主に不動産の取引などで耳にする「登記」という言葉、皆さんはどのような意味なのかご存知でしょうか?
耳にしたことはあるけれど、内容は実はよく分かっていないという人も多いと思います。
本記事では主に不動産登記に焦点を当てながら、登記とはどのようなものなのかを基本からわかりやすく解説します。
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登記とは
まず登記とは、ある特定の物に関する権利関係の情報を公示することによって、その物に関わる取引を円滑に進めるための法的な制度のことを言います。
具体的には商業登記、法人登記、不動産登記、成年後見登記など、各分野において様々な登記が存在し、権利関係を明確にすることによりトラブルを未然に防いでいるのです。
本登記と仮登記
登記には「本登記」と「仮登記」があり、それぞれ以下のような特徴があります。
・本登記…登記本来の対抗力※という法的な効力を発生させる登記のことで、本登記によって所有者の権利を確固たるものとして主張することができます。
・仮登記…本登記を行うのに必要な手続き上の要件が整っていない場合に、将来行う本登記のために登記記録上の順位を保全しておく(本登記の順位を決める)ことを目的とした登記のことです。
※対抗力…正当な自分の権利を第三者に主張できる力のこと
仮登記には対抗力はありませんが、仮登記を行った順番で本登記が行われるため、仮登記した人が複数いた場合には、最初に仮登記を行った人が優先されます。
あちこちで権利争いが出てこないよう、仮登記を行った順番で本登記を行い、その物の所有者が明確に決まる仕組みです。
登記手続きが遅れた場合のリスク
ここまで読んでわかる通り、登記記録があって初めてその物の所有権を得られることになりますので、万が一登記手続きが遅れてしまうと以下のようなトラブルも起こり得ます。
【具体例】
Aさんが念願のマイホームを購入。代金を支払い、領収書も受け取った。
↓
1ヶ月以上時間が経って登記手続きを行おうとしたら、いつの間にか名義が知らない人Bさんになっていた。
売主に確認すると、より好条件で買ってくれるBさんにも売ってしまったとのこと。
【この場合の所有権は…?】
ずばり、Bさんです。
先にお金を払って契約したのはAさんですし、売主がAさんに相談もなくBさんに二重売買してしまったという極端な例ですが、この場合でも家の所有者は先に登記登録を行ったBさんになってしまいます。
この事例のように、明らかにAさんが有利と思われる条件の場合でも、何よりも優先されるのは登記記録です。
住宅購入後は速やかに登記手続きを行いましょう。
不動産登記について
それでは、ここからは数ある登記の中でも一番メジャーである不動産登記に焦点を当てて解説していきます。
登記のおおまかな定義については既出の通りですが、不動産登記(不動産登記制度)とは、法務局(登記所)にある不動産登記記録に不動産に関する権利関係(所有者や債権者)や土地の種類などを記載して、公示することを言います。
不動産登記記録
不動産における登記記録(登記簿)は、一筆の土地※または一個の建物ごとに作成される電磁的記録です。
※一筆の土地とは、一区切りの田畑や宅地のことを指します。
登記所では所定の請求書を提出すると、誰でも登記事項証明書の交付を受けることができます。
※法務省HP(不動産登記のABC)を参考に筆者にて表作成
不動産登記記録は表題部と権利部に分かれて作成され、表題部は登記義務があり、所有権を取得してから1ヶ月以内に所有者が申請しなければなりません。
一方、権利部については、登記義務はないため、登記の名義と真の権利関係が一致しない場合もあります。
権利部は甲区・乙区に分かれており、甲区には所有権に関する事項が、乙区には所有権以外の権利に関する事項が表示されています。
また、各用語についてもおおまかな意味を押さえておきましょう。
- 所有権保存登記 … 家を建てたり、新しく購入したときに所有者を明らかにするために行う登記
- 所有権移転登記 … 家を売買した場合など、所有権が移ったときに行う登記
- 抵当権 … 金融機関が不動産を担保に融資するとき、借り手がローンを返済できなくなった場合に優先的に貸したお金を回収できる権利のこと
- 地上権 … 他人の所有する土地を使用する権利
公信力について
不動産登記を語る上で重要なワードに「公信力」があります。
公信力とは、事実と異なる権利関係が公示されている場合に、その公示を信じて取引きした者が保護される効力のことです。
公信力は主に動産の権利問題について効力を発揮するものです。
たとえば、Aさんが泥棒にカメラを盗まれ、そのカメラが全く無関係のBさんに販売されてしまったとします。
Aさんは当然被害者ですが、BさんはそのカメラがAさんから盗まれたものだとは知らずに気に入って購入してしまったわけです。
購入後その物はAさんに返してあげたいところですが、Bさんもある意味被害者となり、このBさんを守るためにあるのが公信力です。
※筆者にて図解作成
この公信力が不動産登記にはないという点が重要なポイントになります。
不動産は一般的に高額な場合がほとんどであり、単に購入者が登記を信頼したというだけで不動産を失うのはあまりにも酷であること、また、取引も動産ほど頻繁でないことから、不動産登記に公信力はないものと民法で決められているのです。
不動産登記記録の取り扱いについて
無事に不動産登記記録ができたら、その後どのようにして取り扱うことができるのでしょうか。
ここからは登記記録の取り扱いについて解説していきます。
不動産登記記録の閲覧と申請
登記記録を見たいと思ったとき、以前はその不動産を管轄している登記所へ出向くか、郵送で送ってもらうなどしか手段がありませんでしたが、現在は電子化されているため、オンラインでPDFデータを閲覧することが可能です。
ただし、PDFデータの場合は法的な効力はないため、目的が閲覧だけの場合に有効です。
証明書として正式に活用したい場合には、法務局のホームページからオンライン請求をすることで、最寄りの登記所の窓口か、郵送で受け取ることができます。
もちろん、法務局で直接申請を行うことも可能です。
登記記録の抹消
登記記録を抹消したいときには、所定の書類を法務局に提出する必要があります。
マイナンバーカードがあればオンライン申請もできますが、オンラインの場合でも書類の提出または送付は必要です。
不動産関連の場合に最も多いのは抵当権の抹消ですが、これは住宅ローンを完済した後、または不動産を売却する際に申請するものです。
抵当権の抹消は家を売らない限りは行わなくても問題なく生活できるのですが、ローンを完済してから時間が経つと手続きのための書類作成に時間がかかります。
また、家を売却するときにローンを利用した金融機関が万が一破綻してしまっていた場合などはさらに手続きが厄介になってしまうため、早めに抹消しておくことがベストです。
さらに、家とは関係のない物を購入するためにローンを組もうとする際にも、金融機関は「不動産を担保に借り入れをしている残高があるもの」として審査することになってしまうため、住宅ローン完済後は速やかに抵当権抹消の手続きを開始することをお薦めします。
まとめ
- 登記はある特定の物に関する権利を公的に示す重要な記録
- 真に効力を発揮するのは本登記。本登記登録のためにも仮登記登録も早めに行おう
- 不動産登記に公信力はない
- 不動産登記記録はオンラインで閲覧可能
- 住宅ローン完済後の抵当権の抹消手続きは早めに済ませよう
登記の有効性や、不動産登記においては公信力がない点など、知識として持っておくといざという時に役に立つかもしれませんのでぜひ覚えておきましょう。
また、今回は登記の内容についての解説でしたが、登記登録をするには登録免許税などの費用がかかるため、住宅購入とは別にそのための費用も考えておく必要があります。
登録免許税はその不動産ごとに税率も異なりますが、高いものでは数十万円単位でかかってくることもありますので、日頃から資産形成もしっかりと行って備えていきましょう。
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