「早期退職制度」って、どんな仕組み?
希望退職制度との違いはなに?
この記事は、そんな疑問にお答えする内容です。
企業の業績が悪化した時に「早期退職者を募集」することはニュース等でも耳にする話かと思いますが、昨今は組織の新陳代謝を進める目的などからも、希望退職者を募るケースが増えています。
企業側にメリットがあるのはもちろんですが、当然制度を利用する従業員側にもメリットがあります。
ライフプラン・キャリアプランが多様化する中で、今後ますます利用を検討する人が増えていくはずです。ということで、これから何回かに分けて「早期退職制度の実施・利用実態」について探っていきます!
早期退職制度とは
まず、そもそも「早期退職制度」とはなにかを整理しておきましょう。
多くの会社で、社員を雇用する期間は60歳とか65歳までと定めています。(=定年)
会社としては「定年まで勤めあげてほしい」という思いがありつつも、前述の通り業績の悪化や組織の新陳代謝(若返りなど)を進めるために、「定年より前に辞めてほしい」ケースもあります。
そうしたニーズを実現させるために、「常時」もしくは「状況に合わせて随時」、定年前の退職者を募るのが早期退職制度です。
もちろん「ただ辞めてください」とお願いするだけではなく、社員側に「退職金の割り増し」など何らかのインセンティブを用意するケースが通例となっています。
厳密に言うと、早期退職制度は2種類ある
早期退職制度は、企業よって内容が異なりますが、大きく分けると「早期退職優遇制度」と「希望退職制度」の2種類が存在します。
早期退職優遇制度
企業が恒常的に実施している福利厚生制度の一環で、業績悪化による人員整理などの理由ではなく、組織の新陳代謝を図ったり社員のキャリア形成を支援する意味合いが強いものです。
退職金の割増や転職・再就職支援プログラムが用意され、社員にとって通常の依頼退職よりも大きく優遇されるため、「早期退職優遇制度」と呼ばれます。
なお、あくまでも社員自身が福利厚生制度を利用して退職するものですから、退職理由は「自己都合」となります。
希望退職制度
こちらは恒常的でなく、業績悪化など事業環境・方針を背景に人員整理を目的に随時(時限的に)実施されるものです。
「希望退職」という名称ではありますが、企業側は「500人程度の早期退職希望者を募る」といったように目標も設定し、業績改善のためになんとしてでも一定数の社員に辞めてもらいたいという状況。
その分、企業側も目標達成のために必要予算を計上して臨みますし、前述の早期退職優遇制度に比べると退職金の割増額(率)も高い傾向にあるようです。
なお、いわゆる「リストラ」は業績悪化による整理解雇で、強制力がありますが、希望退職の場合はあくまでも「希望」なので強制力はありません。
しかしながら、もし希望した場合には「会社都合」となるのが早期退職優遇制度との大きな違いです。
事例
ここからは、具体的な事例を見ていきましょう。
(以下に列挙する内容はHPや各種メディアを通じて公表されている情報であり、特定の企業等を誹謗中傷する意図はありません)
早期退職優遇制度の事例
シャープ
電子機器・部品大手のシャープは、55歳以上の一部管理職を対象に2023年4月~早期退職制度を導入しているようです。
希望者には、最大で6カ月分の給与が退職金に加算(割増)されます。
同社は2023年3月期に6期ぶりの最終赤字となっていますが、「社員の転進をサポートする人事制度改革の一環で、人員削減が目的ではない」と同社の説明もあり、希望退職制度とは一線を画すようです。
<参考記事(日本経済新聞)>
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF2736W0X20C23A5000000/
公務員
平成25 年から、国家公務員を対象に「早期退職募集制度」が創設されました。
組織活力の維持等を目的として、各省各庁の長等が募集実施要領を設定・周知して実施します。
対象者は勤続期間20年以上かつ定年前15年以内の職員で、定年までの残年数に応じて最大45%の退職金が割り増しされます。
また、地方公務員にも類似の早期退職制度が用意されています。
<参考ページ(内閣官房)>
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/jinji_c3-1.html
希望退職制度の事例
富士通
富士通は2022年3月に50歳以上の幹部社員を対象に早期退職を募り、約3000人の応募があったと発表しました。
希望者は、以前からある転職支援制度に追加で退職金が加算されるようです。
DX(デジタルトランスフォーメーション)への対応を1つの理由に挙げており、事業モデルの転換に伴う施策と考えられます。
今回は業績悪化以外の理由による希望退職制度を取り上げましたが、東京商工リサーチの調査によると、コロナ禍の2021年に早期・希望退職を募集した上場企業は84社にのぼるなど、希望退職制度は業績悪化を主因とすることが多いようです。
<参考記事(日経XTECH)>
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/12388/
つづく
いかがでしたか?
「早期退職制度」といってもタイプがいくつかあり、更に「選択定年制度」や「レイオフ」なども近い仕組みですが、
今回はごく一般的に多くの人が「早期退職制度」と認識している2つのパターンにフォーカスしてみました。(他の仕組みは別の機会に)
次回は早期退職制度の利用実態を探ってみます!
あしたばFP・安藤
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