日本企業のほとんどは月給制の給与形態のため、年俸制についてあまり知る機会はないかもしれません。
この記事では、年俸制の基礎知識から月給制との違い、メリット・デメリットまで詳しく解説します。
年俸制の働き方に興味のある方はぜひ最後までご覧ください。
【年俸制】基本の仕組みを解説
近年、外資系企業や専門職で広く採用されている年俸制。
求人サイトなどで目にして、気になっていた方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここからは、年俸制の基本的な定義や現状について詳しく解説します。
年俸制の定義
年俸制とは、1年単位で給与額を決定する給与形態のことです。
年俸制には大きく分けて2つの種類があります。
- 単一型年俸制:業績を評価して1年間の給与を決定する形態
- 複合型年俸制:「基本年俸」と「業績年俸」の2本立てで1年間の給与を決定する形態
欧米では単一型年俸制を導入している企業が主流ですが、日本企業の多くでは一定の収入が保障される複合型年俸制を導入しています。
年俸制度は、主に成果主義や高い専門性が求められる職場で導入されています。
個人の能力や仕事の成果に応じた報酬体系が特徴で、年間の給与が事前に明確に示されます。
転職の場合は、前職の給与水準やスキルをもとに年俸額が決定されます。
労働基準法第24条では「賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない」と定められているため、年俸制であっても給与総額を分割した額が月ごとに支払われる仕組みになっています。
参照:労働基準法|e-GOV法令検索
例)年俸額480万円÷12か月=月収40万円
日本における年俸制の現状
年俸制というと、プロスポーツ選手などをイメージされる方が多いかもしれません。
しかしそれ以外にも、外資系企業やIT業界、さらには証券会社やコンサルティング企業など、年俸制はさまざまな企業で幅広く導入されています。
また、管理職以上の社員に対し、年俸制を導入している企業も増えています。
これは、多くの企業が管理職に裁量労働制(※)を採用していて、労働時間(残業時間)をコントロールしやすくなるためです。
※裁量労働制とは、実際の労働時間ではなくあらかじめ定められた時間分を働いたものとみなし、報酬が支払われる制度のことです。
一方で、日本の多くの企業では依然として月給制が主流です。
少し古いデータになりますが、厚生労働省の「就労条件総合調査」(平成24年)によると、日本で年俸制を採用している企業の割合は約13.3%です。
1,000人以上の企業では32.6%導入しており、企業規模が大きいほど年俸制を導入している割合が高くなっていることがわかります。
ただしこれは平成24年の調査結果なので、現在ではさらに増えていることが予測されます。
企業規模 | 年俸制を導入している企業 |
計 | 13.3% |
1,000人以上 | 32.6% |
300~999人 | 24.5% |
100~299人 | 18.4% |
30~99人 | 10.4% |
参照:厚生労働省「就労条件総合調査」(平成24年)をもとに作成
年俸制と月給制の違いを比較
年俸制と月給制は、給与の支払い形態において大きく異なります。それぞれの特徴や違いを理解することで、自分に適した給与形態を選択できるでしょう。
月給制の基本的な特徴
月給制は、社員の年齢や勤続年数が考慮され、1カ月単位で支給額が決められている給与形態のことです。
基本給に諸手当を合わせた給与額が毎月支払われ、ボーナスが別途支給されるケースが一般的です。
また、月給制では昇給や定期的な給与改定があるため、勤続年数に応じて収入が増加する傾向があります。
このため、長期間同じ企業で働き続けることを考える人にとっては、安心できる制度といえます。また、ボーナスが支給される場合には、年間の収入が大幅に増加する可能性があり、これがモチベーション向上の一因にもなるでしょう。
年俸制と月給制の違い
年俸制は1年単位で報酬を決定するため、成果主義的な側面が強い一方、月給制は勤続年数や基本給が重視される傾向があります。
年俸制では個人の業績や成果が直接的に報酬に反映されやすく、評価が透明で明確であるという特徴があります。
一方で月給制は、長期的な勤務による昇給や安定した給与が重視されるため、生活設計を立てやすいといえるでしょう。
年俸制のメリット
高収入が期待できる
高い専門性やスキルを持つ人にとっては、年俸制のほうが高収入を得やすい場合があります。
とくに外資系企業では、業績によって高額報酬が得られる可能性があります。成果に応じた適正な報酬を得られやすいでしょう。
また、専門性を活かすことで、さらなる昇給やキャリアアップのチャンスが広がります。
