近頃の新型コロナウイルスの影響など理由・タイミングはさまざまですが、転職や退職をされる方は非常に多くいらっしゃいます。(あしたばのFPも全員転職経験があります。)
総務省統計局の調査によると、2019年の転職者数は過去最多の350万人だったそうです。
実際、お客さまとの個別相談の際にも「転職を検討している」と伺うことが多々あります。
いざ転職するとなると、さまざまな不安がつきまとうもの。特に、手続き関係。
今回は、退職後の就職先が決まっていないケースで、どんな申請が必要か?もらえる手当は何か?について解説していきます。
(できるだけ“簡単に・分かりやすく”いきたいと思いますので、細かいルール・用語の説明は一部省きながら進めていきます。ご容赦ください。)
退職後の手続き
退職後、次の就職先が決まっていない場合、以下の手続きが必要になります。
- 失業手当
- 健康保険
- 年金
- 税金(住民税、所得税)
今回は ①失業手当について 解説していきます。
(②~④は次回以降の記事にて)
失業手当とは
公的保険制度の一種に「雇用保険」があります。
会社員・公務員の方は、給与明細をみてみると、毎月雇用保険料が天引きされているかと思います。
雇用保険の加入者は、失業した場合や自己都合での退職にあたり、「失業手当(正式には基本手当)」を受給することができます。
失業手当は、失業した人が安定した生活を送りつつ、1日でも早く再就職するための支援として給付され、新しい職に就くまでの経済的支えになる制度です。ただし、離職したすべての人が失業手当をもらえるわけではありません。
失業手当をもらえる条件
条件① 失業状態である
ここでいう「失業状態」とは、労働しようという意思と能力があり、積極的に仕事に就くための転職活動をしていながら、仕事に就くことができない状態にあることを指します。次のようなケースは失業と認められません。
- 家業に専念することになった/家業や家事の手伝いをしている
- 学業に専念することになった
- すでに次の就職先が決まっており、転職活動をする予定がない
- 自営業を始めた(準備を含む)
- 会社や団体などの役員に就任した(予定や名義だけの場合も含む)
ただし、以下の場合はハローワークに失業給付金の受給期間延長手続きを行うことによって、働ける環境が整ったあとで給付を受けることができます。
- 病気、ケガ、妊娠、出産、育児などのためすぐに働けない
- 病人介護などのためにすぐに働けない
条件② 退職日以前の2年間に雇用保険加入期間が通算12カ月以上ある
賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月を1カ月として数えます。
ただし、特定受給資格者や特定理由離職者については、退職日以前の1年間に、雇用保険に加入していた月(賃金支払いの基礎となった日数が11日以上)が、通算して6カ月以上ある場合も可。
※特定受給資格者とは:倒産、リストラ、解雇などによって失業した人
※特定理由離職者とは:契約更新を希望したのに更新されずに期間満了となった人や、病気、出産、配偶者の転勤などの理由で失業した人
条件③ ハローワークに求職の申し込みをしている
ハローワークで渡される「求職票」に氏名や住所、経歴や就職の希望条件などを記入し、提出することで求職の申し込みを行います。
失業手当の認定
(※新型コロナウイルスの影響により、以下の手続きはハローワークへの来所ではなく郵送手続きでできる場合があります。逆に、必ず来所しなければならないケースもあります。お住まいの地域のハローワークにお問い合わせください。)
会社を退職して失業手当をもらうためには、まずハローワークに行きます。行った日を「受給資格決定日」と言います。
この受給資格決定日から7日間は「待機期間」となり、失業手当が支給されません。
この7日間を失業状態で過ごすことで初めて受給資格が発生し、待機満了の翌日から「支給対象期間」に入ります。
