住宅購入は人生で最も大きな買い物の一つです。中でも二世帯住宅の購入を検討している場合など、親と一緒にローンを組む「親子ローン」を考えている方もいらっしゃるかもしれません。
親子ローンには「リレーローン」と「ペアローン」の2種類があり、それぞれメリットとデメリットが存在します。この記事では、親子ローンの基本から種類別の特徴、利用時の注意点まで詳しく解説します。親子ローンを組むべきかお悩みの方はぜひ最後までご覧ください。
親子ローンには2つの種類がある

親子ローンとは、親と子が協力して住宅ローンを組む制度です。
親の収入や年齢、子の返済能力を総合的に評価して審査が行われ、単独では借入額が足りない場合の選択肢として有効な借入方法です。
親子ローンには大きく分けて「親子リレーローン」と「親子ペアローン」の2つがあります。主な特徴は以下の通りです。
種類 | ローン本数 | 住宅ローン控除 | 団体信用生命保険 |
親子リレーローン | 1本 | 親子ともに適用 | 一般的には子のみ加入 |
親子ペアローン | 2本 | 親子ともに適用 | 親子とも加入 |
ここからは、それぞれの特徴について詳しくみてみましょう。
親子リレーローン

親子リレーローンは、1本の住宅ローンを親と子の二世代に渡って返済していく借入方法です。
基本的には親がローン契約者として借入を開始し、一定期間が経過した後や親が高齢になるタイミングで、返済の義務を子へと引き継ぐ仕組みになります。
通常は親が退職を迎えるなど、収入が減少する時期を見据えて設計されており、子が将来的に安定した収入を得ることを前提としている点が特徴です。
親から子へと返済のバトンを渡す流れから「親子リレーローン」という名前がついています。
親の信用力と子の将来性の両方を評価して借入可能額を増やせるメリットもある一方、後々トラブルにならないよう、家族間でしっかりとした返済計画と将来設計について話し合っておくことが大切です。
親子リレーローンのメリット
借入可能額が増える
親子リレーローンは親と子の収入を合算して審査されるため、単独よりも高額の融資が可能になり、借入限度額が大きく増える可能性があります。
より広い住宅や立地条件の良い物件の購入が現実的となり、選択肢の幅が広がるでしょう。
長期返済が可能
親子リレーローンの場合は、子どもの年齢を基準として融資を受けられるため、返済期間を長く設定できるのも大きな利点です。
これにより、月々の返済額を抑えやすくなり、家計に余裕を持たせることが可能になります。
また、親が退職後の資金的負担を軽減できる点でもメリットがあり、家族全体で協力して資産形成を図る手段としても有効です。
親も子も住宅ローン控除を利用できる
親子リレーローンは、親と子両者とも住宅ローン控除の適用を受けることが可能です。
控除は住宅の返済負担割合や持分割合に応じて適用されます。
また、支払いが親から始まった場合、始めは子の返済はありませんが、住宅ローン控除はローン残高に対して適用される仕組みなので、たとえまだ子どもの支払いが始まっていなくても子どもも控除を受けることが可能です。
親子リレーローンのデメリット・注意点
子どもが最終的にすべて返済する必要がある
リレーローンは最終的に子どもがすべて返済しなければいけないため、将来の収入見通しを立てておかないと、子どもの生活設計に負担が生じる恐れがあります。
とくに転職や病気などで収入が一時的に減少した場合、ローン返済が家計を圧迫する可能性も考えられます。
リレーローンを組む際は、長期的な視野で家計の見通しを立て、収支のバランスや貯蓄の余力も踏まえて慎重に判断しましょう。
相続時にトラブルの可能性
不動産の名義やローン残債の取り扱いに注意しないと、親が亡くなった場合に相続争いにつながることもあります。
複数の相続人がいる場合には、不動産の分割や売却をめぐるトラブルに発展するケースも多く見られます。事前に遺言書や名義整理、返済計画などを親子でしっかり話し合っておくことが、トラブル回避のカギとなります。
親が団信に加入できない場合がある
親子リレーローンは1本の契約なので、原則として団信(団体信用生命保険)に加入できるのは一人のみです。
親が高齢の場合は、団信に加入できるのは子どものみという金融機関も多いです。
団信は、ローン契約者が死亡または高度障害状態になった際に、ローン残高を保険で返済してくれる制度ですが、高齢の親は年齢制限や健康上の理由で加入を断られることがあります。
この場合、親に万が一のことがあってもローン残債が残り、子どもがそのまま返済を引き継ぐことになります。このような状況に備えて、別途生命保険を検討したり、借入額や返済期間を慎重に設定しましょう。
贈与税の特例が使えない
住宅購入のために父母や祖父母から贈与を受けた場合、一定額までは贈与税が非課税になる「住宅取得等資金贈与の非課税特例」があります。
しかし親子リレーローンの場合は親と子が共同で名義を組むため、この特例が適用されませんので注意しましょう。
親子ペアローン

