お金の基礎知識

アルバイト・パートの確定申告のやり方!基礎からわかりやすく解説

「アルバイトやパートでも確定申告が必要なことはあるの?」そんな疑問を抱えている方は意外と多いのではないでしょうか。アルバイトやパートでも所得額を減らせたり税金が返ってきたりすることがあるため、該当するかは一度確認しておくべきです。

そこでこの記事では、アルバイト・パートの確定申告の方法を基礎から分かりやすく解説します。

確定申告が必要な条件

まず、アルバイト・パートに焦点を当てる前に、給与所得者で確定申告が必要となる条件を覚えておきましょう。

給与所得者で確定申告が必要となる条件

  • 医療費控除を受ける場合
  • 寄付金控除を受ける場合
  • 雑損控除を受ける場合
  • 配当控除を受ける場合
  • 2カ所以上から給与を受け取っている
  • 給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得を得ている
  • 住宅ローン控除の適用を受ける初年度
  • その年の給与などの金額が2,000万円を超える
  • 同族会社からの給与以外に貸付金の利子や資産の賃借料を受けている場合

この中でアルバイト・パートの方が該当しやすいと考えられるのは、上から7種類の項目です。特に医療費控除や寄付金控除は誰でも利用できる所得控除制度であるため、活用できるか毎年確認しておきましょう。

そもそも確定申告とは?

確定申告とは「年間所得額」と、その所得額にかかる「所得税」を確定させるための作業です。所得に課税される所得税は、その所得額に応じて額が決まるため、年間所得額を確定させることで、適正な所得税額も確定します。確定申告後に税金が返ってくることがあるのは、確定申告を行った結果、所得税を多く払いすぎていた分が還付されるためです。

「年間所得額」とは、年間に得たお金の合計額である「年間収入額」から、条件に応じて収入額を減じることができる「控除」の額を差し引いたあとの額です。控除にはさまざまな種類があり、例えば、誰もが利用できる基礎控除や、給与所得者が利用できる給与所得控除、医療費が控除対象になる医療費控除などがあります。

確定申告の手順

確定申告の大まかな流れは、以下のとおりです。

  1. 自分が確定申告が必要なケースに該当するか確認する
  2. 年間の収入額の証明に必要な書類を集める
  3. 年間の控除額の証明に必要な書類を集める
  4. 2と3の書類から年間所得額を確定する(収入額から控除額を差し引いた額)
  5. 提出する(2月16日から3月15日の提出期間に提出する)

最初に行うべきは、自分が確定申告が必要かどうかを確認することです。次の見出しで詳しく解説しますが、そもそも必要無いケースも多いため、必ず確認しましょう。

次に、所得額を確定するために、収入額と控除額から年間所得額を確定します。これは、国税庁Webサイトで利用できる、e-tax(電子申告・納税システム)に収入額と控除額を入力すれば、自動で算出してくれます。紙の書類で提出する場合は、それぞれの記入欄に記入していき、所得額を求めます。

確定申告書類の書き方は国税庁のWebサイトで詳しく解説されています

確定申告書等の様式・手引き等(令和4年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)

アルバイト・パートで確定申告が必要なケース

ここからは、確定申告が必要な条件の中で、アルバイト・パートが該当しやすい項目について具体的に解説していきます。

各種所得控除については、医療費控除・寄付金控除を別記事で詳しく解説していますので、各記事へのリンクも紹介します。

前提は年間の収入が103万円を超える場合

前提として、年間の収入が103万円以下である場合は確定申告が不要です。これは、年間の収入から基礎控除額48万円と給与所得控除額55万円を差し引くと、103万円以下は所得が0円となるためです。

所得税が課税されるのは「収入」ではなく「所得」に対してです。そのため、所得が0円になる収入103万円以下までは所得税が課税されず、確定申告も不要になります。

収入を確認するために必要な書類

  • 給与所得:源泉徴収票(源泉徴収されていない分は収入額を証明する書類)
  • 公的年金:源泉徴収票
  • 配当:オープン型証券投資信託収益の分配の支払通知書、配当等とみなす金額に関する支払通知書、上場株式配当等の支払い通知書、特定口座年間取引報告書

各種所得控除を利用する場合

所得控除とは、年間の収入額からそれぞれの制度に基づく額を差し引き、所得額を減らす制度のことです。給与所得者全員に適用される基礎控除や給与所得控除などのほかに、医療費控除や寄付金控除など、さまざまな種類の控除があります。

