家庭の経済的な理由などで大学への進学が難しい学生を支援する制度の一つに「奨学金制度」があります。
奨学金を実施している団体は、国や地方自治体、大学など、さまざまです。今回は、奨学金の借り方や注意点などをわかりやすく解説します。
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奨学金には2種類ある
奨学金は経済的理由により進学が困難な学生が、大学生活に必要な学費や生活費を借りたり、給付を受けたりする制度です。
独立学生支援機構『奨学金事業への理解を深めていただくために』によると、令和4年度の奨学金を利用している学生は、大学、短期大学、大学院、高等専門学校及び専修学校(専門課程)に通っている学生の3人に1人であり、奨学金を利用する学生が少なくないことがわかります。
給付型の奨学金
給付型奨学金は、返済する必要がない「もらえる奨学金」です。
給付型の奨学金は、多くの場合、家計基準や学力基準が厳しく誰でも受給できる訳ではありません。
貸与型の奨学金
貸与型の奨学金「借りる奨学金」は、大学の在学中に返済するのではなく、大学を卒業した後に社会人になってから返済が必要です。
貸与型奨学金には、借りたお金に利息の付く有利子のタイプと利息の付かない無利子のタイプがあります。
貸与型の奨学金は、給付型に比べて利用基準が緩いことが多く、貸与型の利用を検討する人も多いです。
奨学金制度の主な運営機関
ここからは、主な奨学金の制度4つを解説します。
①日本学生支援機構(JASSO)の奨学金制度
最も一般的で有名なのが日本学生支援機構(JASSO)です。
奨学金制度の中では最も利用者が多く、給付型の奨学金の申し込みの資格は、高校を卒業する予定の人、高校を卒業して2年以内の人です。
給付型の奨学金の家計基準は、収入基準と資産基準の2つです。
収入基準は、給付金の奨学金を申し込む本人と、生計維持者(原則として父母)の年収の基準があり、住民税非課税世帯かそれに準ずる世帯で、家族構成によっても申し込みの基準金額が変わるため、給付金型の奨学金を申し込む際は、よく確認することが大切です。
資産基準は、本人と、生計維持者(2人)の預貯金・有価証券などの資産総額が2,000万円未満、生計維持者が1人のときは1,250万円未満で、家計の状況によって違いますが、住民税非課税世帯は下記の金額の給付や授業料の免除もしくは減額も受けられます。
給付型奨学金の支給月額(住民税非課税世帯【第Ⅰ区分】の場合)
自宅通学 | 自宅外通学 | ||
大学・高校・専門学校大学 | 国公立 | 2万9,200円(3万3,300円) | 6万6,700円 |
私立 | 3万8300円(4万2,500円) | 7万5,800円 |
※( )内は生活保護世帯の場合
授業料の免除・減額の上限額(住民税非課税世帯【第Ⅰ区分】の場合)
国公立 | 私立 | |||
大学 | 入学金 | 授業料 | 入学金 | 授業料 |
約28万円 | 約54万円 | 約26万円 | 約70万円 |
一方の貸与額は、下記の金額から自分に必要な額を選べます。
自宅 | 自宅外 | |
国公立 | 2万円、3万円、4万5,000円 | 2万円、3万円、4万円、5万1,000円 |
私立 | 2万円、3万円、4万円、5万4,000円 | 2万円、3万円、4万円、5万円、6万4,000円 |
有利子の奨学金(第2種)の家計基準は、3人世帯での収入金額は1,113万円以下です。
なお、貸与額は、月額20,000円~120,000円(10,000円刻み)です。
利息は、固定形式と見直し方式が選べ、令和5年3月に貸与を終了した貸与利率は、利率固定方式は年0.905%、利率見直し方式は年0.3%となっています。
②大学独自の奨学金制度
大学進学予定の場合に、知っておきたいのが大学独自の奨学金制度です。
給付型の「もらえる奨学金」が充実しており、「借りる奨学金」は少なくなっています。
基本的には、成績優秀者が対象となり多くの学校が奨学金制度を設けています。
大学によって奨学金制度も複数あり、内容や条件も様々です。
豊富な奨学金制度を特徴としている大学もあるため、受験前に家族で詳細を調べておくと良いでしょう。
③民間団体による奨学金
民間団体が運営する「民間の奨学金制度」もさまざまなものがあります。
例えば、企業が自社の労働力確保や将来的な人材確保を目的に運営する奨学金の制度です。