親子ペアローンは、親と子がそれぞれローン契約者となり、1つの住宅に対して2本のローンを組む借入方法です。
これは、親子が共同で住宅を購入する際に、それぞれの名義で別々のローン契約を結ぶことで、双方の信用力や収入を活用し、借入可能額を増やすことができるという特徴があります。
それぞれがローン契約者であるため、返済責任は親と子の双方に発生し、物件の持分割合に応じた返済計画が必要となります。
ペアローンは、親と子の将来的なライフプランや資産形成方針に合わせた柔軟な住宅取得方法として活用されていますが、その分しっかりとした資金計画とコミュニケーションが求められます。
親子ペアローンのメリット
借入可能額が増える
親子ペアローンはローン契約が2つになるため、借入限度額が大幅に上がる可能性があります。
借入額が増える分、完全分離型の二世帯住宅の購入など、選択肢の幅が広がるのが大きな魅力です。
双方が住宅ローン控除を受けられる
親子ペアローンは2本のローン契約となり、親と子がそれぞれの返済額に応じて住宅ローン控除を受けることができるため、単独ローンより大きな節税効果を得ることができます。
ただし2024年以降は新築住宅の場合、省エネ基準を満たしていることが控除を受ける条件となっているのでその点は注意しましょう。
参照:国土交通省「住宅ローン減税」
団信に両者加入可能
親子ペアローンは、親も子も団信(団体信用生命保険)に加入できるため、万が一の備えとして安心です。
団信は、住宅ローンの契約者が死亡または高度障害を負った場合に、残りのローン残高が保険で支払われる制度です。
それぞれが独立したローン契約者であるため、どちらかに不測の事態があっても、もう一方の生活や資産に大きな影響を与えずに済むという大きなメリットがあります。
これにより、家族全体としても精神的な安心感を得られますし、老後のリスク管理や将来的な生活設計の面でも有効です。
保険の内容や条件は金融機関によって異なるため、事前にしっかり確認し、自分たちのニーズに合った団信を選ぶことが重要です。
親子ペアローンのデメリット・注意点
手続きや諸費用などがそれぞれ発生する
ペアローンはローン契約が2本であるため、印紙税や登録免許税などの諸費用がそれぞれに発生し、司法書士報酬などの手数料も個別にかかる可能性があります。
さらに、金融機関との契約や審査手続きもそれぞれ行うことになり、時間と労力の面でも負担が増えることも考えられるでしょう。
フラット35が利用できない
住宅ローンを借りる場合、フラット35を検討する方も多いのではないでしょうか?
フラット35は、住宅金融支援機構が運営する全期間固定型金利の住宅ローンです。
しかし、親子ペアローンの場合はフラット35は利用できませんので注意が必要です。
フラット35を利用したい場合は「親子リレーローン」や、後述する「収入合算」を検討してみてください。
契約内容を変更しづらい
親子ペアローンの場合、契約内容を変更しづらい点があげられます。
親子ペアローンは原則として契約者の名義変更や保証人の解消をすることができません。
住宅ローンの返済は長期間にわたるため、途中で状況が変わり「同居を解消したい」というようなことも考えられます。
金融機関にもよりますが、どうしても契約内容を変更したい場合は、ローン審査を受けなおさないといけないこともありますので、その点は留意しておきましょう。
将来的なトラブルリスクの可能性
売却や相続時にトラブルになる可能性も否定できません。
たとえば、ペアローンでは親子がそれぞれ異なるローン契約者となっているため、住宅を売却する際には双方の合意が必要となります。
どちらか一方が売却に難色を示した場合、手続きが進まず、結果的に買い手を逃すことにもつながりかねません。
また、相続が発生した際には、それぞれの持分割合やローン残高の分担について相続人同士で意見が対立する可能性もあります。
こうしたリスクを回避するためには、事前に持分割合や将来的な方向性についてしっかりと話し合い、必要に応じて遺言や契約書で意思を明確にしておくことが重要です。
収入合算との違いは?
親子ペアローンは親と子で2本の契約を組むのに対し、収入合算は親と子の収入を合算して住宅ローン審査をおこない借入額が決まります。
収入合算には連帯保証型と連帯債務型があり、それぞれ特徴が異なります。連帯保証型は主債務者が返済不能となった場合のみ返済義務が生じますが、連帯債務型は親と子一緒に返済していくため両者に返済義務があります。なお、収入合算の場合住宅ローン控除適用や団信に加入できるのは主債務者のみです。

