「フリーランスになったら定年は無いから、老後資金の心配はいらない?」
「個人事業主だと年金や健康保険で不利になると聞くけど、何がどうなるの?」
この記事は、そんな疑問をお持ちの方向けの内容です。
日本の専業・副業を含めた「フリーランス(個人事業主)」の人口は、明らかに増加傾向となっています。
人材仲介業者ランサーズの「フリーランス実態調査2021」によると、国内のフリーランス人口は約1,670万人になったようです。
前年比57%増で、労働人口の24%にもなります。
弊社でもWEBライターを募集するとコンスタントに応募がくるので感覚的には理解していましたが、コロナ禍を機に働き方が大きく変わったことで、会社員をやめてor副業でフリーランスになる人がかなり増えているのでしょう。
執筆者の安藤も新卒入社から3年半で脱サラしてフリーランスになった経験がありますので、FP(ファイナンシャルプランナー)として「フリーランスになったらやるべき、資産づくりとリスク管理」についてお伝えしたいと思います。
※今回は「会社員をやめてフリーランスになった方」を想定して解説します。副業でフリーランスの仕事をしている方もぜひ、ゆくゆく会社員をやめて独立した時のことをイメージしながら読んでみてください。
フリーランスになると、会社員時代に「当たり前」だったものを失う
日本の社会保障制度は会社員が非常に優遇されています。
また、大手を中心に福利厚生が充実している企業も多いです。
フリーランスになると、そうした社会保障・福利厚生が受けられなくなってしまうので、その事実をしっかりと認識しておく必要があるでしょう。
具体例として、次のようなものです。
①厚生年金→国民年金
2階建ての年金(基礎年金+厚生年金)が1階建て(基礎年金のみ)になるので老後に受け取る「老齢年金」が減る上に、病気や事故で障害状態になった時にもらえる「障害年金」も減ります。
また、厚生年金の保険料は労使折半(50%本人負担)ですが、国民年金だと100%本人負担になります。
更に、厚生年金なら配偶者が一定の収入以下であれば「社会保険上の扶養*」に入れることもできますが、国民年金ではそれができません。配偶者も自ら保険料を負担することになるのです。
※「税法上の扶養」とは異なります。
②健康保険→国民健康保険
健康保険には「傷病手当金」という病気やケガで働けない時にお給料の2/3をもらえる制度がありますが、国民健康保険にはありません。また、健康保険でもらえる「出産手当金」も、国民健康保険ではもらえません。
それ以外も含め健康保険の方が断然手厚い保障となっている上に、厚生年金と同じく保険料も労使折半。かつ配偶者を「社会保険上の扶養」に入れることもできます。
国民健康保険になると、そうした優遇はなくなってしまうのです。
③企業年金制度や財形貯蓄・持株会制度→なし
会社員の場合、確定拠出年金(DC/401k)や確定給付年金(DB)などの企業年金制度、および財形貯蓄や従業員持株会などの社内貯蓄制度が用意されていることも多いですが、フリーランスになれば当然そういった制度には加入できなくなります。
将来のための貯蓄・積立は「全て自助努力で」ということですね。
他にも失業給付がもらえる雇用保険に加入できない、年末調整をしてもらえないので確定申告が必須になるなど、会社員の時は「当たり前」だったことでもフリーランスになると失われるものが多々あるのです。
もちろん、代わりに得られるものも多いからこそ会社員をやめてフリーランスになるわけですが、「自分の身は自分で守る」必要が出てくるということですね。
フリーランスになったらやっておきたい、3つのこと
今回は、FPとして「資産づくり」と「リスク管理」という観点からアドバイスします。
会社員をやめてフリーランスになったら、次のようなアクションを起こすと良いでしょう。
①強制力のあるやり方で積立をする
前述の通り、会社員の場合は「厚生年金」や「企業年金」「社内貯蓄制度」など、“将来に向けて自動的にお金を貯める仕組み”が充実しています。
厚生年金はほぼ確実に加入しているでしょうし、企業年金があればほぼ自動加入なので、「勝手に将来の老後資金が増えていく」ことになりますね。
また、社内貯蓄制度も周りの社員と足並みを揃えて利用している人の方が大多数。こちらも「知らないうちにお金が貯まっていた」となりやすいのです。
中長期的な資産づくりにおいて、厚生年金や企業年金のように「すぐに引き出すことはできないけど、強制的に老後資金を貯める仕組み」や財形貯蓄などのように「給与天引き・口座引落しで無理やり貯めていく仕組み」は非常に重要。
これらを、強制力と言います。
フリーランスになると、強制力のある積立は国民年金以外になくなりますから、自分でその仕組みを作るしかないというわけです。
今回は細かく書きませんが、iDeCo/イデコ(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済、各種積立保険などは強制力のある積立の代表例。
フリーランスの方が何もしないと、会社員に比べて将来の資金は不足しがちです。ぜひ、早めに少しずつでも強制力のある積立を始めましょう!
