「贈与税の110万円非課税枠って何?」
「どんな人が使える制度なの?」
この記事は、そんな疑問を持った方向けの記事です。
贈与税の110万円の非課税枠という制度を知っているでしょうか?恐らく「父母や祖父母からの贈与が110万円まで非課税になる」と考えている方が多いのではないでしょうか。年末までに使っておこうという方もいると思います。
しかし、じつはこの考え方は少し間違っています。110万円まで非課税になるのは正しいのですが、そもそも制度の考え方が違うのです。
贈与税のルールは正しく理解しておかないと、うっかり課税対象となってしまうことも。
この記事では、贈与税の110万円の非課税枠に関するルールを基本から解説していきます。
110万円の非課税枠とは贈与税の基礎控除のこと
まず「110万円の非課税枠」とは何かをハッキリ理解しておきましょう。国税庁が解説している以下の文章をご覧ください。
贈与税は、一人の人が1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計額から基礎控除額の110万円を差し引いた残りの額に対してかかります。 したがって、1年間にもらった財産の合計額が110万円以下なら贈与税はかかりません(この場合、贈与税の申告は不要です。)。
国税庁 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4402.htm
要約すると、贈与税には年間110万円の基礎控除額があり、その範囲内なら贈与を受けても非課税になるということです。
「あれ?父母や祖父母の話は?」と思った方もいると思いますが、じつは贈与元は父母や祖父母に限らず、誰から受けても問題ありません。
重要なのは「110万円以下」という金額です。まずはこのポイントを覚えておきましょう。
対象額は1月1日~12月31日までに贈与を受けた総額
贈与税の基礎控除額に関して勘違いしがちなのは、110万円は「贈与を受ける側の合計額」であるということです。贈与をする側の額ではないため注意しましょう。
- 贈与税がかからない場合
父:50万円を贈与
祖母:50万円を贈与
知人:10万円を贈与
合計110万円で基礎控除額内となるため非課税
- 贈与税がかかる場合
父:110万円を贈与
祖母:10万円を贈与
合計120万円で基礎控除額を超えるため課税。課税対象額は基礎控除額を超えた10万円
また、贈与の総額はその年ごと(1月1日~12月31日)に計算されます。
ここで注意したいのが年末に贈与を行うケースです。年末になると金融機関が休みになるケースが多く、贈与をしたくても出金できない、または贈与を受けたお金を入金できないことが懸念されます。
贈与をしたい場合は早めに出金しておくのはもちろんですが、贈与を受けた場合も年内に贈与を受けたことをハッキリさせるために、年内に入金しておきましょう。
贈与額が110万円以下でも確定申告が必要なケース
贈与額が110万円以下でもほかの特例制度と併用している場合、確定申告が必要になるケースがあります。主なケースは下記の3つです。
- 贈与税の配偶者控除
婚姻期間が20年以上の配偶者から居住用不動産または居住用不動産を取得する資金の贈与があった場合、2,000万円まで非課税となる - 相続時精算課税制度
親世代の財産を子世代に移転する場合、贈与税を軽減する制度。2,500万円まで非課税、それ以上は一律20%となり、相続時には贈与分と相続分を合算して相続税額を計算する - 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
父母や祖父母など直系尊属から、制度対象となる住宅を取得するために資金の贈与を受けた場合、規定の額まで非課税となる
なお、いずれの制度も基礎控除と併用が可能です。また、併用した場合、確定申告は必要になりますが、課税となるわけではありません。
贈与税の基本|贈与の種類や算出方法
ここでもう一度贈与税の基本をおさらいしておきましょう。
そもそも「贈与」とは、自らの財産を無償で相手に贈る行為です。ただし、相続のように死亡した人から財産をもらうケースは該当しません。贈与の意思表示は書面・口頭を問わず有効ですが、書面を交わした贈与は撤回することができません。
そして、贈与を受けたものはその価値に応じて税金が課されます。贈与した物の価値は時価となり、現金であればその額、物品であれば購入価格や買取価格、不動産であれば評価額といったように、見積もった価値に応じて税額が決定されます。
贈与の種類
