「“お宝保険”を持っているけど、増額はできるの?」
「公的年金は繰下げができると聞いた。個人年金も可能なのか?」
この記事は、そんな疑問がある方向けの内容です。
民間の保険会社が商品開発・提供している「個人年金保険」は、多くの方が加入しています。
生命保険文化センターの2021(令和3)年度「生命保険に関する全国実態調査」によれば、個人年金保険の世帯加入率は24.3%ですので、「およそ4世帯に1世帯が加入している状況となっています。
この個人年金保険、ご存知の方もいらっしゃると思いますが、保険屋さんやFPが「お宝保険」と呼ぶタイプのものが一定程度存在します。
今回は、それに加入している人にとってお得な使い方を解説したいと思います。
「お宝保険」と呼ばれる個人年金保険とは?
個人年金保険の良し悪しは「予定利率」がポイント
一般的な個人年金保険は、以下のような仕組みの商品です。
- 一定の年齢まで、毎月(または毎年)定額の掛け金を払って積立をする。(例:「60歳まで毎月10,000円」「65歳まで毎年150,000円」)
- 掛け金の払込が終わると、一定の年齢から決められた金額・年数の「年金」を受け取ることができる。(例:「65歳から毎年60万円を10年間」「70歳から毎年100万円を5年間」)
- 原則として、払った金額よりも受け取る金額は大きくなり、契約者による途中解約や保険会社の破綻がなければ元本割れはしない。
- 払った掛け金に対して受け取ることができる年金の総額は、加入した時点での「予定利率」によって大きく異なる。(一部の保険会社は配当金がプラスされることも)
- 一定の要件を満たすと、掛け金を払っている間は「個人年金保険料控除」の適用が受けられる。
※個人年金は上記のような「定額タイプ」が一般的ですが、一部の保険会社では投資信託などで運用してその実績により年金額が変動する「変額タイプ」もあります。また、「外貨建てタイプ」もあり、その場合は為替の値動きによって円建ての年金額が変動します。この記事では、「定額・円建てタイプ」を前提に解説を進めます。
個人年金保険が「どれだけの期待利回りがあるか」、すなわち運用商品としての側面は、④の「予定利率」が鍵を握ります。
保険加入者が実際に得られる利回りは予定利率から経費を差し引いたものですが、基本的には予定利率が高ければ高いほど、払った掛け金に対して多くの年金を受け取ることができるからです。
また、予定利率は日本の金利情勢に応じて保険会社が定期的に見直していくのですが、「加入した時点での予定利率がずっと続く」仕組みとなっています。(一部の「予定利率変動型」商品を除く)
よって「加入時点の予定利率が何%か」が極めて重要なのです。
今と30年前で、予定利率は雲泥の差!
2022年7月現在の日本の金利水準はご存知の取り「超低金利」なので、予定利率は0.5~1%前後の保険会社がほとんど。
ところが、バブル突入前~崩壊直後の1980年~1995年くらいは「高金利」の時代だったため、予定利率はなんと5~6%もありました。
前述の通り個人年金保険は「払った金額に対して受け取る金額が決められている(固定されている)」商品ですから、基本的には途中で解約さえしなければ元本割れのリスクがない商品です。
「元本割れリスクなしで予定利率5~6%」は、運用商品として非常に大きな魅力がありますよね?
なので、保険屋さんやFPさんなど保険に詳しい人が「お宝保険」と呼ぶわけです。
実際、筆者(FP安藤)も業務上たくさんの事例を見てきましたが、予定利率5~6%の個人年金保険で30年くらい加入期間があると、払った掛け金の2倍くらいの年金を受け取ることができるケースもあります。
(直近で見たケースは、払込総額500万円に対して受給額1000万円くらいでした)
途中でやめなければ「元本割れリスクなしで2倍になる」わけですから、まさしくお宝ですね。
お宝保険を更に増やすことができるのか?