②投資・運用でお金にも働いてもらう
フリーランスになったら、「組織の中で働かされて給料をもらう」立場から「個人の力量と裁量で働いて稼ぐ」立場に変わります。(言い方は悪いかもしれませんが、そういうことですよね)
組織の中の人であれば何かあっても代役はいますが、フリーランスの場合は代役がいません。
そのため、自分が頑張って働くだけでなく、投資・運用でお金にも働いてもらいましょう。
何も一攫千金を狙うような投資である必要はありません。(むしろそれは「投機」といってギャンブルと同じですから、やらない方がベターです。)
NISA(一般NISA・つみたてNISA)やiDeCoのような国の制度を使った、月1万円からでもできる「積立投資」でOK!
ぜひ、少しずつでもお金に働いてもらう習慣を作り、中長期的に必要となるお金を効率よく増やしていきましょう。
③就業不能状態などの万が一に備える
前述の通り、健康保険の「傷病手当金」や雇用保険の「失業給付」といった社会保障制度を受けることができなくなるのは、フリーランスにとって弱点とも言えるポイントです。
普段から健康に気を配ることはもちろん大事ですが、事故や災害による大ケガや、予期せぬ難病を患ってしまった場合など、一時的に働けなくなるリスクをゼロにすることはできません。
そこで、フリーランスになったら病気やケガによる「就業不能状態」に備えることができる保険を活用しましょう。
損害保険会社からは「所得補償保険」、生命保険会社からは「就業不能保険」が販売されていて、一定の要件を満たすと月々●●万円という形で保険金が給付されます。
傷病手当金などがない分、なんとか保険金で凌いで再起を図ることができるよう、リスクを管理しておく方が良いでしょう。
それぞれカバーできる内容に違いがあり、保険会社によっても異なるので詳細は省きますが、ぜひ早めに検討してみてください。
終わりに
いかがでしたか?
僕もフリーランスになっていろいろ手続きをした時は愕然としましたが、社会保障制度などは会社員に比べ明らかに手薄になります。
(逆に、会社員はそれだけ守られているということなんですよね。自分が会社員だった時は気づきませんでしたが…)
繰り返しになりますが、フリーランスになったら「自分の身は自分で守る」しかありません。
しっかりとしたプラン・対策を立てていない方は、ぜひ何らかのアクションを起こしていただけたらと思います。
今回お勧めした「3つのこと」については、詳細の解説をするとかなりのボリュームになりますので、別の記事で解説していきます。
「②投資・運用でお金にも働いてもらう」の手段の一つである「つみたてNISA」については、こちらの記事をご参考ください。
弊社横浜のFPオフィス「あしたば」は、NISA・ジュニアNISAやiDeCo/イデコ・企業型確定供出年金(DC/401k)のサポートに力を入れています。
収入・資産状況や考え方など人それぞれの状況やニーズに応じた「具体的なNISAやiDeCoの活用法と注意点」から「バランスのとれたプランの立て方」まで、ファイナンシャルプランナーがしっかりとアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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