児童手当の「特例給付」を2021年度中に廃止する方向で、政府が検討に入った。
11月6日、Yahoo!ニュースのトップページに掲載されたこの知らせ。
ネット上で大きな話題となり、「ひどい」「理解できない」といった批判的なコメントが多数寄せられていました。
「うちの家庭にも影響があるのだろうか…」
と不安に思われてる方も多いはずですので、
- そもそも特例給付とは
- 何がどのように変わる可能性があるのか
- もし変わってしまった場合の影響は
について解説したいと思います。
そもそも、児童手当の「特例給付」とは
児童手当(旧子ども手当)は、「中学校卒業までの児童を養育している世帯」に、行政から支給される手当のことです。
ただ、「所得制限(収入制限)」のルールがあるため、養育者の収入が一定以上あると給付を受けることができません。
その制限をオーバーしてしまった人を、現時点では一部救済する措置があり、それを「特例給付」と言います。
もう少し詳しく見ていきましょう。
本来の児童手当の支給額
本来の支給額は上記のとおり。
3歳未満かどうかで支給額が異なります。
また、複数人の児童がいる場合には、年齢に応じてそれぞれの分が支給されます。
所得制限の限度額(平成24年6月分~)
所得制限は、上図のように扶養親族の人数によって金額が変わるルールです。
例を挙げると、「会社員の方で専業主婦(夫)・子ども2人を扶養している場合」は、年収960万円以上が目安になります。
収入についてはあくまでも目安で、諸々の控除を差し引いた「所得」で判断される点に注意してください。
所得税を計算する時の「所得」とは異なり、やや複雑なルールとなっています。
※所得制限に関する詳細は、こちらの記事で解説しています(↓)
「特例給付」で、制限オーバーの世帯も「月額5,000円」もらえる
所得制限を少しでも超えた場合、基本の考え方としては「1円も支給されない」ことになります。
しかし、収入の僅かな違いで「最大年間18万円もらえる」か「ゼロ」という差が出るのは、あまりにも不公平感が大きい。
そこで現時点では、「特例給付」として児童一人あたり月額5,000円が支給されることになっているのです。(児童が3歳未満かどうかを問わず一律の金額)
廃止検討の背景
では、報道された「政府が特例給付の廃止検討に入った」というその背景は何なのか、確認しておきましょう。
今回なぜ特例給付の廃止を検討し始めたかというと、「待機児童解消」のための財源を確保するためです。
待機児童は減少しつつありますが、今年4月時点で1万2千人を超えている状態。
待機児童問題の解消には2024年度末までに最大14.1万人分の保育施設を整備する必要があり、そのために「1,500~1,600億円もの追加財源が発生する」と試算されています。
これだけの財源を捻出するには何かを削るしかなく、児童手当の特例給付を廃止すると「900億円程度の財源が確保できる」と見込まれるため、検討が始まったという訳です。
政府が検討している内容
実際に検討されている主な内容は、次の2点です。
- 特例給付自体の廃止
- 所得制限の判定方法の見直し
前述の通り、900億円ものコストカット(歳出削減)につながるため、特例給付自体の廃止も検討されています。
そしてもう一つ検討されているのが、所得制限の判定方法の見直しです。
「主たる生計者」から「世帯合算」に
現状は「主たる生計者」の所得で判定するというルールだったのですが、「世帯合算」に変更される方向で議論が進んでいるようです。
これまで「夫が年収1,000万円(所得736万円以上)で、妻は専業主婦」の世帯は所得制限にかかっていましたが、
「夫が年収700万円で、妻は年収300万円」の共働き世帯は所得制限にかかならなくて済みました。
これは不公平感があると言われてきたため、世帯合算にすることで解消しつつ、コストカットにも繋げようとなった訳です。
世帯合算に変更されると、先ほどの後者のケースでも「合算では年収1,000万円(所得736万円以上)」となり、所得制限をオーバーすることになります。
共働き世帯では該当するケースが多数出てくるでしょう。
確定ではない
少子化対策を担当する坂本一億総活躍担当大臣は、記者会見で今回の「児童手当の特例給付見直し」について触れましたが、「廃止を決定した事実はない」と明言しています。