こうした報酬体系は自分のスキルや成果に自信がある人に向いており、自己成長を目指す人にとっては大きな魅力となるでしょう。
報酬が年間で安定している
年俸制では1年分の報酬が事前に契約で確定しているため、その年の収入が業績などに左右されることがありません。
一年を通して安定した収入の見込みがあるため、年間の家計管理や貯蓄計画がしやすくなるというメリットがあります。
年俸制のデメリット
翌年に給与が下がる場合がある
月給制の場合は年齢が上がるとともに昇給されるのが一般的ですが、年俸制の場合は業績や成果によって給与が決まる成果報酬型です。
その年に成果が出せなかった場合などには、前年度よりも報酬額が減少する可能性もあることは理解しておきましょう。
また、“常に成果を上げなければいけない”というプレッシャーから、ストレスを感じてしまう可能性もあります。
年度内は昇給がない
年俸制の場合、契約で年間の報酬額があらかじめ決まっているため、年の途中で成果を出しても給与に反映されるのは翌年です。
業績や成果が次の賞与などに反映されやすい月給制と異なる点は、デメリットに感じられるかもしれません。
年俸制を導入している職種や業界
外資系企業やIT業界
成果主義が浸透している業界や、市場競争が激しい分野では、優秀な人材を獲得するため、年俸制を導入している企業も多いです。
とくに外資系企業やIT業界では、年俸制度が採用されている企業が多く、これが優秀な人材を引き寄せる要因の一つとなっています。
成果主義が徹底されることで、従業員のモチベーションが高まり、業績向上にもつながります。
年俸制は、社員が自己成長を意識しながら働く環境を整える上で、非常に効果的と言えるでしょう。
専門職や管理職
高いスキルや知識が求められるエンジニアや研究職、法務職など多くの専門職では年俸制が導入されています。
また、すべての社員ではなく管理職に限定して年俸制を導入している企業も多いです。
このような職種では、自分のスキルや知識を最大限に発揮することで、高い収入を得られる可能性がある点が魅力といえるでしょう。
年俸制を選ぶ際の注意点
残業代や賞与の扱い
給与に「残業代」や「賞与」が含まれているかどうかは企業によって異なります。
年俸制であっても法定労働時間である「1日8時間、週40時間」を超えて働いた分に対しては、残業代が支払われなければなりません。この点は、契約時に明確に確認することが重要です。
ただし、固定残業代(みなし残業代)として一定時間分の残業代が年俸額に含まれている場合は、残業代が別途支給にならないこともあります。
その場合、固定残業時間分までは給与額は変わらず、固定残業時間を超えた分の割増賃金が支払われます。なお、その場合でも月45時間を超える残業は原則できません。
契約内容を十分に理解する
年俸制の契約は細部まで確認し、不明点があれば事前に解決することが重要です。
契約書に記載された具体的な給与額や支給方法、支払時期などの条件をしっかり把握しましょう。
また、退職金や福利厚生の取り扱いについても明確にしておく必要があります。退職金制度があっても、勤続年数など一定の条件を満たさない限りは支給対象にならないこともあるので注意が必要です。
さらに、契約時には残業代や手当の扱いが明記されているかを確認しておくことが後々のトラブルを防ぐ重要なポイントとなります。
年俸制と月給制、どちらを選ぶべき?
安定を重視したい場合
若い世代にとっては、年齢に関係なく報酬アップが期待できる年俸制に向いている場合がありますが、安定を重視したい場合は月給制の企業の方が安心です。
月給制は将来的な収入の予測がしやすいため、大きなローンを組む場合にも計画が立てやすい特徴があります。
また、長期間勤続することを望んでいる場合にも、勤続年数が増えるにしたがって昇給の可能性が高まる月給制が適しています。
キャリアアップを目指す場合
年俸制は個人の頑張りが給与に反映されやすい特徴があります。
「大幅な収入アップを狙いたい」
「実力を正当に評価してほしい」
このように、積極的にチャレンジできる環境に身を置きたいと考えている方は、成果報酬型の年俸制に適しているといえるでしょう。
まとめ
年俸制の仕事を検討している方は、月給制との違いやメリット・デメリットをよく理解しておくことが大切です。
入社してから「こんなはずじゃなかった…」とならないためにも、契約前に内容をしっかり把握しておきましょう。
自分のライフステージや働き方の志向に合った選択をすることで、より充実したキャリア形成が可能となるでしょう。
今後の生活設計やキャリアについてお悩みの方は、ぜひFPオフィス「あしたば」にご相談ください!
最後までお読みいただきありがとうございました。
【あしたばライター:藤元綾子】
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