新型コロナウィルスが流行した2020年以降、在宅ワーク人口が増えるに伴い、趣味の時間ができた人も増えたのではないでしょうか。
新たな趣味として楽器を始める方もいらっしゃるものの、「楽器」と一口に言っても様々な種類があり、中には高額なものも沢山あります。
本記事では楽器店出身の筆者が、楽器のトラブルを想定した備えについて詳しく解説していきます。
楽器保険の概要
まず、確実に楽器のトラブルに備えることができる方法は、保険に加入しておくことです。
年間の保険料はかかりますが、自分では防ぎようのない災害※や盗難などの被害に備えることができます。
※一部対象外の事例あり(本記事後半「動産総合保険を利用する際の注意点」にて解説しています。)
ここからは楽器保険にはどのような種類があるのかということと、どのような事例において適用されるのか等をご説明していきますが、実は「楽器保険」という特定の保険商品があるというよりは、動産総合保険を楽器保険として紹介しているところがほとんどです。
動産総合保険としての楽器保険
動産総合保険とは、事業用の什器・備品、機械、器具、商品または個人所有の精密機器、楽器などの動産(不動産以外の財産)を対象とした総合保険です。
店舗や企業などが加入する場合がほとんどですが、高額な所有物については個人で動産総合保険に加入することもできます。
※各種動産総合保険資料を参考に、筆者にて図解作成
この他にも運送中の事故や、不測かつ突発的な事故による破損なども対象になります。
家財保険としての楽器保険
動産総合保険以外に、家財保険で楽器の万が一の事態に備えておくという方法もあります。
家財保険とは、火災保険の中の「家財」を対象としたもので、テレビや冷蔵庫といった、家の中にある生活動産を守る保険です。
ただし、30万円を超える貴金属や美術品等は、必ずしも生活に必要ではない「ぜいたく品」として扱われ、事前に個別申告が必要です。
楽器も必ずしも生活に必要ではないという意味では「ぜいたく品」に近い要素もあるのですが、生活内容を豊かにするための道具としての要素が強いことや、音楽を生業としている人も沢山存在しますので、楽器は予め補償の対象となる家財に含まれています。
ただし、オールドヴァイオリン(ヴァイオリンの形が確立された1600年代~1800年初頭に製作された楽器)など骨董的な価値がついてくる楽器については値段もかなり高額なものになりますので、特に価値の高い楽器を持っている人は念のため個別に申告しておくことをお薦めします。
家財保険でも火災、落雷、盗難、水漏れ等の事故による損傷をカバーできますが、動産総合保険との大きな違いは、「家財」つまり自宅の中のものに限るということです。
持ち出し家財の事故について補償する特約が付いている内容のものもありますが、基本的には家の外に持ち出して起こった事故については補償されませんので、注意しましょう。
また、家財保険が家財全般にかけられることに対し、動産総合保険は特定の所有物ごとに保険をかける形であることも大きな違いのひとつです。
海外旅行中の備えについて
家財保険はもちろんですが、動産総合保険も海外での事故については補償の対象外です。
しかし、海外旅行に楽器を持っていくときには、国内にいるときよりもむしろトラブルに巻き込まれる可能性が高く、心配は大きくなるものです。
こんなときは海外旅行保険をお薦めします。
海外旅行保険は単発で旅行期間中だけ入ることができるものもあれば、クレジットカードの付帯サービスとして付いているものもあります。
ただし、クレジットカード付帯の保険については補償内容があまり厚くないことも多く、携行品の損害についての保障は10万円程度の場合もあるので、楽器のための保障としては少々手薄ともいえます。
そのため、高額な楽器に対する備えとしては、単発でも良いのできちんとした海外旅行保険に加入することをお薦めします。
動産総合保険を利用する際の注意点
日頃持ち歩くことの多い楽器には、家財保険よりも動産総合保険に加入したほうがより安心ですが、動産総合保険でも対象外の場合があったり、価格が変動するものに対する制限などもありますので、注意点を確認しておきましょう。
注意点① 補償対象外の損害
ある損害を被った場合でも、事故が起きた時の状況によっては補償がされない場合もあります。
主な補償対象外の事例は以下の通りです。
- 日本国外に楽器がある間に生じた損害
- 水災によって生じた損害
- 地震・噴火・津波・水災によって生じた損害
