国の制度

縮小?廃止?在職老齢年金制度の問題点と今後について解説

在職老齢年金制度ってなに?
いくらから年金停止されるの?

この記事は、そんな疑問・ニーズにお答えする内容です。

在職老齢年金制度は、厚生年金に加入しながら働く人のための制度なので、個人事業主やフリーランスの方は対象外となりますのでご留意ください。

年金はいくらもらえる?簡単な調べ方3選!受給額早見表と年金を増やす方法も 年金の受給額は私たち一人一人の人生設計に大きく影響します。 しかし、年金制度は複雑で、自分が将来どのくらいもらえる...

在職老齢年金制度とは

在職老齢年金制度とは、60歳以降に老齢厚生年金を受け取りながら働く場合、老齢厚生年金と給与の合計額が50万円を超えると老齢厚生年金の一部または全額が支給停止になる制度です。

支給停止額は以下の計算式で求められます。

支給停止額の求め方

支給停止額=(老齢厚生年金の基本月額+総報酬月額-50万円)×1/2

  • 対象は老齢厚生年金のみで、老齢基礎年金は減額されずに全額支給されます。
  • 70歳以降は厚生年金の被保険者にならないため保険料負担はありませんが、厚生年金の加入条件と同程度で働く場合、70歳以降も支給停止の対象となります。
  • 老齢厚生年金が全額支給停止にならず一部でも受給できれば、加給年金は全額受給できます。

この在職老齢年金制度、はたしてどれくらいの人が対象となるのでしょうか。

在職老齢年金制度の対象者と今後の推移

在職老齢年金制度の対象者

厚生労働省によると、2022年65歳以降で在職している年金受給者は248万人とされています。

そのうち、在職老齢年金制度によって年金の一部または全額が停止となっているのは全体の17%にあたる41万人です。

65歳以降で働いている約6人に1人が、年金停止の対象になる

参考:厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方」

また、65歳以上の在職老齢年金制度の状況をみると、賃金と年金の合計額が20万円以上~24万円未満の人が最も多いことが分かります。

では、60歳以上の平均賃金は今後どうなるのでしょうか。

60歳以上の賃金の推移


厚生労働省によると、正社員の60~64歳の月額平均賃金は34.9万円、65~69歳は31.2万円です。

ここで注目したいのは、60歳以上の賃金の対前年増減率です。
60~64歳は5.9%、65~69歳は5.4%と、全年代の中で5%以上増加しているのは60歳以上のみです。

参考:厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況」第6-1表 雇用形態、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び雇用形態間賃金格差

次に、高齢者の労働人口の推移を見てみましょう。

高齢者の労働力人口の推移


内閣府によると、令和5年の労働力人口は、全体で6,925万人でした。

そのうち、65~69歳が394万人、70歳以上が537万人と、65歳以上の割合が全体の13.4%を占めています。
これは、長期的にみて上昇傾向にあります。

参考:内閣府「令和6年版 高齢社会白書(全文)」第2節 高齢期の暮らしの動向

賃金が上がり、高齢者の労働人口が増えている現状を踏まえると、在職老齢年金制度は多くの方が今以上に意識するべき制度になる

高齢者の雇用確保義務化

在職老齢年金制度を意識すべき更なる要因として、高齢者の雇用確保があります。

高年齢者雇用安定法の改正により、2025年4月からすべての企業で「65歳以上の雇用確保」が義務化されます。
そのため、年金を受給しながら働く方は今後増えていくことが予想されます。

高齢者の労働力が求められる中、年金を増やすために繰下げ受給を検討している方も多いと思います。
この在職老齢年金制度は繰下げ受給にも大きく影響してきますので、見ていきましょう。

繰下げ受給への影響

繰下げ受給とは、老齢基礎及び厚生年金を65歳で受け取らずに、66歳以後75歳までの間で繰下げて年金を受け取ることです。

老齢基礎年金、老齢厚生年金を別々に繰下げることも可能で、その繰下げた期間によって年金額が増額され、その増額率は生涯続きます。

年金の受給額増額の手段として、政府はこの繰下げ受給を促しています。

増加率の求め方

繰下げた月数×0.7%
(75歳まで繰下げた場合、最大84%増額

ここで注意しなければならないのは、在職老齢年金制度で停止された老齢厚生年金部分は繰下げの対象とならない点です。

支給停止額を除いた年金額に増額率をかけて、老齢厚生年金の増額分を計算するので、繰下げによる効果が無い場合も考えられます。

参考:日本年金機構「年金の繰下げ受給」

具体的には、繰下げ加算額に平均支給率を乗じて計算します。

平均支給率=月単位の支給率の合計÷繰下げ待機期間
月単位の支給率=1-(在職支給停止額÷65歳時の老齢厚生(退職共済)年金額)

支給停止された部分の増額分は戻ってきませんので、在職老齢年金制度をふまえた上で繰下げ受給を検討することをお勧めします。

在職老齢年金制度の問題点と今後について

在職老齢年金制度の問題点

ここからは在職老齢年金制度の問題点と今後について解説していきます。
まずは、問題点についてです。

少子化で働き手不足にある日本は、高齢者層の労働意欲を今まで以上に促す必要があります。
しかし、在職老齢年金制度がある以上、高齢者の労働人口を増やすことが難しくなってしまうのです。

在職老齢年金制度は、高齢者に「働き損」の状況を生じさせ、働く意欲を削いでしまっている

そのため、在職老齢年金制度は、増額もしくは廃止が議論されています。

しかし、2020年の年金制度改正では、廃止することは高所得者優遇になると批判が強まったのです。

その結果、60~64歳の基準額28万円を、65歳以上と同じ47万円に引き上げられました。
その後もさらに制度は改正され、2024年4月から基準額は現在の50万円となっています。

在職老齢年金制度が廃止されると

この在職老齢年金制度を廃止すると、どういったことが起きるのでしょうか。

2024年7月に公表された「令和6年財政検証結果の概要」では、在職老齢年金制度を廃止することで年金給付総額は2030年には5,200億円、2040年にはなんと6,400億円増加すると示されました。

つまり、廃止することで増額する分の財源を確保しなければ、将来の年金受給水準が低下してしまうのです。

参考:厚生労働省「令和6年財政検証結果の概要」4.65歳以上の在職老齢年金の仕組みを撤廃した場合

今後の在職老齢年金制度


この在職老齢年金制度、今後どうなっていくのでしょうか。

度々議論や改正がされる中、2024年9月、「高齢社会対策大綱」の改定が閣議決定しました。

その中で、公的年金制度については、「働き方に中立的な年金制度の構築を目指して、更なる被用者保険の適用拡大等に向けた検討を着実に進める」と明記されています。

これは、在職老齢年金制度の見直しを示唆しているものであり、2025年の年金改革に期待が高まっています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
在職老齢年金制度の内容と今後について解説してきました。

厚生年金の受給額は、保険料の納付月数と収入によって決まるため、収入が高い人ほど受給額は多くなります。
繰下げ受給を選択する際は、ご自身が在職老齢年金制度の対象になるかどうか事前に確認することをお勧めします。

まだ年金受給開始まで年数がある方も、毎年お手元に届く「ねんきん定期便」で年金支給見込額も確認できますので、是非参考にしてください。

ご不安があれば、あしたばにお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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