贈与は、贈る方法によって種類が湧けられ、主なものに下記4種類があります。
- 定期贈与:定期的に贈与を行うこと
- 負担付贈与:贈与を受ける者が、一定の義務を負って贈与をうけること
- 死因贈与:贈与者が死亡することを条件に発生する贈与。贈与税ではなく相続税が適用される
- 通常の贈与:上記3種類に属さない贈与
親族間で発生するのは定期贈与か通常の贈与がほとんどだと思います。毎年110万円の贈与を受けるなら定期贈与、贈与のタイミングや額がそのつど変わるなら通常の贈与に該当します。
贈与税額の算出方法
贈与税を算出するには、贈与の総額から課税対象となる額を算出し、その額に応じた税額計算を行います。
贈与税の算出手順
- 贈与総額の算出(本来の贈与財産(※1)+みなし贈与財産(※2))
- 課税対象額の算出(贈与総額から基礎控除額と非課税財産分の額を減じる)
- 課税対象額に応じた税率を乗じる
- 3で算出した額から規定の控除額を減じる
※1:贈与により得た金銭的価値のある財産
※2:本来は財産にあたらないものの、財産的価値があるとみなされたもの(生命保険金、債務免除額、負担付贈与など)
父母や祖父母などからの贈与は税率や控除額が変わる
ここでチェックしておきたいのが、父母や祖父母といった直系尊属から贈与を受けた場合です。直系尊属から贈与を受けた場合、贈与を受けた者が20歳以上であれば、特例税率を適用することができます。
通常の贈与税率
参考:国税庁/贈与税の計算と税率(暦年課税)より作成
特例税率を受けた場合の贈与税率
参考:国税庁/贈与税の計算と税率(暦年課税)より作成
なお、令和4年4月1日から、民法上の成人年齢が18歳に引き下げられることに伴い、特例税率を受けられる対象年齢も18歳以上となります。
贈与税の課税対象とならない非課税財産と特例
贈与に関して覚えておきたい知識として、贈与を受けても課税対象とならない「非課税財産」と「特例制度」を覚えておきましょう。ここでは主な3項目について紹介します。
贈与税の非課税財産
非課税財産に該当するものは、いくら贈与を受けても課税対象になりません。ただ、認められるのはあくまで通常必要と認められる額までです。必要以上に高額な贈与を受けると、認められない可能性もあるので注意しましょう。
- 通常必要と認められる生活費や教育費
扶養義務者から贈与を受けた財産のうち、通常必要と認められる金額の生活費や教育費 - 祝い金・香典・見舞金など
結婚式や出産のお祝いやお葬式の香典、病気やケガをした際に受け取る見舞金など - 法人から贈与された財産
贈与税の扱いにはならないが、一時所得として所得税は課税される - 相続税に関する「生前贈与加算」に該当する場合(相続税の対象となる)
贈与税の特例制度
非課税財産とは別の、一定の財産贈与を非課税とする特例制度。時限付きの制度が多く、社会情勢を反映して制度が増設されることもある
令和3年11月時点で運用されている主な特例制度は下記のとおりです。
- 贈与税の配偶者控除
- 相続時精算課税制度
- 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税制度
- 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
父母や祖父母など直系尊属が30歳未満の子や孫に対して教育資金を贈与する場合、1,500万円まで非課税となる(受贈者は前年の年収1,000万円以下に限る。学校以外への支払いは500万円まで) - 結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置
父母や祖父母など直系尊属が、20歳以上50歳未満の子や孫に対して、結婚・子育て資金を贈与する場合、1,000万円まで非課税となる(受贈者は前年の年収1,000万円以下に限る。結婚費用は300万円まで)
贈与税の非課税枠は制度を熟知して使いこなそう
贈与税は「非課税枠は110万円」というイメージが強かったと思いますが、制度を詳しく見ていくとじつはいろいろな制度が用意されていることが分かります。
上手く使えば父母や祖父母の資産を効果的に引き継ぐこともできますし、結婚や子育てを支援することも可能です。
また、贈与を受けて資金に余裕ができれば、将来への資産形成も視野に入ってきます。一家が作り上げた資産を有効活用するためにも、ぜひ贈与税の非課税制度を活用してみてください。
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