iDeCo(イデコ)や勤務先の確定拠出年金(DC/401k)の受け取り時期が近づいてきたけど、受け取り方法を選ぶときのポイントは?」
「うまく節税に繋げる方法ってあるの?」
この記事は、そんな疑問にお答えする内容です。
前回に続いて、確定拠出年金(iDeCo /イデコ、企業型DC / 401k)の60歳以降で受け取る老齢給付金の「受け取り方による税計算の違い」について解説していきます。
今回のテーマは、更に踏み込んで「実際に受け取り方法を選ぶ時のポイント・注意点」
確定拠出年金の出口戦略を考える上ではかなり重要なテーマですので、ぜひ最後までお読みくださいね!
※前回の記事↓をご覧になっていない方は、一度確認しておくことをお勧めします。
【おさらい】老齢給付金の受け取り方と税計算の違い
まず前回のおさらいをしておくと、確定拠出年金の「老齢給付金を受け取る方法&税計算の仕組み」は、以下の3通りです。
- 一時金受け取り =退職所得
- 年金受け取り =雑所得(「公的年金等控除」利用可)
- 併給(一時金と年金の組み合わせ)=一時金部分は退職所得、年金部分は雑所得(「公的年金等控除」利用可)
※③の併給は金融機関(運営管理機関)によって不可の場合あり
どのような仕組みで税金を計算するかは前回解説しましたので、今回は、「実際に受け取り方法を検討する時」のポイントと注意点をお伝えします。
ポイント① 一時金受け取りの場合、よほど貯まっていない限り税金は「ほぼかからない」
前回の記事でご説明したとおり、一時金受け取りを選んだ場合は退職所得扱いとなって「退職所得控除」が使えますから、その時点で税金がかかる可能性は少ないでしょう。
仮に相当な金額が貯まっていたとしても、「2分の1で計算」と「分離課税」のメリットによって、かかる税金はだいぶ低く抑えられる可能性が高いです。
基本的には、そこまで税金を気にする必要はないといえるでしょう。
ポイント② 退職金の額が大きい場合は、要注意!
ただし、一時金受け取りで要注意といえる点があります。
それは、「他の退職金等*の退職所得控除を計算する上で、勤続年・加入年が重複している部分は合算する」というルールです。
※退職一時金、確定給付企業年金(DB)、中小企業退職金共済(中退共)、小規模企業共済 等
この点はだいぶ細かくなるので、一例だけに留めますが、下記の具体例を確認しておいてください。
「①30歳入社60歳時点で退職する会社から、退職金2000万円を受給(勤続年数30年)」
+
「②45歳加入60歳時点で確定拠出年金の老齢給付を、一時金で1,000万円受給(加入年数15年)」
というケースで、退職所得控除はどのように計算されるか?
誤)「①2,000万円-退職所得控除1,500万円」+「②1,000万円-退職所得控除600万円」
正)「①2,000万円-退職所得控除1,500万円」+「②1,000万円-退職所得控除0円(①で退職所得控除を使い切っているため、②では退職所得控除を使えない)」
※上記はイメージを掴んでいただくためのものであり、正確な計算式とは異なる場合があります。また、個別の税務取扱等につきましては、最寄りの税務署・税理士等にご確認願います。
よって、結論だけで良いと思いますが、「まとまった退職金をもらう予定の人は、確定拠出年金を受け取り方を検討する際に注意が必要」と覚えておくと良いでしょう。
ただし、一定の期間を開けると合算されない
上記のとおり、一時金受け取り時に退職所得控除を計算する際、基本的には「他の退職金等*と勤続年・加入年が重複している部分は合算する」ルールなのですが、一定の期間を開けると合算されないことになっています。
「一定の期間」は、下記のようにもらう退職金等と順序によって異なります。
- 他の退職金等 → 確定拠出年金 14年超
- 確定拠出年金 → 他の退職金等 4年超
つまり、次のようなケースでは合算されないで済むという訳です。
会社員・公務員の方)
長年勤めた会社を早期退職して、53歳で退職金を受給 → ずっと続けていたiDeCoの老齢給付を、68歳で一時金受給
=他の退職金等の受給から確定拠出年金の一時金受給まで「15年」空いているため、合算されない
自営業の方)
40歳から始めたiDeCoの老齢給付を、60歳で一時金受給 → 30歳から始めた小規模企業共済の共済金を、65歳で一括受け取り
=確定拠出年金の一時金受給から他の退職金等の受給まで「5年」空いているため、合算されない
なお、会社員・公務員の方の場合、上記事例はイレギュラーケースだと思っておいてください。
最後まで勤め上げるのであれば60歳~65歳で退職金をもらう可能性が高いでしょうから、
そのあと14年超を開けて確定拠出年金の老齢給付を受け取るのは、現実的ではありません。