また、単純に廃止するのではなく、「廃止するなら上限額を引き上げる」「多子世帯は逆に給付額をアップさせる」といった案も合わせて検討していく方針のようです。
何れにしても、まだ確定はしていない段階ですから、冷静に受け止めるようにしてください。
廃止が実現すると影響は大きい
ただ、実際に廃止が実現してしまうと子育て世代にとって影響は大きくなります。
具体的な事例を見ておきましょう。
ケース①「夫=年収1,000万円、妻=専業主婦、子ども=5歳と1歳」の世帯
この場合、これまでは特例給付で毎月10,000円の給付を受けることができました。
年間12万円で、2人の子どもが15歳になるまでの総額では「約180万円」ですから、決して少なくない金額と言えます。
それが廃止されたら、「ゼロ」になってしまいます。
ケース②「夫=年収700万円、妻=年収300万円、子ども=5歳と1歳」の世帯
こうした共働き世帯であれば、これまでは所得制限にかからず、毎月25,000円の給付を受けることができました。
2人の総額では「約400万円」にもなるので、相当大きいですね。
これがなんと、【特例給付の廃止+所得制限の判定方法見直し】が同時に実現してしまうと、「ゼロ」になってしまうのです。
一定の収入がある子育て世帯への影響は大
どちらにせよ相当なインパクトがあり、教育資金計画に大きな狂いが生じる可能性もあります。
前述の通り、特に共働き世代への影響は極めて大きいと言えるでしょう。
今回のダブル見直しが実現した場合、全子育て世代のうち25%もの世帯が給付対象外になってしまうと言われています。
今後の動向はぜひチェックしていただき、場合によっては教育資金計画の見直しの必要があると認識しておくようにしてください。
終わりに
私たちは多くの子育て世代の方の「お金の相談」をお受けしてきましたが、児童手当は、間違いなくその世代を支える重要なツールになっています。
もちろん待機児童の問題も十分理解できますが、、、執筆者FP安藤の個人的な意見としては、今回の廃止・見直し案には「反対」です。
多くの子育て世代にとって「お金のやりくりの問題」は切実で、相対的に収入が高いから余裕があるという訳では決してありません。(子供の人数や置かれた環境などは人それぞれですから)
「どんな世帯でも分け隔てなく活用できる」制度として、存続してもらえたらと願っています。
廃止・見直しで「対象外」となり得る人が、備えておくべきこと
ただ、日本は財政が非常に厳しいので、そのまま特例給付の廃止・所得制限の見直しが実現してしまう可能性も十分にあります。
それによって給付対象外となった場合、“事実上の収入減少”ということになりますね。
しかも子供一人あたり最大で約200万円もの金額ですから、対象外になり得る方は今のうちから対策を立てておくべきと言えるでしょう。
上記のような収入減少を補うためには、副業等で世帯収入を増やす・家計を切り詰めて支出を減らすという選択肢もありますが、投資・運用でお金に働いてもらうという方法も必ず検討することをお勧めします。
つみたてNISAやジュニアNISAといった「少額の投資・運用をしながら、税金面で優遇を受けられる制度」を駆使して、賢くお金を増やしていきましょう!
特にジュニアNISAは、2023年までで終了する期間限定の制度ですので、まだ利用していない方は早めにアクションを起こすようにしてください。
最後になりますが、実は僕(FP安藤)自身も4歳と0歳の娘を持つ「子育て世代」の一人です。
みなさんと同じ立場として「出来る限りのサポートをしたい」と考えていますので、ぜひお気軽にセミナーや相談サービスをご利用くださいね。
弊社横浜のFPオフィス「あしたば」は、iDeCo/イデコやつみたてNISA、企業型確定供出年金(DC/401k)のサポートに力を入れています。
収入・資産状況や考え方など人それぞれの状況やニーズに応じた「具体的なiDeCo・つみたてNISA等の活用法と注意点」から「バランスのとれたプランの立て方」まで、ファイナンシャルプランナーがしっかりとアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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