お金の基礎知識

デジタル遺産とは?遺族が困らないために知っておきたい対策も解説

こんにちは。あしたばアシスタントFP(ファイナンシャルプランナー)の舘野です。

終活(しゅうかつ)という言葉が登場し、家族や周囲に、できるだけ迷惑をかけずに人生を終えるための準備が徐々に注目されるようになりました。

終活とは、具体的には荷物の整理や相続に関する計画、葬儀や墓について予め決めて準備・処分することをいいます。

このときに注意したいのがデジタル遺産

最近はネット銀行やネット証券を利用する人が増え、ネット銀行の口座に多額のお金が残っているのにパスワードやセキュリティーの問題があって遺族がアクセスできず困ってしまう、もしくはそもそもネット銀行の存在を遺族が知らなかったという事態にもなりかねません。

遺族に見つけてもらえない遺産を少しでもなくすために、そして家族にできるだけ迷惑をかけないためにも、今回はこのデジタル遺産の概要や対処法を解説します。

そもそもデジタル遺産ってなに?


皆さんは「遺産」という言葉を聞くとどのようなものを想像しますか?

一般的には、預貯金不動産、さらに死亡退職金生命保険の死亡保険金を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。

しかし、時代が変わるにつれて遺産の内容も変わってきており、各種サービスを利用する際のアカウントや、インターネットを介して利用できる銀行や証券会社の口座も増えてきました。

このように、各種サービス・システムの利用アカウントやネット銀行・証券の口座にある預貯金のことをデジタル遺産といいます。

デジタル遺産の主な種類は以下の通りです。

種類具体例
金融資産・決済手段・各種ポイントネット銀行・ネット証券・FXや仮想通貨の口座残高・各種ポイント・PayPayなどのキャッシュレス決済(電子マネー)
SNS・メールFacebook・Twitter・ブログ・Gmailなどのフリーメールサービス
各種有料サービス動画や音楽の配信サービス・各種サブスク

上記の表からも分かる通り、デジタル遺産はスマホやパソコンを介して利用するサービスであり、たいていアクセス(ログイン)するためにIDパスワードが設定されています。

つまり、これらを利用していることを何らかの形で家族に知らせないまま亡くなってしまうと、デジタル遺産は家族に気付かれることもなく放置されてしまい、仮に存在を知っていてもアクセス(ログイン)するための情報がなく遺族が困ってしまうためしっかりとした対策が必要です。

なお、クラウドサービス上にある写真や文書はデジタル遺品と呼ばれ、デジタル遺産とは区別されることが多いため、デジタル遺品についてもこの機会に覚えておきましょう。

預貯金や不動産といったプラスの価値がある遺産だけでなく、亡くなった人の借金やローン、未納となっている税金などの債務(マイナスの資産)も遺産に含まれます。

デジタル遺産に関するトラブル


ではデジタル遺産をそのまま放置しておくとどうなるのでしょうか。

①相続金額が決まらない

相続が発生すると遺産配分について話し合われることが一般的ですが、遺産配分を決める際には遺産の総額を明らかにしておかなければなりません。

遺産分割の話し合いの際には気付かなかったデジタル遺産があると、改めてデジタル遺産を相続金額に含めた上で相続金額を再び話し合う必要があり、デジタル遺産にマイナスの資産が含まれていると相続金額が減るなどの影響があります。

②延滞税や加算税が発生することも

遺族が把握していないデジタル遺産があると、相続税の申告から漏れてしまい、故意ではないもののデジタル遺産の金額によっては過少申告になってしまいます。

相続税の申告は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内と決められており、この期限までにデジタル遺産の詳細を明らかにした上で正しく申告せねばならず、期限に遅れると延滞税、申告額が少なければ過少申告加算税が発生することもあります。

③相続放棄の判断に影響が出る

先述の通り、遺産には債務などのマイナスとなるものもあります。

マイナス資産の金額次第では、相続を放棄することも検討する人が出てくるでしょう。

しかし、デジタル遺産の所在を遺族が知らないケースだと、債務を知らないまま相続してしまい、あとからマイナスの資産が発覚し、相続人に多大な迷惑がかかるという可能性もあります。