支給対象期間は、離職理由によって変わります。
「会社都合」の場合は、待機期間の翌日から支給対象期間に入ります。
「自己都合」の場合は、待期期間+3ヶ月間の「給付制限」が課せられることになっています。この3か月が終わって初めて支給対象期間に入ります。
手続きのステップ
基本的な流れは次の通りです。
- ハローワークで求職の申し込み(離職票と求職票の提出)を行う
- 申請後7日間の待期期間
- 雇用保険受給説明会→求職活動→失業認定日に出席
- その後1週間程度で初給付
- 以降は2回以上の求職活動→認定日に失業の認定を受ける→手当の振込の繰り返し
以下で詳しく解説していきます。
①ハローワークで求職の申し込み(離職票と求職票の提出)を行う
退職後、必要書類を揃えたらハローワークに「求職申し込み」に行きます。
必要書類は以下の通りです。
- 離職表1と2
退職後に前職場から受け取ります。離職標は「雇用保険被保険者離職票−1」(離職票1)と「雇用被保険者離職票-2」(離職票2)があります。この2種類の離職表は両方必要です。 - 雇用保険被保険者証
- マイナンバーカード(ない場合には個人番号記載の住民票かマイナンバーの通知表。)
- マイナンバーカードがない場合は本人確認書類(運転免許証やパスポートなど)
- 証明写真(縦3cm×横2.5cm)2枚
- 印鑑(シャチハタ以外)
- 本人名義の預金通帳またはキャッシュカード(手当の振込み用)
上記の必要書類を準備後、求職票に必要事項を記載します。
その後ハローワークの職員との面談、離職標の確認などが行われ、失業保険の受給可否が判断されます。
面談後資料やハローワークカードを支給されますが、今後必要ですので大切に保管しておきましょう。
②申請後7日間の待機期間
失業保険受給申請後、待機期間が7日間必要になります。
この期間中は失業状態を保つ必要があり、アルバイトも禁止されています。仮にこの期間中にアルバイトを行った場合、アルバイトを行った日数分給付開始が遅れますので気をつけましょう。
自己都合退職の場合、この待機期間に加え、期間満了後の翌日から3ヶ月間の給付制限がありますので、注意が必要です。
③雇用保険受給説明会に参加→求職活動→失業認定日に出席
失業保険認定日を迎えるためには、「雇用保険受給説明会(初回講習会)」に参加する必要があります。
この講習会の受講が「求職活動」にカウントされますので、「会社都合退職」の場合、この1回で求職活動のノルマはクリアとなります。
「自己都合退職」の場合には、このほかにも2回以上の求職活動を給付制限期間内に行わなければなりません。
説明会の日に「雇用保険受給資格者証」と「失業認定申告書」が渡され、失業保険認定日の日付と時間帯が示されます。指定された失業保険認定日の時間帯にハローワークに行き、認定を受けます。
説明会の時に渡された「失業認定報告書」「雇用保険受給証」等、その他職員から指示された書類等があればそれも持参しましょう。
④その後1週間程度で初給付
失業保険認定日を迎え失業状態が認められると、認定日の2~3日後、遅くても1週間以内に手当は振り込まれます。
銀行振込のため、銀行の休業日を挟むと給付が遅れる可能性もあるので注意しましょう。
会社都合の場合は失業申請をしてから約1か月後に、待機期間7日分を除いた約3週間分が振り込まれます。
自己都合の場合は失業申請をしてから約4か月後に、待機期間7日分+給付制限期間3か月分を除いた約4週間分が振り込まれます。
⑤以降は2回以上の求職活動→認定日に失業の認定を受ける→手当の振込の繰り返し
初回の失業保険認定日を迎えたあとは、次回の失業保険認定日までに原則「2回以上」の求職活動を行う必要があります。
求職活動を行いながら、4週間に1度訪れる失業保険認定日にハローワークに行き、再度失業認定を受けなければなりません。失業認定を受けなければ手当はもらえませんので、注意が必要です。
失業手当はいつまでもらえるの?支給される金額は?
