事実婚で住宅ローンを組んで家を購入したいと思った時に立ちはだかる問題は、金融機関の多くが、夫婦の共有名義の住宅ローンを組む条件として「法律上の配偶者」であることを求めていることです。
じゃあ事実婚では住宅ローンを組めないの?と思われるかもしれませんが、結論から申し上げると住宅ローンを組むことは十分に可能です。
近年では、事実婚でも住宅ローンの審査を受けられる銀行が増えてきています。
本記事では、事実婚で組む住宅ローンにはどのような種類があるのか、またその特徴とメリット、デメリットについて解説していきます。
この記事を読んで分かること
・どのような住宅ローンの種類があるのか、
・事実婚で組める住宅ローンの特徴やメリット、デメリット
・事実婚で住宅ローンを組む際の注意点
住宅ローンの借入先の全体像
まずは一般的な住宅ローンの全体像を解説します。
住宅ローンの借り入れ先は、民間融資・公的融資・その中間にある住宅金融支援機構と大きく3つに分かれます。
民間融資 | 都市銀行 | メガバンクと言われるメジャーな銀行 |
信託銀行 | メガバンクが信託業務を行なうために設立している銀行 | |
地方銀行 | 地域密着型の銀行 (住宅ローンに力を入れている銀行などは金利が低いこともある) | |
ネット銀行 | メガバンクや一般企業が設立した店舗を持たない銀行 (金利は安いが融資手数料が高く設定されておりコストは都市銀行とあまり変わらない) | |
モーゲージ バンク | フラット35を中心とした他の金融機関の住宅ローンを取り扱う住宅ローン専門会社の金融機関 | |
信用金庫 | 地域密着型で営利を目的とせず、会員の利益を目的としている (住宅ローンに力を入れている信用金庫などは金利が低いこともある) | |
中間 | フラット35 | 民間融資と住宅金融支援機構が提携して提供している長期固定金利型の住宅ローン |
公的融資 | 財形住宅融資 | 勤務先の財形貯蓄に加入していて条件が揃えば審査が可能 |
自治体融資 | 都道府県や市町村が独自の融資制度を行なっている場合もある |
住宅ローンの借り方
過去に事実婚で住宅ローンを組みたいと思った時に問題となっていたのは、事実婚の配偶者は連帯保証人になれないということでした。
連帯保証人を2親等以内と定めている銀行が多く、事実婚の配偶者は法律上の配偶者ではないため、連帯保証人として認められず住宅ローンを組むことが困難でした。
しかし近年、事実婚という夫婦の在り方が世間に認知されつつあります。
金融機関も事実婚でも公的書類などを提出すれば住宅ローンの審査を受けられるところが少しずつ増えています。
下記の表は、住宅ローンの借り方を一覧にしたものです。
(ここからは便宜上、夫と妻という言い方で解説させていただきます)
単独借入 | 夫か妻の名義で借り入れ、借り入れた方が単独で返済する | |
ペアローン | 一つの物件に対して、夫と妻それぞれで別のローンを組み、お互いが連帯保証人になる | |
収入合算 | 連帯保証型 | 妻の収入も考慮して借り入れ、夫一人の名義で住宅ローンを組み、夫が返済する。 |
連帯債務型 | ローン契約者は夫と妻。夫婦で債務者となり収入を合算し返済していく。 |
名義について
住宅ローンを組む際、名義を誰にするのかが大切になってきます。
名義には単独名義と共有名義があります。
単独名義→単独借入・収入合算の連帯保証型
共有名義→ペアローン・収入合算の連帯債務型
それぞれの特徴と注意点を解説します。
単独名義
単独名義とは、住宅ローンの契約者で返済義務が一人の状態のことです。
上記の表でいうと単独借入と収入合算の連帯保証型が単独名義となります。
単独借入の住宅ローンに関しては事実婚も法律婚と変わらないので、借入先の選択の幅は広がります。
しかしここで注意しなければいけないのは、住宅ローンの返済を100%名義人1人で行なっていない場合です。
例えば、登記上の名義は夫にして住宅ローンを組んでいたが、実際の返済は妻も担っていたとします。
のちに名義人である夫が亡くなった場合、事実婚の妻には相続権がないので他の相続人から家を出ていくように言われるなどのトラブルが起こる可能性があります。
共有名義
共有名義とは、購入する家の負担額の割合に応じて家の持ち分を登記することです。
上記の表でいうとペアローンと収入合算の連帯債務型が共有名義となります。
夫婦で共有名義にすると、物件や収入、人的要因などの条件を満たした場合、住宅ローン控除をそれぞれの収入に対して受けることができます。
また、夫が亡くなって妻に不動産が相続される時、夫の持ち分だけが課税対象になるため相続税を節税できます。
しかし、共有名義の不動産は、共有者全員の同意がないと売却などできないため、関係が解消されたときにトラブルが起きやすくなります。
住宅ローンの借り方 ①ペアローン
ペアローンは一つの住宅に対して、夫婦が別々にローンを組む方法です。
お互いが連帯保証人となります。
ローンの負担金に応じて、住宅の持ち分の割合も変わり、それぞれが自分の借入に対して返済義務を負います。
