お金の基礎知識

2022年度(令和4年度)の「税制改正大綱」が発表されました。

「税制改正大綱のニュースが出ていたけど、来年から何が変わるの?」

「住宅ローン控除の控除率が下がると聞いたけど、以前に購入済みでも適用されるの?

「自民党総裁選の時に話題だった“金融所得課税”はどうなる?

この記事は、そんな疑問がある方向けの内容です。

2021年12月10日に、自民・公明両党により「2022年度(令和4年度)の税制改正大綱」が発表されました。

税制改正大綱(ぜいせいかいせいたいこう)とは、一言でいえば

「翌年以降の増税や減税、新税の創設といった税制改正をまとめた文書」

のことです。

与党の税制調査会が策定し、それを基に政府が税制改正法案を作成→通常国会へ提出。基本的には、大綱の内容をベースに法案は成立する流れとなっています。

今回は小粒な改正と言われているものの、項目は個人(家計)向け・法人(企業)向けで分かれ、少々理解しづらい点も多いかと…

そこで、この記事では一般生活者への影響が大きい部分を中心に、ポイントをお伝えしておきたいと思います。

※税制改正大綱そのものについては、こちらの記事でもう少し詳しく解説していますのでご参照ください。

2021年度の「税制改正大綱」が発表されました。 「与党の税制改正大綱が発表されたというニュースを見たけど、何が変わるの?」 「そもそも、税制改正大綱ってなに?」 ...

(とにかく、“分かりやすく”いきたいと思いますので、細かいルール・用語の説明は一部省きながら進めていきます。ご容赦ください。)

2022年度(令和4年度)税制改正大綱の要旨

今回の税制改正大綱は、次の4つをメインテーマとして打ち出しています。

  1. 成長と分配の好循環の実現
  2. 経済社会の構造変化を踏まえた税制の見直し
  3. 国際課税制度の見直し
  4. 円滑・適正な納税のための環境整備

①では、企業の成長を後押しする項目が多く並びました。

岸田内閣が掲げる「成長と分配の好循環」を実現させるために、企業が賃上げをした場合の税制優遇を拡大、スタートアップ企業や既存企業の技術革新を支援する「オープンイノベーション税制」の拡充などを実施します。

また、後述する住宅ローン控除の延長など、消費を後押しする項目も含まれています。

②では、個人に対する課税で「各種控除」や「私的年金」「金融所得」に関する見直しについて言及しています。

③は2021年10月に歴史的な合意が実現した「国際課税制度」をふまえてのもの。④は2023年10月から実施される「消費税のインボイス制度(適格請求書等保存方式)」や税理士制度の見直しについてです。

住宅ローン減税(住宅ローン控除)の延長と縮小

2022年度税制改正大綱(住宅ローン控除)

さて、ここからは「個人」に及ぼす影響が大きいものを2つに絞って解説していきます。

まずは住宅ローン控除について。

※住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、マイホームを購入してローンを組んだ時に利用できる制度。一定期間、年末の残高に応じて税額控除を受けることができます。

概要は上図の通りですが、ポイントを見ていきましょう。

対象期間が延長される

これまでは2021年末までの入居を原則としていましたが、2025年末までの入居に延長されることになりました。

中間層のマイホーム購入等を後押しして、コロナでダメージを受けた日本経済を少しでも活性化させるための施策ですね。

控除期間が「原則13年」になる

現行制度の控除期間は原則10年ですが、今回の改正により原則13年に拡充されます。

現行制度では年収によっては減税額の最大枠まで使い切れないケースも多かったようですが、今回の期間延長により最大枠までカバーできる人が多くなる見込みです。

※コロナによる特別法で、現行でも一定の要件を満たすと13年間となっています。

控除率は縮小

現行ルールでは年末のローン残高に対して1%の税額控除を受けることができますが、改正後は0.7%に縮小されます。

昨今の超低金利下で住宅ローンの金利は極めて低い水準で、変動だと1%未満も当たり前の状況。

そうなると、支払っているローンの金利よりも、優遇される税金の%の方が大きいという「逆ザヤ」状態になってしまうので、以前から問題視されていました。(現在住宅ローンを組む人の約8割が1%未満の金利でローンを組んでいるというデータもあります)

その問題を解消するため、改正後にマイホームを購入した人の住宅ローン控除率は0.7%に引き下げとなる方向です。

※現行ルールで購入した人は、1%のまま控除期間終了まで税額控除を受けることができます。既に購入した人の分まで訴求して適用されるものではありません。

所得制限も厳しく

住宅ローン控除は一定の所得制限があるのですが、これも厳しくなります。

現行制度が3,000万円以下に対して、改正後は2,000万円。

それなりの金額なので多くの人は該当しないかと思われますが、該当する可能性がある人は注意が必要ですね。

※「収入」ではなく「所得」ですのでご留意を。

金融所得課税は強化される?

最後に少し触れておきたいのが、先の自民党総裁選で岸田首相が掲げた「金融所得課税の強化」についてです。

背景

なぜそれが掲げられたのかというと、日本の所得税率は「金融所得が多い=保有資産からの収益(値上がり益・配当収入)等が多い人にとって有利」な制度であるという問題があるからです。

給与収入や事業収入に対する税率は最大で所得税45%(+住民税10%)ですが、金融所得に対する課税は、例えば株式や投資信託なら一律で所得税15%(+住民税5%)となっています。

これにより、本来は高所得になるにつれて税率が高くなるはずのところ、高所得になると金融所得も多くなるので、一定基準を超えると逆に税率が下がる現象が発生しているのです。

結論:今回は「変更なし」で見送り

上記のような問題が存在しているのは事実ですが、結論からいうと、今回の税制改正大綱による金融所得課税の強化は見送りとなりました。

株式や投資信託から得られる収益を一律で引き上げてしまえば、ごく一般の中間層の人が投資をするモチベーションを下げてしまう可能性が高いという点を配慮してのことです。

課税強化の方向で、引き続き検討される方針

今回は見送りとなりましたが、「税負担の公平性を確保する目的から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある」と大綱には明記されています。

この「金融所得に対する課税強化」は世界的な風潮ですので、おそらく近い将来になんらかの課税強化施策が導入されることになるでしょう。

終わりに

今回は「抜本的な改革」といえる改正でなかったことと、財源が明示されなかったため、批判も多い改正となりました。

税制は、国の経済はもちろん人々の暮らしに与える影響が非常に大きいものですが、「豊かな未来をつくる」ための大胆な改正を実行していってほしいと個人的には願っています。

税制改正大綱は毎年12月10日頃に発表されますので、欠かさずチェックしておきたいですね!

※今回の税制改正大綱は国会で法案として可決された訳ではなく、100%の決定事項ではありません。その点は十分ご注意ください。

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