掛け金・年金の「増額」ができる場合も
ご自身で終身保険や個人年金保険など「積立型」に加入している方はご存知かもしれませんが、保険は「増額」といって加入後に掛け金と年金額を増やすことができる場合があります。
増額不可の保険会社・商品もありますが、「一定の要件を満たせば可能」となっている商品の方が多い印象です。
では「お宝保険」の個人年金保険は増額できるのかというと、他の積立型保険と同様に増額できる可能性は十分にあります。
事例
当初内容:25歳から65歳まで月々10,000円(合計480万円) → 65歳から年間100万円×10年(合計1,000万円)
増額後:55歳から65歳まで月々30,000円に増額して合計720万円 → 65歳から年間130万円×10年(合計1,300万円)
もし可能なら、このような効率良い年金増加が見込めますので、お宝保険に加入しているなら大いに検討すべきでしょう。
「繰下げ」ができる場合も
もう一つの技が、「繰下げ」です。
公的年金は、本来の65歳よりも受給開始を遅らせることによって、年金を増額できる「繰下げ」という制度があります。
現在は75歳まで繰下げることができ、1年繰下げる毎に8.4%年金が増えます。(70歳で42%、75歳で84%の増額)
これと同じ仕組みを、個人年金保険でも使える場合があるのです!(増額と同様に保険会社・商品によって異なりますが、6割以上の個人年金保険が繰下げ可能と言われています。)
事例
当初内容:25歳から65歳まで月々10,000円(合計480万円)の掛け金 → 65歳から年間100万円×10年(合計1,000万円)の年金受給
繰下げ後:年金受給開始を75歳に繰下げ、75歳から年間150万円×10年(合計1,500万円)の受給
ちょうど最近の日経新聞で取り上げられていたケースも、上記と同じような金額でした。
受取が10年間先延ばしになるとはいえ、受け取る金額を確実に1.5倍に増やせるのは大きな魅力と言えるでしょう。
お宝保険を更に増やす時の注意点
お宝保険に加入している方にとって、それを増やすのは老後資金を効率よく増やすための有効な選択肢となります。
ただ、実際に増やす手続きをする際には注意点がありますので、確認しておきましょう。
増額・繰下げの可否は必ずコールセンターに確認を
増額・繰下げの可否の確認は、現在あなたの営業担当になっている保険会社・代理店の方ではなく、必ずコールセンターに確認しましょう。
まず単純に、現在の営業担当の方は、「現在販売されている商品」にはめっぽう詳しいと思いますが、「かなり前に販売されていた商品」については詳しくない可能性が高いです。
また、営業担当の方は「各種変更手続きなどの実務が不得手」であることも往々にしてあります。
保険商品は加入した時点での「約款」を基に、掛け金や受給金額、途中の変更ルールが決まりますが、約款に記載されていない「保険会の社内規程・ルール」で決めれれている実務的な内容もたくさんあります。
営業担当の方だと、「保険会の社内規程・ルール」まで当時に遡って調べることができなかったり。そんな実情もあるのです。
それを解決してくれるのが、コールセンター(カスタマーセンター)!
コールセンターは変更手続き等の専門部署なので、きっちり対応してくれます。
「担当者に聞いたらできないと言われたが、念のためコールセンターに確認したらできると言われた」
なんてことがザラにありますので、必ずコールセンターに確認しましょう。
既に受給開始していたら、繰下げは不可
お宝保険をふやす方法の「繰下げ」ですが、既に受給を開始してからストップして繰下げることはできません。
「知識として知っていたが、気付かないうちに受給が始まっていた」
となれば諦めるしかなくなりますので、注意してください。
「据え置き」は「繰下げ」と別物!
繰下げと似た手法として「据え置き」があります。
すぐにもらえなくても大丈夫という時に、受給できる年金をそのまま保険会社に預けておく仕組みです。
これも一定の利率で年金額が増えるのですが、あくまでも「据え置きしている間の利率」なので、現在の利率では雀の涙ほどしか増えません。
据え置きはいつでも引き出せるメリットがあるのですが、年金額を増やすことが目的なら、やはり「繰下げ」を選択すべきでしょう。
勘違いしやすいポイントなので、ぜひ覚えておいてくださいね。
終わりに
いかがでしたか?
お宝保険は今から30年くらい前に加入した個人年金保険のことを指しますので、実際に持っている方はだいぶ減ってきているのが実情です。
もしお持ちなら、増額や繰下げの検討をお勧めしますので、思い当たる方は現在加入中の保険証券などをしっかり確認しましょう。
また、「予定利率5~6%」の個人年金保険は“超お宝”レベルですが、1990年代後半~2000年代前半で「予定利率2~4%」くらいのもあり、
そうした「お宝保険に準ずるレベル」の商品をうまく活用するのも検討に値します。
いずれにしても、だいぶ前に加入した個人年金保険などの積立型保険は、ぜひ一度加入状況と今後の活用法を確認しましょう。
その際は、保険会社・代理店の方ではないほうが良いかもしれません。
「保険の使い方」だけの話になったり、場合によっては「別の保険をガンガン提案されるだけ」になる可能性もあるので。。。(これは、僕が元々いた業界なので紛れもない事実かと。ほぼ間違いなく今も)
保険以外の分野も含め総合的に、かつ商品販売を前提とせず中立的にアドバイスしてくれるFP(ファイナンシャルプランナー)等に相談すると良いでしょう。
あしたばFP・安藤宏和
弊社横浜のFPオフィス「あしたば」は、創業当初からiDeCo/イデコや企業型確定供出年金(DC/401k)のサポートに力を入れています。
収入・資産状況や考え方など人それぞれの状況やニーズに応じた「具体的なiDeCo活用法と注意点」から「バランスのとれたプランの立て方」まで、ファイナンシャルプランナーがしっかりとアドバイスいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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