メリット
・単独で契約するよりも、借入金を増やすことができる
・それぞれがローンを組むので、住宅ローン控除を受けることができる
・2人とも団体信用生命保険に加入できる
デメリット
・夫と妻2本分の契約を結ぶため、事務手数料や諸費用も2倍かかる
・どちらかが、死亡または所定の身体障がい状態になった時に免除されるローンは、加入者側の分だけなので、もう片方のローンは残る
・お互いが連帯保証人となるので一方が収入がなくなった時、返済が困難になる
・パートナーの返済を肩代わりすると、その金額に応じて贈与税がかかる可能性があるため、肩代わりする場合は金額に応じて、家の持ち分割合を変更する必要がある。
住宅ローンの借り方 ②収入合算(連帯保証型と連帯債務型)
収入合算には連帯保証型と連帯債務型の2つの方法があります。
それぞれの特徴を解説していきます。
連帯保証型
連帯保証型は、夫1人が名義人で主債務者となり、妻は連帯保証人としてローンを組む方法です。
夫の年収だけでは希望額まで借りられない場合に、妻の収入の一部を加算して借入金額を増やすことができます。
妻は夫が返済できなくなった時に、返済の義務を負います。
メリット
・妻の収入の一部が加算されるので、借入額が増やせる
デメリット
・連帯保証人は住宅ローン控除を受けることができない
・連帯保証人は団体信用生命保険に加入することができないため、仮に連帯保証人が亡くなってもローンの残高は免除されない
・夫が返済できなくなった場合は、返済の責任は連帯保証人の妻となるため、妻の収入次第では返済が困難になる可能性がある
連帯債務型
連帯債務型は、ローン契約者は夫と妻の2人となり、2人の収入を合算して返済していく方法です。
主債務者は夫となり2人分まとめて支払いますが、妻も連帯債務者となり、住宅ローンを返済していきます。
住宅の名義は、共有名義となり返済額の割合で家の持ち分が決まります。
メリット
・2人の収入を合算できるので、借入額を増やせる
・負担割合に応じて住宅ローン控除を受けられる
デメリット
・民間ローンでは、団体信用生命保険に加入できるのは主債務者のみとされているため、連帯債務者は加入することができない
そのため連帯債務者が障がい状態になったり死亡しても主債務者の返済義務はなくならないので、生命保険をかけるなど生前対策が必要となります。
しかし、フラット35の連帯債務型であれば、夫も妻も団体信用生命保険に加入することができます。
もし妻が身体障がいの状態になったり、死亡した場合は、2人で担っている住宅ローンの残額全てが免除となります。
フラット35は連帯債務型の収入合算の条件に、「配偶者(婚約者または内縁関係にある方を含みます)」と明記されているため、事実婚でも利用しやすい住宅ローンといえます。
ただし、公的融資や民間融資に比べて、金利が高い傾向にあるので、比較検討が必要です。
単独名義の住宅ローンで購入した家を共有名義にする方法
夫が単独でローンを組み、家を購入します。
そして、妻が夫に毎月一定金額を貸し付け住宅ローン返済時に返済する契約を交わします。
ローン完済後に夫が家の一部を譲渡する形で妻に借金返済として所有権の一部を移せば、共有名義になります。
このとき必ず、金銭消費賃借契約書を交わしてください。
お金の貸し借りをしている証拠を残し、贈与とみなされないようにします。
事実婚で準備しておきたい書類
事実婚では、住宅を購入するときはもちろんですが、将来別れることになった時、死別することになった時を想定して、様々な取り決めをしておくことが重要です。
以下の書類を準備しておくことで、いざという時にパートナーや自分を助けてくれます。
公正証書
公正証書は、婚姻の意思、生活費の分担、貞操義務、関係解消時の財産分与、財産管理の後見人になることなどについて取り決めを交わしたものです。
公正証書を作成するには、2人の合意のもと、法律の専門家である公証人が中立な立場で作成するため、法的効力を持つ証拠となり、法律婚と同様の権利関係を築くことができます。合意契約を解消するときも、一方が勝手に取り消すことはできず、原則として2人の同意が必要です。
遺言書
法律婚であれば一方が死亡したとき相続権がありますが、事実婚は相続権がありません。
遺言書には法定相続分よりも強い効力があります。
遺言書に「事実婚のパートナーに遺産を残す」という旨を記載し、その遺言が有効であれば、相続発生時にパートナーに遺産を残すことが出来ます。
夫婦にとって最適な住宅ローンを組むためには、たくさんの情報を比較し検討することが必要になります。
そして、将来起こりうるかもしれない事態に備え、準備をすることが大切になってきます。
事実婚で住宅ローンをお考えの方にこの記事が少しでも参考になりましたら幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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