自社に関連する分野を学んでいる学生で経済的支援を必要とする人を対象としていたり、中にはアルバイトとして働いてもらうことを条件に奨学金を支援するケースもあります。
民間団体による奨学金も、多くの場合、家計基準と学力基準、大きく2つの要件が設けられているため詳細の確認が必要です。
④地方自治体による奨学金
住んでいる地方自治体でも奨学金制度を設けていることがあります。
月に約1〜5万円程度を援助してもらえるところが多いため、奨学金を検討する場合は、地方自治体の奨学金も併せて検討するとよいでしょう。
住んでいる自治体によって変わりますが、給付型奨学金も貸与型奨学金もどちらも行っている場合が多く、利息は無利息、または低めの設定が多いのが特徴です。
自治体によって内容は異なるため、お住まいの自治体の奨学金制度を調べて見るとよいでしょう。
奨学金の借り方
奨学金には、申し込み時期によって予約採用と在学採用があります。
予約採用
進学する前に申し込み、奨学金の枠を予約しておく方法です。
進学しなかった場合は、進学届を提出しなければキャンセルとなります。
高校によって時期が異なりますが、高校3年生の4月頃に募集開始されます。
予約採用を利用する際の流れ
進学前
高校などから申込関係書類を受け取り、申込手続きを実施します。
その後、申し込みをした学校から「採用候補者決定通知」を受け取ります。
進学後
進学先の学校に「採用候補者決定通知」を提出し、奨学生として採用・通知されたのち、奨学金の振込がスタートします。
参考:独立行政法人 日本学生支援機構『申込手続きについて(予約採用)』
在学採用
在学採用とは入学後に大学を通じて申し込む方法で、多くの奨学金は、こちらに該当します。
毎年、春や秋に募集があるので、大学からの情報を見逃さないようにしましょう。
民間団体による奨学金や、地方自治体の奨学金は、それぞれ申し込み時期や申し込み方法が違うため、確認が必要です。
在学採用を利用する際の流れ
在学している学校に必要書類を提出し、学校が定める期限までにスカラネットと呼ばれるサイトからインターネットでの申込を行なってください。
その後、日本学生支援機構にマイナンバーを提出します。学校が申込者の学業成績などを確認した上で日本学生支援機構に推薦し、学校を通じて選考結果が通知されます。
参考:独立行政法人 日本学生支援機構『申込手続きについて(在宅採用)』
奨学金を借りる際の注意点
奨学金は経済的に進学を諦めなければいけない学生にとっては、大きな金額のお金を借りられるため大変便利です。
一方で、貸与型の奨学金は返済する必要があるため、借りる前に確認しておきたい注意点があります。
奨学金の種類によっては卒業後に返済が必要で、卒業後の生活に影響しますので、申し込みの際に、自分が借りる奨学金についてきちんと把握しておきましょう。
入学金に間に合わない場合がある
大学入学時に必要な費用で大きい出費の一つとして、大学の合格時に支払う初年度納付金があります。
初年度納付金のうち、入学料と前期の授業料・施設設備費などを、入学手続きと同時に大学が指定する期限までに納付が必要です。
こういった費用に奨学金を充てようと思っても、奨学金が振り込まれるのは入学後のため大学の入学前に必要な費用には奨学金は間に合いません。
奨学金で大学入学に必要な費用を充てることは出来ないため、別途資金を用意しておく必要があるため注意しましょう。
返済できる月額を考えて申し込もう
貸与型の奨学金は、学生本人が借りて、卒業後に返済しなければなりません。
特に日本学生支援機構(JASSO)の有利子型の奨学金は、家計基準や学力基準が緩く、借りられる上限金額も高くなっています。
返還期間は最長20年のため、大学を卒業して23歳から返済すると、返済が終わる時には43歳になっています。
その20年の間に、結婚、子どもの誕生、住宅の購入などのお金の必要なライフイベントが待っているかもしれません。
返還額をシミュレーションしながら、家族でよく話し合って決めることをお勧めします。
まとめ
進学したいけれど、学費を準備するのが難しい場合に、支えとなるのが奨学金です。
「もらえる奨学金」や「借りる奨学金」など種類は、豊富になっています。奨学金の情報をきちんと把握し、自分にあった奨学金を有意義に利用しましょう。
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