前々回の記事で解説した通り、確定拠出年金の老齢給付は70歳までに受け取り方法を決めて、受け取りをスタートさせなくてはならないためです。
よって、会社員・公務員の方であれば、「基本的に合算を回避することは難しい」と認識しておいた方が無難といえるでしょう。
※2022年10月~の法改正で「75歳までに受け取り方法を選べばOK」になりますが、合わせて税計算ルールも改正となる可能性もあるため、現時点ではなんとも言えません。
合算されたとしても、「もらう年をずらす」ことにより節税できる可能性あり
上記のようなまとまった退職金が入る予定の方は、「もらう年をずらす」ことによって税金を抑えることができる可能性もあります。
キーワードは「超過累進税率」
かなり細かい話になるので具体例は次回で取り上げますが、「もらう年をずらす」ことにより1年あたりの退職所得が抑えられ、超過累進税率による所得税率を低くすることができる場合もあります。
節税のコツは、「できるだけ低い税率で収入を得ること」と覚えておいてください。
(詳細は弊社セミナーやFP相談でご確認いただくか、最寄りの税務署・税理士事務所等にお問合せください。)
ポイント③「年金受け取り」や「併給」を使うメリットもある!
前述のとおり、「確定拠出年金でよほど大きな額が貯まっている」か「他の退職金等の額が大きい」ということがなければ、全て一時金受け取りでも税金上の問題はないと思います。
もし、そのどちらかにより退職所得控除で引ききれなかった場合、「年金受け取り」や「併給」の有効活用も検討してみましょう。
こちらも具体例は次回で取り上げますが、例えばこんなやり方も考えられます。
年金受け取りのみの活用例)
- 確定拠出年金で貯まった積立金は、60歳時点で300万円
- 65歳から公的年金を受給するので、公的年金等控除を使う予定がない。
→→→
- 確定拠出年金の老齢給付を「60~64歳の間・毎年60万円×5」で年金受け取りすることにして、毎年60万円までの公的年金等控除をフル活用する。
併給の活用例)
- 確定拠出年金で貯まった積立金は60歳時点で800万円
- 退職金で退職所得控除を使うため、残りの使える退職所得控除は500万円
- 65歳から公的年金を受給するので、公的年金等控除を使う予定がない。
→→→
- 確定拠出年金の老齢給付は「併給」を選択し、800万円のうち500万円を一時金受け取りして、残りの退職所得控除をフル活用する。
- 800万円のうち300万円は「60~64歳の間・毎年60万円×5」で年金受け取りすることにして、毎年60万円までの公的年金等控除をフル活用する。
いかがでしょう? これなら税金はかからないですよね。
このように、年金受け取りを上手に活用することで節税できる可能性もありますので、ぜひ受け取り方を検討する際の参考にしてください。
前回と今回のまとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
この記事ではあくまでも概要をお伝えしましたが、それでも「確定拠出年金の受け取り方による税計算の違いはややこしく、ケースバイケースでベストな受け取り方も変わってくる」というのがご理解いただけたかと思います。
次回に具体例・ケーススタディを取り上げますが、ここまで「お腹一杯」という方は、ぜひFPや税理士等の専門家に相談してみることをお勧めします。
ただし、まだ30~40歳前後の方であれば、ハッキリ言ってその必要もありません。
実際に老齢給付を受け取るのは約20~30年後の話ですし、その時には税制度が変わっている可能性も十分にあります。
そうなると対策も全く変わってきますから、いま一生懸命勉強してもその知識は役に立ちません。
ここまで全力で解説しておいて言うのもなんですが…
ぜひ、受け取り時の税金について気にし過ぎずに「長く積み立て投資をすることによるせ運用成果」「入口段階での税メリット」に期待して、
確定拠出年金(iDeCo /イデコ、企業型DC / 401k)を積極的に活用するようにしてください!
主に50代の方は、受け取り時期が迫ってきていますので、次回の「確定拠出年金の受給方法による税計算の違い(ケーススタディ)」をチェックしておきましょう。
弊社横浜のFPオフィス「あしたば」は、5年前の創業当初からiDeCo/イデコや企業型確定供出年金(DC/401k)のサポートに力を入れています。
収入・資産状況や考え方など人それぞれの状況やニーズに応じた「具体的なiDeCo活用法と注意点」から「バランスのとれたプランの立て方」まで、ファイナンシャルプランナーがしっかりとアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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