ここでは、パート・アルバイトの方が利用できる4つの控除について解説します。

医療費控除

医療費控除とは、医療機関で受けた医療サービスや処方された薬の購入などにかかった費用を所得控除の対象とする制度です。対象となるのは、1年間(確定申告対象年の1月1日~12月31日)にかかった医療費です。

医療費控除の対象となる金額は、以下の式により算出され、控除上限額は200万円となっています。

  • (実際に支払った医療費の合計額-(1)の金額)-(2)の金額

(1)保険金などで補てんされる金額
(2)10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額)

なお、生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費を合算することも可能です。

医療費控除を受けるために必要な書類

医療費控除の明細書、医療費通知、各種証明書等(おむつ証明書など)

寄付金控除

寄付金控除とは、自治体や公益法人、学校法人などに対して寄付を行った場合に、その寄付額の一部を所得控除対象とする制度です。ここでは、代表的な制度である「ふるさと納税」について解説します。

ふるさと納税による所得控除額は以下の式によって算出されます。

  • 控除対象額 = ふるさと納税額-2,000円

このとき、控除限度額が総所得金額の40%に設定されていることに注意しましょう。

ちなみに、ふるさと納税以外に、認定NPOや一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人に対する寄付を行った場合には、所得税額を減らすことができる、税額控除を受けられる場合があります。

寄付金控除を受けるために必要な書類

寄付金の受領証、公益法人・学校法人・公益信託が対象の場合は対象法人や信託が的確であることの証明書または認定証の写し、政治献金の場合は認定印のある寄附金(税額)控除のための書類

雑損控除

雑損控除とは、災害、盗難もしくは横領により資産に損害を受けたときに所得税が控除される制度です。

対象金額は以下のいずれか多い方の額です

  • (損害金額+災害等関連支出の金額-保険金等の額)-(総所得金額等)×10%
  • (災害関連支出の金額-保険金等の額)-5万円

損害金や災害等関連支出の定義など、詳細な解説は国税庁のWebサイトに掲載されています。確定申告の該当年の間にこれらの被害を受けている場合は対象となるか確認しておきましょう。

No.1110 災害や盗難などで資産に損害を受けたとき(雑損控除)

雑損控除を受けるために必要な書類

災害等に関してやむを得ない支出をした際の領収書

配当控除

配当所得とは、一定の条件に当てはまる配当所得がある場合に、一定の方法で計算した金額の税額控除を受けることができる制度です。ここで受けられるのは、所得額を減らす所得控除ではなく、税額自体を減らす税額控除です。

配当控除に該当する配当所得は、以下のとおりです。

日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、金銭の分配、証券投資信託の収益の分配などで、確定申告において総合課税の適用を受けた配当所得に限られます。したがって、外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象となりません。
引用元:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1250.htm

また、以下の配当は配当控除の対象になりません

  • 基金利息
  • 私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等
  • 国外私募公社債等運用投資信託等の配当等
  • 外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等
  • 特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等
  • 適格機関投資家私募による投資信託から支払を受けるべき配当等
  • 特定目的信託から支払を受けるべき配当等
  • 特定目的会社から支払を受けるべき配当等
  • 投資法人から支払を受けるべき配当等
  • 確定申告不要制度を選択したもの
  • 申告分離課税制度を選択したもの

2カ所以上から一定額以上の給与を受け取っている場合

通常、給与所得者は会社や雇用主が源泉徴収している確定申告が必要ありませんが、2カ所以上から給与所得を得ている場合は、一定の条件下において確定申告が必要になります。

確定申告が必要なのは、給与が少ない方から得た給与が20万円を超えた場合で、20万円以下であれば確定申告は不要です。

これは、源泉徴収が給与が多い「主たる給与」にしかできないためです。給与が少ない「従たる給与」を支払っている会社や雇用者は源泉徴収を行わないため、確定申告で申告する必要があります。

給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得がある場合

2カ所以上から給与を受け取っていなくても、給与所得・退職所得以外に20万円を超える所得がある場合には確定申告が必要です。例えば、個人的に事業を営んでいたり、副業をしていたりといった場合が該当します。

パート・アルバイトでも税金が返ってくることは十分ある

確定申告が必要なケースに当てはまっている場合、医療費控除や寄付金控除などを行っていれば、税金が返ってくる可能性は十分にあります。また、所得額は翌年の住民税の基礎数値としても用いられるため、翌年の税負担を減らす効果も得られます。

「確定申告は正社員だけ」と思い込まず、まずは自分が該当するか確認を!

一度やっておけば、翌年以降もやりやすくなりますので、長い目で見てもメリットは多いはずですよ。

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