「子ども医療費助成制度ってどんな制度?」
「隣の市のほうが助成内容が手厚いのはなぜ?」
「所得制限(収入制限)があると聞いたけど、本当?」
この記事は、そんな疑問をお持ちの方向けの内容です。
子どもの医療費助成制度を、子どもの突然の病気やケガで病院を受診した時に、利用したことがある人も多いのではないでしょうか。
今回は子どもの医療費助成制度の概要・ポイントやケース事例を含め、わかりやすくまとめました。ぜひ最後までお読みください。
※今回は、医療費助成制度の”概要”を中心に説明するため、一部の自治体の助成内容とは異なる場合があります。
詳細は居住する自治体の窓口にてご確認ください。
子どもの医療費助成制度とは
子どもにかかる医療費は義務教育就学前は2割、その後は3割の自己負担で医療機関を受診できます。
2割負担でもありがたいものですが、病気やケガ次第では月に何度も小児科や耳鼻科に通うことを考えると、自己負担額は決して小さいものではありません。
そこで、子どもにかかる医療費負担の軽減を目的として、子どもの医療費助成制度があります。
制度の概要をしっかりと確認しましょう。
助成の内容
端的に言うと、子どもの医療費助成制度によって入院費用と通院費用が助成され、「無料」または「ごく少額の自己負担」で済みます。
この制度によって、自己負担なく無料で医療が受けられる自治体もあれば、1医療機関ごとに1日当たり最大500円(同じ月において2日を限度)の自己負担が発生する自治体もあります。
例として、医療費が全くかからないA市と、1医療機関ごとに1日当たり最大500円の自己負担が発生するB市で比べてみましょう。
子どもが1ヶ月間(同一月)に3回、それぞれの市にある小児科を受診したとします。
A市の場合:医療費が全くかからないため、自己負担なく無料=計0円
B市の場合:1回目の受診は500円、2回目の受診も500円の自己負担額が発生。
ただし3回目(以降)の受診は無料=計1,000円
医療費負担のイメージがつかめたでしょうか?
1ヶ月間(同一月)に同じ医療機関を何度も受診した場合、3回目からは無料になるという自治体もたくさんあります。
ただし、B市に住んでいて同じ小児科を月に2回受診、その後は別の医療機関(耳鼻科等)を受診した、という場合は小児科で500円×2回、耳鼻科で500円の自己負担が発生します。
つまり、自己負担がある自治体の場合は1医療機関ごとを基準としているので、あちこち複数の医療機関に通う場合は、1回目・2回目の自己負担額がそれぞれ発生する点には注意が必要です。
いつまで助成制度が利用できる?
子どもの医療費負担が軽くなるため、できるだけ長く医療費助成制度を使いたいですよね。
しかし、助成期間にも自治体ごとに大きな差があるため、全国の実情を以下で確認しましょう。
以下は、通院費・入院費の助成期間をいつまでに設定しているのか、また(助成期限を)その年齢に設定している自治体数を表しています。
対象年齢 | 通院費の助成 | 入院費の助成 |
就学前 | 66 | 6 |
8歳年度末 | 2 | 0 |
9歳年度末 | 16 | 8 |
12歳年度末 | 72 | 41 |
15歳年度末 | 923 | 968 |
18歳年度末 | 659 | 715 |
20歳年度末 | 2 | 2 |
22歳年度末 | 1 | 1 |
※単位:市区町村
参考:厚生労働省「乳幼児等医療費に対する援助の実施状況(PDF)」
例えば通院費の助成を見てみましょう。
66の自治体が助成期間を就学前までとしているのに対して、18歳の年度末まで助成する自治体は659もあります。
中には22歳の年度末まで助成期間がある自治体もあるなど、助成期間には大きなばらつきがあることがわかります。
「うちの市は12歳までだったなんて知らなかった!」「隣の市は18歳までなの!?」と、近隣の自治体との差を感じることがあるかもしれませんね。
子どもの医療費助成制度が充実している自治体の多くは、子育て支援に注力している自治体です。
「子育てしやすい街ってどこだろう?」という疑問をお持ちの方は、さまざまな自治体の医療費助成制度の内容を比較してみるのも良い視点と言えます。
所得制限(収入制限)には要注意