親子ローンを組むべきか?判断基準をチェック

親子ローンを検討する際には、以下のポイントをしっかりと見極めることが大切です。
無理なく返済できる計画か
将来的に無理のない返済ができるかどうかを、親子双方の収支とライフプランからしっかり見極めましょう。
単に今現在の収入や支出だけで判断するのではなく、将来的なイベントや生活の変化も織り込んだ中長期的な視点での検討が不可欠です。
たとえば、親の退職後の年金収入の見通しや、子の将来的な収入変動、さらには健康面での不確定要素なども加味することが大切です。
とくに子どもの教育費や将来の住宅修繕費、さらには介護費用やマイカー購入などのライフイベントも視野に入れ、総合的に返済計画を立てていきましょう。
そのうえで、返済期間にわたる家計の余裕やリスク対応力が確保できるかを判断する必要があります。
将来の住み替えや売却リスクを考慮しているか
親子ローンは名義や返済責任が複雑になるため、将来的に住み替えや売却を考える場合には、契約形態が足かせになることがあります。
たとえば、親が主契約者であった場合、名義変更やローンの引き継ぎがスムーズにいかず、希望するタイミングで物件を売却できないケースも。
また、持ち家を賃貸に出す際や、子どもが独立して別の住まいに移る場合にも、ローン契約の制約が障壁となる可能性があります。
売却に際しては親子双方の合意が必要となるため、どちらかが売却に反対した場合、売却が進まないといったリスクもあるのです。
こうした事情を踏まえ、柔軟な住み替えができるよう事前に契約内容を確認し、将来的な選択肢を狭めないような工夫が必要です。
専門家への相談も視野に入れよう
親子ローンは、名義の分け方や返済計画、将来の相続対応まで幅広く影響するため、住宅やお金に関する専門的な視点からのアドバイスが不可欠です。
専門家に相談することで、家族だけでは気づけないリスクにも気づくこともあります。より安心して長期的な住宅取得計画を進めるための有効な手段といえるでしょう。
住宅購入の際の資金計画にお悩みの方は「FPオフィスあしたば」にぜひお気軽にご相談ください。
まとめ|親子ローンは慎重に検討しよう

親子ローンは、住宅購入の選択肢として魅力的な手段の一つですが、親子間で金銭的責任を共有することには慎重な検討が必要です。
リレーローンもペアローンも、それぞれにメリットやデメリットが存在します。
自分たちのライフプランに合っているかをよく見極め、必要に応じて専門家の意見を取り入れながら判断することが、後悔のない住宅購入への第一歩です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【あしたばライター:藤元 綾子】
弊社横浜のFPオフィス「あしたば」は、創業当初からiDeCo/イデコや企業型確定供出年金(DC/401k)のサポートに力を入れています。
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