「債務(マイナスの資産)があることを知っていれば、相続を放棄していたのに…」というケースも出てくるかもしれません。

また、債務が把握できなければ相続税の計算が正確にできず、デジタル遺産を把握していないことによる弊害は想像以上に大きくなります。

相続は「争族」と表現されることがあり、ときに家族に大きな亀裂をもたらすこともあります。

「うちには揉めるほどの遺産はないから」と考えていても、いざ相続が発生すると相続財産がケンカの火種になることもあるため、上記のような事例を避けるためにも対策が必要です。(相続財産が少なくても揉めるケースはたくさんありますので、相続金額が多い・少ないは関係ありません。

今から始められるデジタル遺産対策


デジタル遺産は目に見えないため、その存在を家族に明らかにし、できるだけ家族に負担をかけない形で管理しておくことが大切です。

しかし、セキュリティーの観点から考えると、「〇〇ネット証券の残高は〇〇円で、IDとパスワードは※×〇▼だよ」などといった詳細情報を家族と共有することは避けたいと考える人も多いでしょう。

そこで、できるだけ安全性の高い方法で、今から実践できるデジタル遺産対策方法をご紹介します。

なお、以下の対策方法を全て実践しなければならないというわけではなく、ご自身の考え方や整理しておきたいデジタル遺産の内容に応じて適切な方法を選ぶと良いでしょう。

デジタル遺産の所有者が取る対策① リストを作る

デジタル遺産を管理する上で一番最適なのは、利用しているサービス・システムにどのようなものがあるのか書き出してみる方法です。

その際には、それらにアクセスするために必要な情報(IDやパスワード)も記載することを覚えておきましょう。

その上で、書きだしたリストやノートを金庫などに保管し、デジタル遺産を記録したリストやノートがある旨を家族に伝えておきましょう。

死後の整理などについては、エンディングノートを利用する人も増えています。

エンディングノートにデジタル遺産の詳細を記入した上で、例えば見られたくないものがある場合はその旨を追記しておくと遺族も配慮してくれることでしょう。

なお、写真や動画といったデジタル遺品についても一緒に記載しておくと遺族も分かりやすく、整理もスムーズでしょう。

エンディングノートやデジタル遺産のリストは、適宜アップデートする必要があります。IDやパスワードは変更の度に書き換える必要があるため、エンディングノートやリストの管理方法も自分に合う方法を選びましょう。

デジタル遺産の所有者が取る対策② 不要なサービスを解約する

サブスクと呼ばれる月額課金制サービスは、仮に遺族が存在に気付かなかった場合、引き続き利用料が引き落とされることになります。

そのため、この機会に不要なサブスクはないか確認してみましょう。

サブスクを見直すことで遺族への負担を減らせるほか、無駄な支出が減って一石二鳥です。

また、利便性が高いネット銀行を利用している人も多いですが、ネット銀行の預金残高もデジタル遺産です。

複数のネット銀行にそれぞれ残高があると遺族の負担も大きくなるため、例えばネット銀行は1行に絞るなど、利用する金融機関をよりスリムにできないか検討するのも良いでしょう。

相続人が取る対策

デジタル遺産対策はデジタル遺産の所有者だけではありません。

相続人でも実践できる対策として、家族のデジタル遺産の状況を聞いておく点が挙げられます。

例えば夫婦の場合、利用しているネット銀行やネット証券があることだけでも配偶者に伝えておくと、デジタル遺産の所在を容易に把握できます。

また、利用しているサービスやネット銀行の詳細について、普段の会話を通して知っておくことも非常に重要です。

先述の通り、デジタル遺産の存在を遺族が把握することは難しいため、相続人はデジタル遺産が他の財産よりも遅れて見つかる(発覚する)ことも想定しておかなければなりません。

このときに備えて、デジタル遺産がマイナスである場合にも備えて相続放棄も視野に入れておくと良いでしょう。

ますます増えるデジタル遺産!早めの対策が重要

デジタル化が進み、遺産として残る預貯金の形も大きく様変わりしています。

個人が所有するデジタルデータは徐々に増えており、今後ますますデジタル遺産が増える可能性があります。

「ネット銀行に多額の残高があった」

「サブスクを利用していたようだが利用アカウントの詳細がわからず解約できない」といったケースは容易に想像でき、遺族はデジタル遺産の把握や対応に多くの時間を割くことにもつながりかねません。

そのため、遺族が困らないようにデジタル遺産対策が急務といえるでしょう。

なお、デジタル遺産については年齢を問わず対策が必要です。

まずはご自身のデジタル遺産(余裕があればデジタル遺品も)を把握し、デジタル遺産リスト・ノートを作ることから始めてみましょう。

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