失業手当の給付日数
所定給付日数 | |||||
被保険者だった期間 | 1年未満 | 1年~5年未満 | 5年~10年未満 | 10年~20年未満 | 20年~ |
自己都合の場合 | |||||
全年齢共通 | 90日 | 120日 | 150日 | ||
会社都合の場合 | |||||
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | – |
30歳以上 35歳未満 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35歳以上 45歳未満 | 240日 | 270日 | |||
45歳以上 60歳未満 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | |
60歳以上 65歳未満 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
失業手当の受給金額
キーワードとなるのは「基本手当日額」と「賃金日額」です。
「基本手当日額」とは、失業手当の1日の給付額のことで、離職者の「賃金日額」をもとに算出されます。
「賃金日額」とは、退職前6ヶ月間の給料の合計(社会保険料や税金を引く前の金額の合計で、賞与は含まない)を180で割った金額です。
計算方法は以下の通りです。
- 「賃金日額」を計算します。
賃金日額=退職前6か月の給料合計÷180
※賃金日額には上限があります。(令和2年8月1日時点)
賃金日額の上限額 賃金日額の下限額 29歳以下 13,630円 2,500円 30~44歳 15,140円 45~59歳 16,660円 60~64歳 15,890円 - 「基本手当日額」を計算します。
基本手当日額=賃金日額 × 給付率(50~80%)
※基本手当日額には上限があります。
基本手当日額の上限額 基本手当日額の下限額 29歳以下 6,850円 2,059円 30~44歳 7,605円 45~59歳 8,370円 60~64歳 7,186円 - 「失業手当の受給額」を計算します。
失業手当の受給額=基本手当日額×給付日数
(例)25歳/月給25万の会社員/3年間勤務/会社都合で離職したケース
- 賃金日額=25万×6か月÷180日=約8,333円
- 基本手当日額=約8333円×50~80%=約4,166~6,666円
- 失業手当の受給額=約4,166~6,666円×90日=約37万4,940円~59万9,940円
このケースだと、受給額の総額は約37万4,940円~59万9,940円になります。
実際は失業認定日ごとに、4週間分ずつ支払われます。
(例2)上記の条件で、自己都合で離職したケース
- 失業手当の受給額=約4,166~6,666円×90日=約37万4,940円~59万9,940円
このケースだと、受給額の総額は会社都合の場合と同じ金額になります。
ただし自己都合の場合、待機期間+給付制限期間(3か月)後に失業認定されてはじめて支給対象期間に入ります。そのため待期期間+3か月+4週間後にやっと(4週間分が)支払われるので、注意が必要です。
こんな場合はどうなる?
失業手当をもらう前に就職先が決まったら?
「再就職手当」をもらえる場合があります。
「再就職手当」とは、失業保険の給付を受けている期間中に再就職が決まった場合、支給残日数が3分の1以上あり、一定の要件を満たせばまとまった金額が支給されるものです。
支給額=支給残日数×基本手当日額×給付率
※給付率・・・残日数が3分の2以上ある場合は70%、
残日数が3分の1以上3分の2未満の場合は60%となります。
失業手当の受給中に、アルバイトをしてもいいの?
待機期間後は、ハローワークに申告し一定の条件を満たせばアルバイトをしてもOKです。(給付制限期間中でも可)
ただし、以下の条件に当てはまると失業手当が受け取れなくなってしまうので注意が必要です。
- 週20時間以上働く
- 31日以上の雇用が見込まれる
- 1日4時間未満だと、手当が減額される場合がある(1日4時間以上であれば、減額はされずその日の分の手当の支給が先送りになる)
参考:厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~
※Q22をご覧ください。
スキルアップのために勉強したい
勉強しながら手当をもらえる制度として、大きく分けて2つあります。
- 求職者支援訓練制度・・・雇用保険を受給できない求職者のための制度。一定の条件を満たせば、職業訓練給付金が支給されます。
- 教育訓練給付制度・・・雇用保険に加入していたことのある方のための制度。一定の条件を満たせば、在職中の方も使えます。
②の教育訓練給付制度は、失業保険と併給も可能です。対象の資格は公認会計士や税理士など、幅広い資格から選べます。(ちなみに、ファイナンシャル・プランニング技能士も対象です!)
まとめ
退職したら、必要書類をもってまずハローワークに行きましょう!
離職理由によって給付額やもらえるまでの期間が大きく変わるので、退職前に確認が必要です。
とくに自己都合の離職の場合は、申請してから約4か月後にようやく給付金が支払われます。
離職後の資金計画が立てられていると、安心ですね。
転職・退職にはさまざまなご事情があるかと思います。ご自身の資金計画に悩まれた際は、ぜひお気軽にFP(ファイナンシャルプランナー)にご相談ください。
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