お金の基礎知識

最低賃金(最賃)について正しく理解しよう!

こんにちは。あしたばアシスタントFP(ファイナンシャルプランナー)の舘野です。

新年度を迎えて早1ヶ月が過ぎようとしており、新社会人は初任給を受け取る時期になりました。

働いた対価である賃金(給料)がどれくらいもらえるのか、とても気になりますよね。

また、新社会人に限らず、一度は「給料を時給換算するとどれくらいだろう」と考えたことがある人は多いのではないでしょうか。

日本では、最低賃金(最賃)が定められており、労働時間に対して不当に安い給料を設定している場合は法律により罰せられます。

賃金(給料)については非常に敏感に考える人が多い一方で、最低賃金についてはあまりよく知らないという人もたくさんいます。

今回はこの最低賃金について解説します。

最低賃金制度とは


会社員やパート、アルバイトとして働いている(働いたことがある)人は、一度は最低賃金(最賃)という言葉を耳にしたことがあるでしょう。

最低賃金とは、最低賃金法に基づいて国が賃金の最低額を定め、使用者はその最低賃金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。

仮に使用者が労働者に最低賃金を下回る賃金しか支払っていない場合には、使用者は労働者に対して差額を支払う必要があります。

また、使用者と労働者の双方が合意した上で最低賃金を下回る賃金で契約したとしても、これは無効であり、最低賃金と同様の定めをしたものとみなされます。

つまり、「給料は(最低賃金を下回るほど)安くていいから雇ってほしい!」などという労働者と使用者間の取り決めは無効であるということですね。

最低賃金には2種類ある


意外と知られていませんが、最低賃金には①地域別最低賃金②特定(産業別)最低賃金の2種類あります。

①地域別最低賃金

広く知られている最低賃金はいわゆる地域別最低賃金のことで、各都道府県に1つずつ定められています。

令和4年4月現在の各都道府県の最低賃金は以下の通りです。

都道府県最低賃金時間額
北海道
北海道889円
東北地方
青森県822円
岩手県821円
宮城県853円
秋田県822円
山形県822円
福島県828円
関東地方
茨城県879円
栃木県882円
群馬県865円
埼玉県956円
千葉県953円
東京都1,041円
神奈川県1,040円
北陸地方
富山県877円
石川県861円
福井県858円
甲信越地方
新潟県859円
山梨県866円
長野県877円
東海地方
岐阜県880円
静岡県913円
愛知県955円
三重県902円
関西地方
滋賀県896円
京都府937円
大阪府992円
兵庫県928円
奈良県866円
和歌山県859円
中国・四国地方
鳥取県821円
島根県824円
岡山県862円
広島県899円
山口県857円
徳島県824円
香川県848円
愛媛県821円
高知県820円
九州・沖縄地方
福岡県870円
佐賀県821円
長崎県821円
熊本県821円
大分県822円
宮崎県821円
鹿児島県821円
沖縄県820円

参考:厚生労働省「地域別最低賃金全国一覧」

地域別の最低賃金が一番高いのは東京都で1,041円一番低いのは高知県や沖縄県の820円で、およそ220円もの差があることがわかります。

なお、地域別の最低賃金は年々上がってきています。

例えば、全国平均額は平成28年度は823円でその後は20〜30円ずつ上がり、令和2年度は902円です。

過去5年分の最低賃金の変遷は以下で確認してみましょう。
地域別最低賃金の全国一覧(過去5年分)

地域によって物価や賃金の平均水準が異なるため、実情を踏まえて都道府県ごとに最低賃金が設定されています。

②特定(産業別)最低賃金

地域別最低賃金は都道府県ごとに設定されているのに対し、特定(産業別)最低賃金は特定の産業について設定されている最低賃金です。

特定の労働者を対象にして、地域型最低賃金よりも高い水準の最低賃金を定めることが必要とされる産業において設定されています。

例えば鉄鋼業や自動車小売業、繊維工業などがあります。

特定(産業別)最低賃金の一覧は以下でご確認ください。
厚生労働省:「特定(産業別)最低賃金全国一覧」

最低賃金の対象となる「賃金」

労働者が、著しく低い賃金で働くことがないように定められている最低賃金ですが、勤務先から支給される全ての賃金が対象になるわけではありません。

下記の図のように、賞与休日出勤手当は最低賃金の対象外であり、基本給と諸手当が最低賃金の対象であることを覚えておきましょう。


最低賃金額以上かどうか確認する方法

最低賃金の対象となる「賃金」について理解した上で、では支払われる金額が最低賃金を超えているかどうか確認する方法を解説します。

①時間給制の場合
時間給≧最低珍金額(時間額)

②日給制の場合
日給÷1日の所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

③月給制の場合
月給÷1ヶ月平均所定労働時間≧最低賃金額(時間額)

ここでは実際に以下のモデルケースで計算してみましょう。

 

大阪府で働くAさんは、基本給の他に職務手当などを合わせて月給230,000円を受け取りました。

まず、Aさんの賃金から最低賃金の対象にならない賃金を除きます。通勤手当と時間外手当が除外し(職務手当は除外されません)、230,000円-(5,000円+45,000円)=180,000円

この180,000円を時間額に換算すると、(180,000×12ヶ月)÷(250日×8時間)=1,080円となり、大阪府の最低賃金である992円よりも高いため、Aさんの賃金は最低賃金以上であることがわかります。

最低賃金に関する疑問点

①最低賃金は正社員のみ対象なの?

地域別の最低賃金は正社員だけでなく、パート臨時職員アルバイト嘱託など雇用形態を問わず全ての労働者に適用されます。

②地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金はどちらが優先される?

先述の通り、最低賃金には地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の2種類があり、地域別最低賃金と特定(産業別)最低賃金の金額に違いがある場合は、高いほうの最低賃金以上の金額を支払わなければなりません。

③最低賃金を下回っている場合はどうすればいい?

法律上は最低賃金額と同様の取り決めをしたものとみなされるため、最低賃金に満たない不足分は使用者に請求することができます。

そのため、まずは使用者と話し合うことが大切です。

なお、それでも解決しない場合は最寄りの労働基準監督署に相談しましょう。

まとめ

賃金は(給料)、労働条件の中でも非常に重要な項目です。

将来のマネープランは賃金(給料)を元に計算し、シミュレーションします。

さらに、賃金(給料)から貯蓄に回すお金を確保し、その上で家計やローンが組まれることを考えると、賃金(給料)は資産形成を考える上でも欠かせない項目です。

仕事はやりがいや楽しさだけでは仕事は長続きしないことが多く、労働の対価はきちんと支払われるべきであり、賃金(給料)は生活の基盤になるものといっても過言ではありません。

この機会に最低賃金についての理解を深めてみてはいかがでししょうか。

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