- 被保険者や使用人の不正行為や故意によって生じた損害
- 電車内や自動車内に放置したままその場を離れた場合の盗難、損害
故意に傷つけられたものが補償されないことは当たり前ですが、先にも述べた通り海外旅行中の事故については補償されないことや、地震・噴火・津波による損害が対象外であることが主な注意点です。
ただ、日本は地震が多く、地震によって楽器が壊れてしまうリスクは比較的高いと言えます。
そのため、日頃から頑丈なケースに保管するなどして、万が一地震で物が倒れてきたり、家が一部倒壊した場合でも楽器を守ることができるような工夫をしておくことも大切です。
また、買い物などで車内に放置している間に盗難に遭ってしまった場合なども補償の対象外になってしまいますので、気を付けましょう。
注意点② 価値が変動する可能性があっても保険金額は引き上げられない
オールドヴァイオリンなど骨董的な価値があるものについては、将来的に同じものを入手しようとすると現在の価格の何倍もの金額になる可能性があります。
しかし、一般的には保険金額は保険加入時の価値で判断され、その後価値が大幅に上がっても保険金額を後から引き上げるということはなかなか難しいです。
少しでも事故時の価格に近付けたいという方は、時価額ではなく再調達価格をもとに保険金額を設定できる特約※をつけると良いでしょう。
※次の「保険料について」でさらに詳しく解説しています。
保険料について
それでは、動産総合保険に加入した場合の保険料は年額でどれぐらいになるのでしょうか。
保険料は、補償対象の楽器の保険金額(全壊してしまったときに受け取りたい金額)に比例して上がっていきます。
保険金額の決定方法
保険金額は、時価額もしくは再調達価格をもとに決めます。
時価額…同等のものを新たに購入するのに必要な金額から使用による消耗分を差し引いた額
再調達価格…保険の対象と同一の構造や質のものを再築または再取得するのに要する額
基本的には時価額をもとに決めますが、「新価保険特約」というオプションを付けて再調達価格をもとに決める場合もあります。
また、保険金受け取り時に対象物の価値が上がっていても下がっていても同じ金額を受け取ることができる「協定保険価格特約」というオプションもあり、楽器に関してはこれを付けることが多いです。
ただし、所有している楽器によってどれが適切かは異なりますので、自分の持っている楽器の性質と保険会社の商品をよく確認して決めましょう。
保険料の目安
商品によって保険料率は異なりますが、楽器保険の目安としては保険金額の1%程度が年間保険料として設定されているところが多いです。
※保険料率1%の場合を想定し、筆者にて図解作成
保険料見積もりの際には楽器の価格を被保険者から申告することになりますが、本当にその楽器が正しい相場価格で申告されているかどうかというところが保険会社にとっては気になる点です。
場合によっては楽器購入時の契約書の提出や、楽器店から「たしかにこの楽器をこの価格で販売しました」という証明書を発行してもらわなければならないこともあります。
しかし長年販売実績があるような信頼できる楽器店から紹介されて保険に加入する場合には、「〇〇楽器から紹介されました」と申告すると書類を提示せずともその日のうちに見積りを出してもらえたり、信頼できる楽器店からの紹介だからこその特典がある場合もありますので、まずは購入した楽器店に相談してみると近道になるかもしれません。
まとめ
- 楽器のための備えは、携行時の損害にも対応できる動産総合保険がおすすめ!
- 地震・噴火・津波・水災、車上放置などの補償対象外の事故に要注意
- 海外旅行に楽器を持っていくときは海外両行保険加入を検討しよう
- 楽器店からの紹介で特典を受けられることも!まずは相談してみよう
保険によって万が一の事態に備えられる安心感はありますが、ご紹介した注意点のように、カバーされない事故も存在します。
まずは自分でできる備えとして頑丈なケースを使用したり、安全な場所に置いたりと、楽器を大切に取り扱うことが大前提となりますので、楽器を取り巻く環境を確認してみましょう。
今回は楽器保険について解説しましたが、私たち自身もさまざまなリスクと接しており、資産の状況や家族構成、年齢ごとに必要な備えの種類や金額は異なります。
いざというときに慌てないためにも、保険は私たち専門家(FP)にご相談頂き、一緒に最適な内容を考えていきましょう。
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