子どもがいる世帯向けの助成・手当制度の1つに「児童手当」があります。
この児童手当にも所得制限があることは、以前解説しました。
(児童手当の所得制限については以下をご覧ください↓)
実は、子どもの医療費助成制度にも所得制限(収入制限)を設けている自治体があります。
通院費・入院費の助成における所得制限の有無は以下の通りです。
所得制限 | 通院費の助成 | 入院費の助成 |
所得制限なし | 1,492 | 1,497 |
所得制限あり | 249 | 244 |
※単位:市区町村
参考:厚生労働省「乳幼児等医療費に対する援助の実施状況(PDF)」
通院費の助成を見てみると、1,492の自治体で所得制限がない一方、249の自治体では所得制限があります。
また、所得制限の内容も自治体によって異なるので注意が必要です。
例えば横浜市は、0歳~2歳時の所得制限はなく、3歳~15歳は子どもの父または母の所得に制限があります。(出所:横浜市HP)
一方で大阪市は、0歳~12歳の所得制限はなく、12歳~18歳は子どもの父または母の所得に制限があります。(参考:大阪市HP)
半分以上の自治体で所得制限はないものの、居住する自治体に所得制限があるのかないのか(およびその内容)については必ず確認しておきましょう。
申請方法は簡単!
子どもの医療費助成制度は居住する自治体の子育て支援課や保健センターなどで申請を行います。
申請時は、申請書の他に子どもの健康保険証と申請者の本人確認書類が必要です。
申請が済むと、子ども医療証が交付され、医療機関受診時には必ず持参する必要があります。
特に月初の受診時には必ず医療機関で確認されますので、常に母子手帳などと一緒に持ち歩いておくと良いでしょう。
また、自治体によっては申請時に子どものマイナンバーが必要となることも。
申請に必要な書類などは事前に確認し、子どもの健康保険証が作成できた時点で速やかに申し込みましょう。
こんなときが医療費助成制度が使えるの?2つのケースを解説
ケース①:居住する都道府県外で受診したとき
旅行先での突然の体調不良など、居住する自治体の医療機関を常に受診するとは限りませんよね。
居住する都道府県外で医療機関を受診した場合は、まずは医療機関で本来の自己負担(2割もしくは3割)を支払い、後日、同月分をまとめて居住する自治体に払い戻しの申請を行います。
自治体側での確認が終わり次第、助成額が口座に振り込まれます。
このように、居住エリアとは異なる場所で受診した場合は、一旦医療費の本来の自己負担額が発生し、その後自治体に申請することで助成額が振り込まれる仕組みになっています。
なお、医療機関受診後の申請は期限が設けられていることもあり、中には診療を受けた月の翌月から1年以内としている自治体もあります。
「うっかり申請を忘れていた」という事態を避けるためにも、他の都道府県で受診した際はすみやかに申請しましょう。
ケース②:医療証の交付前に受診したとき
子ども医療費助成制度を利用するための「子ども医療証」は、子どもの健康保険証が発行されたあとに申請して受け取ることができます。
しかし、時には子ども医療証の申請前や申請中に、医療機関を急遽受診することもあるかもしれません。
医療証の交付前に医療機関を受診した場合も、ケース①と同様に、一旦は窓口で自己負担額を支払い、後日手続きを行うことで助成額が支払われます。
なお、ケース①と②のいずれのケースも、申請時には領収書の原本の添付が求められることがあります。
そのため、受診時に受け取った書類は大切に保管しておくことが大切です。
医療費助成制度は自治体ごとに大きな差が!一度確認してみよう
繰り返しになりますが、子どもの医療費助成制度は自治体ごとの差が非常に大きく、特に助成額(自己負担の有無)や助成期間には要注意です。
子どもがいる世帯は、毎回の医療機関受診時に当たり前のように子ども医療証を提出し、制度を利用していることと思います。
しかし、居住する自治体の医療費助成制度がいつまで利用できるかをきちんと把握している人は非常に少数ではないでしょうか。
子どもがいる世帯にとっては非常に利用メリットの大きい医療費助成制度。
助成内容を正しく理解し、子どもにかかる医療費の負担軽減のために積極的に利用しましょう。