「2021年(令和3年)の税制改正で何が変わるの?」
「私に関係のある改正ってあるの?」
この記事は、そんな疑問を持っている方に向けた内容です。
そもそも「税制改正」って何なの?という方は、まずはこちらの記事で!
私たちの生活や選択に直接関係することも多い「税金」のお話。
今回の記事では、2021年の税制改正の中から次の3つについてお伝えします。
- 住宅ローン控除の特例の延長
- 国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置
- セルフメディケーション税制の見直し
2021年(令和3年)税制改正の概要
2021年(令和3年)の改正内容のうち、主なものは以下の通りです。
1. 中小企業の支援
2. 国際金融都市に向けた対応
3. 住宅ローン控除の見直し
4. セルフメディケーション税制の見直し
5. エコカー減税の見直し
6. 教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置の見直し
7. 国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置
8. 税務関係書類における押印義務の見直し
9. 電子帳簿等保存制度の見直し
など
今回はこの中から、個人の所得税に関係してくる次の3つを取り上げます。
- 住宅ローン控除の特例の延長
- 国や地方自治体の実施する子育てに係る助成等の非課税措置
- セルフメディケーション税制の見直し
住宅ローン控除の特例延長
住宅ローン控除とは、住宅を購入する際に金融機関等から借り入れをした場合の減税措置です。
一定の要件を満たすと、年末の借入金の残高に応じた税額控除を受けることが出来ます。
改正による減税のための条件と控除年数
今回の改正で変更になった、減税を受けるための主な条件は、次の2つです。
- 一定の期間※に契約した場合は、2022年(令和4年)末までに入居
- 住宅の床面積が40㎡以上(ただし、40㎡~50㎡未満の場合は所得1,000万円以下)
※一定の期間
注文住宅:令和2年10月~令和3年9月末まで
分譲住宅など:令和2年12月~令和3年11月末まで
これから住宅を購入しようという方の住宅ローン控除は次の図のようになります。
財務省/税制改正の概要より作成
改正による変更点は?
今回の改正は、新型コロナウィルスなどで低迷が続いている住宅投資について、幅広い層の購入を喚起する経済対策として行われました。
そもそも、令和元年10月1日から令和2年12月31日までの期間、消費税10%への引き上げの際の措置として、控除期間が13年に延長されていました。
今回の改正は、これを延長するものです。
さらに、これまでは、住宅の床面積が50㎡以上であることが条件でした。
これが、合計所得金額が1,000万円以下という条件付きですが、40㎡~50㎡未満という以前より小さな住宅も控除の対象に入りました。
国や自治体の子育て関連の助成が非課税に
2021年(令和3年)の改正で、国や自治体の子育て関連の助成が非課税になります。
国・自治体からの助成で非課税になるもの
国や自治体からの助成で非課税になるのは、例えば以下のようなもの。
- ベビーシッターの利用料に対する助成
- 認可外保育施設等の利用料に対する助成
- 一時預かり・病児保育などの子どもを預ける施設の利用料に対する助成
※これらと一体として行われる助成も対象です。
(例:生活援助、家事支援、保育施設等の副食費・交通費など)
改正前、助成金は「雑所得」として課税対象だった
改正前は、こういった支援で得たお金は「所得」とされ、課税の対象になっていました。
これが改正後は「非課税」に。
改正前、「雑所得」として扱われていた時に、どんな問題があったのか少し見ておきましょう。
例えば、東京都は、1時間当たり150円の負担でベビーシッターを利用できる制度を設けています。
利用者負担の150円と、実際の利用料金との差額を東京都や区市町村が負担してくれる仕組みですが、2020年(令和2年)まで、この差額は利用者の「雑所得」として扱われていました。
ほかの給与などの収入に、助成金の額が加算された金額に対して所得税が計算されてしまうため、助成の分だけ納税額が増えてしまい、利用が広がらないなどの問題がありました。
都の試算を次のようなケースで見てみると・・・
・年収500万円
・月平均50時間利用
(令和2年4月から12月までの9か月間)
所得税の計算は、〔給与収入500万円+助成金約100万円〕で行われ、
助成金の分だけ、年額約20万円の所得税・住民税の納税が追加される結果に。
今回の改正では、この助成金100万円の部分が非課税になるので、約20万円分の税金がかからなくなる…ということです。
セルフメディケーション税制の見直しと延長
最後は、セルフメディケーション税制について。
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品の見直しと、適用期限が延長されます。
セルフメディケーション税制とは
そもそもセルフメディケーション税制とは、2017年1月1日から始まった制度。
きちんと健康診断などを受けている人が、一部の市販薬を購入した際に所得控除を受けられるというものです。
この制度を利用して、私たちが軽度な体の不調であれば医療機関に行かずに、自分で市販薬を購入して手当てするようになることで、医療費の適正化にも貢献すると期待されています。
健康診断や予防接種などを受けていることが条件。
本人とその家族が購入したスイッチOTC薬の金額が、1年で1万2千円を超えた場合、超えた金額について、その年分の総所得金額等から控除されます。
控除のイメージはこちら。
出典:厚生労働省/セルフメディケーション税制の見直しについて
対象の医薬品にはこのマークがついています。
見かけたことがある人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、スイッチOTCとは、医師によって処方される医薬品(医療用医薬品)から、ドラッグストアで購入できるOTC医薬品(いわゆる市販薬)に転用された医薬品のことです。
2021年(令和3年)改正の内容
この「セルフメディケーション税制」は、2017年~2021年末までの時限措置でしたが、今回の改正で5年間延長(2022年~2026年)されます。
2022年(令和4年)分から対象医薬品が見直しに
さらに対象となる医薬品について、以下のような見直しが行われます。
- 対象となるスイッチOTCから、医療費適正化効果が低いものを除外(経過措置あり)
- スイッチOTC以外の一般用医薬品等で、医療費削減効果が著しく高いと認められるもの(3薬効程度)を対象に加える
現行では、風邪薬や解熱鎮痛剤など、症状改善に資するOTC医薬品の多くが対象外とされており、セルフメディケーション税制の利用が広がらない要因になっていることが背景にあります。
例えば、下の図の左側「スイッチOTC代表品目」が、現在セルフメディケーション税制の対象となっているもの。
一方、右側の「非スイッチ代表品目」は、現在のセルフメディケーション税制の対象外です。
出典:厚生労働省/セルフメディケーション税制の見直しについて
今後税制の対象となる医薬品の見直しが行われ、2022年(令和4年)分以後の所得税で適用されます。
2021年(令和3年)分から健康診断などの証明書類の添付が不要に
令和2年分までは、申告の際に健康診断や予防接種などを受けていることを証明する書類を添付する必要がありました。
これが令和3年分から添付不要になります。
ただし、5年間は保管しておき、税務署から求められた場合に提出できるようにしておくことが必要です。
医薬品購入費について、明細の添付は引き続き必要で、明細に健康診断を受けたことなどを記載します。
出典:明細書・計算明細書等(令和2年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)
まとめ
いかがでしたか?
今回は2021年(令和3年)の税制改正のうち、私たちの生活に身近なもの3つを紹介しました。
住宅の購入は高額な買い物ですし、子育てや薬にかかるお金は、なかなか減らすことが難しいですよね。
こうした高額だったり直接は減らしづらい費用でも、税金の制度を活用することで家計の負担を軽くなることも。
さらに、今回の子育てに係る助成の非課税措置やセルフメディケーション税制の対象となる薬の見直しのように、それまでは使いにくかった制度が、改正によって利用しやすくなる場合もあります。
今後も私たちの暮らしに関係のありそうな制度の改正については、しっかり注目しておきたいですね。