | 市区町村により異なる | それまでの保険料の倍額程度(上限あり) | なし |
転職したら | 転職先の健康保険へ加入手続きをします。 |
地域や健康保険組合によって異なる部分が多いため、直接ご確認ください。
ちなみにご自身が加入していた健康保険組合は保険証の「保険者名称」で確認ができます。
年金の手続き
失業期間中は国民年金へ加入する必要があります。
前職が会社員で、配偶者の方が専業主婦(夫)の場合は注意!
ここで年金の被保険者について簡単におさらいをします。
- 第1号被保険者:国民年金のみに加入している方。自営業やフリーランス、学生、無職の方。
- 第2号被保険者:国民年金に加えて厚生年金や共済組合に加入している方。会社員や公務員の方。
- 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている、年収130万円未満の配偶者の方。保険料を納めなくても国民年金の被保険者となり、年金の受給資格を得ることができます。
ご自身が「第1号被保険者」となると、その配偶者の方は「第3号被保険者」ではなく、「第1号被保険者」となり、保険料を納める必要があります。
そのため、ご自身と同様に配偶者の方の種別変更の手続きを行う必要があります。
国民年金の加入手続き | |
いつまでに | 退職後14日以内 |
どこで | 市区町村役場の国民年金窓口 |
必要なもの | ①年金手帳 ②印鑑 ③離職票や退職証明書など退職日の確認できる書類 ※配偶者(第3号被保険者)の種別変更手続きを行う場合は ・配偶者の年金手帳 ・手続を行うための委任状 |
保険料 | 月額16,540円(2020年度) 退職日が月末でない場合は退職する月の分から第1号被保険者として保険料を納付することになります。 |
転職先に 入社したら | 転職先の会社へ、年金手帳(第3号被保険者となる配偶者の方がいる場合は配偶者の年金手帳も)を提出し、厚生年金保険の加入手続きを行ってもらう。 |
税金の手続き
住民税
失業手当には住民税は課税されません。
ただし住民税は「前年の分を今年払う」という仕組みのため、今年払う分(=前年の分)がまだ払い終わっていない場合は、払う必要があります。
(例)2019年1/1~12/31の分は、2020年6月に請求されます。給与天引きで住民税を払っている方は、2020年6月~2021年5月の期間に1か月分ずつ払っています。
会社員の方の場合、住民税は給与から天引きされている方が多いと思います。その場合は退職時期によって支払い方法が異なります。
6〜12月に退職した場合
前年の所得に対して課された税額のうち、翌年5月までに納めるべき残額を、退職時に一括で支払うか分割で支払うか選択し、退職する会社に伝えます。
一括の場合は、最終月の給与や退職金から住民税の納税額を天引きするなど、方法は会社とご相談ください。分割の場合は後日役所から送られてくる納税通知書に従って自分で支払います。
1〜5月に退職した場合
前々年の所得に対して課された住民税の税額のうち、5月までに納めるべき残額を退職時に一括で支払います。6月1日付で再就職している場合、前年分の住民税は転職先企業での給与から天引きとなりますが、そうでない場合は役所から送られてくる納税通知書にしたがって自分で納税します。
所得税
基本的に失業中は所得が入らないため、その期間の所得税は払いません。(失業手当には所得税は課税されません。)
そのため、手続きの有無は、年内に再就職したかどうかによって変わります。
年内に再就職した場合
再就職先の会社で年末調整を行います。生命保険・医療費等の各種控除証明書と以前の会社の源泉徴収票を提出して手続きしてもらいましょう。
年内に再就職しなかった場合
翌年の確定申告の時期に、税務署で確定申告を行います。
12月に再就職が決まったが年末調整に間に合わなかった、という場合も自分で確定申告をすることになります。
どうしても払えない・・・という場合は?
様々なご事情で、「税金や年金、払えないよ・・・」とお困りの方もいらっしゃるかと思います。
そのような場合、減額や、免除ができる場合があります。
お住まいの市区町村によっても制度が異なるため、「お住まいの市区町村名 住民税 減免」等と検索してみてください。
健康保険の減免
会社都合退職の場合だと「非自発的失業者の軽減制度」の対象になる場合があります。
保険料を計算する際、その基準となる前年の所得を100分の30とみなしてくれる制度です。
必要書類は以下の通りです。
- 市区町村指定の届出書
- 雇用保険受給資格者証(第1回の雇用保険受給者説明会の時に渡される)のコピー
また、新型コロナウイルスの影響での減免や、支払い猶予制度もあります。
これらの制度は市区町村によって異なる場合があるため、お住まいの役場にお問い合わせください。
参考:横浜市HP
年金の減免
「失業等による特例免除」の対象になる場合があります。申請者の配偶者と世帯主それぞれの所得が一定額以下などの条件を満たせば、退職理由を問わず、年金保険料が減免になります。
市区町村の役場または年金事務所の窓口に届け出ます。必要書類は以下の通りです。
- 国民年金保険料免除・納付猶予申請書(日本年金機構のHPからダウンロードできる)
- 年金手帳
- 雇用保険受給者資格者証や離職票など、失業していることを確認できる公的機関の写し
- 印鑑
参考:日本年金機構HP
税金(住民税)の減免
「失職等が原因で所得がない場合」は、住民税を減免できる場合があります。
ここでいう失職等とは、会社都合(会社倒産や人員整理による解雇、疾病による失職)や、介護、育児、通勤不可能による自己都合退職をいい、単なる自己都合や期間満了による退職は対象外となることが多いです。
参考: 横浜市HP
まとめ
失業保険のときと同様、まずは公的な機関(お住まいの市区町村)に問い合わせましょう。
退職や離職の際は心身ともに大変な時期かと思いますが、手続きはとても重要ですので、この記事を参考にチェックしてみてください。
一人で抱え込まずに、ぜひいろいろなところへ相談や問い合わせをすることをお勧めします!
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