近頃、配偶者控除の廃止や年収の壁の見直しが政府で議論されていることもあり、専業主婦やパートで働く主婦の方でも気になっている方がいらっしゃるかもしれません。
もし将来的に制度の廃止や見直しがあった場合、家計や収入にどのような変化が生じるのでしょうか?
この記事では、なぜ配偶者控除廃止や年収の壁の見直しが議論されているのか、将来的に制度が変更になった場合を見据えたパート主婦の働き方についても解説していきます。
配偶者控除の廃止や年収の壁の見直しについて気になる方はぜひ参考にしてください。
配偶者控除の今後について
配偶者控除とは?
配偶者控除は、配偶者が扶養内で働く家庭に対して税制上の優遇措置を提供する制度です。
控除を受ける場合、その年の12月31日時点で以下の4つの要件すべてにあてはまっている必要があります。
- 民法の規定による配偶者であること。
- 納税者と生計を一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること。(給与のみの場合は給与収入が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと。または白色申告者の事業専従者でないこと。
控除を受ける納税者本人の合計所得金額が1,000万円を超える場合は、配偶者控除は受けられません。
配偶者控除額は納税者本人の合計所得金額などによっても異なり、13万円から48万円までの範囲内で変動します。
配偶者の所得が48万円を超え、配偶者控除の対象から外れた場合に適用されるのが配偶者特別控除です。
対象者は納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下、かつ配偶者の合計所得金額が48万円超から133万円以下の方です。配偶者の合計所得金額に応じて1万円から38万円の範囲内で控除されます。
なぜ配偶者控除の廃止や見直しをする必要があるのか?
2024年5月13日に開かれた税制調査会で、複数の委員から配偶者控除のあり方について「多様な働き方に中立的に対応するためには見直しが必要」などの意見が挙げられました。「配偶者控除が廃止されるのではないか?」という声はその影響があると考えられます。
配偶者控除が始まった1961年頃は「夫が働き、妻が家庭を守る」という考え方が一般的でしたが、夫婦共働きや女性の社会進出が当たり前の時代となっている現在では女性の働き方を制約する制度として「時代に合っていないのでは?」との声も聞かれるようになりました。
また、配偶者控除は特定の家庭に有利に働く側面もあり、労働市場の不公平を生むとの指摘もあります。このような背景から、政府は配偶者控除の廃止や年収の壁の見直しについて議論しているのです。
今のところ配偶者控除の廃止については決定していませんが、将来的に制度が変更になる可能性も視野に入れておくとよいでしょう。
年収の壁と配偶者控除廃止の関係
年収103万円・150万円の壁とは?
「年収の壁」と聞いて、年収103万円の壁を思い浮かべる方は多いかもしれません。
基礎控除48万円+配偶者特別控除55万円=103万円となるため、年収103万円以内であれば課税所得額が0円になり、所得税は課税されない仕組みになっています。
しかし2018年以降、配偶者特別控除の範囲が年収150万円まで拡大。
これによって、103万円を超えても150万円以内であれば満額の38万円の控除が受けられるようになりました。
ただし納税者本人の合計所得金額が900万円を超えると、段階的に控除額が下がる点には注意が必要です。
配偶者の合計所得額 | 納税者本人の合計所得金額 | ||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超1,000万円以下 | |
48万円超~ 95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
納税者本人の合計所得金額が900万円以下で配偶者の年収が年収150万円を超えた場合は、3万円~36万円の範囲で控除額が変わります。
年収201万円を超えた場合は、配偶者特別控除の適用がゼロになります。
年収130万円の壁と社会保険への影響
もう一つ重要な壁が年収130万円の壁です。パート主婦がこの壁を超えると配偶者の扶養から外れ、自分で健康保険や年金保険料を支払う必要があります。負担は年間数十万円にもなることがあり、手取り収入が一気に減少する可能性があります。
そのため、年収が130万円を超えるかどうかは、パートで働く方にとって大きな影響を与えるポイントです。
2024年10月からは、従業員51人以上の企業が社会保険加入の対象になりました。
そのほか以下の要件にすべてあてはまる場合は、社会保険の加入対象になります。
- 週の勤務時間が20時間以上
- 給与が月額88,000円以上
- 2か月を超えて働く予定がある
- 学生ではない
参照:厚生労働省「社会保険適用拡大 特設サイト」
将来的な配偶者控除の廃止や年収の壁の見直しの可能性も視野に入れて、今後の働き方についてご家庭で話し合っておくのがよいでしょう。
配偶者控除廃止を見据えた働き方とは?
扶養を超えて働く場合のメリット・デメリット
将来的に配偶者控除が廃止された場合、扶養の壁を超えて働くことには、以下のようなメリットとデメリットがあります。
メリット
- 収入の上限に縛られず、自由に働くことができる
- キャリアアップのチャンスが増える
- 社会保険に加入することで将来の年金額が増える
デメリット
- 所得税や住民税が増加する
- 健康保険や年金保険料の支払いが発生する
- 家事や育児との両立が難しくなる可能性がある
扶養内で働き続けるメリット・デメリット
一方、扶養内で働き続ける場合のメリットとデメリットは次の通りです。
メリット
- 所得税や社会保険料がかからないため、手取り収入がほぼそのまま残る
- 短時間勤務で家事や育児との両立がしやすい
- 配偶者の税負担が軽減される
デメリット
- 収入の壁に制約され、収入アップが難しい
- 自身の社会保障が弱いため、将来の年金額が低くなる可能性がある
どちらを選ぶべきか?判断するポイント
扶養内に収めるか、扶養の壁を超えて働くかは、それぞれ家庭の事情や将来設計によって異なります。
子どもの成長や教育費の増加、老後の資金準備などを考慮し扶養の枠を超えて働き始めるべきか、それとも扶養内で収めつつ時間を確保するべきかを判断する必要があるでしょう。
また、長期的なキャリアを視野に入れ、収入だけでなく働く環境やキャリアアップの可能性も重要な判断基準となります。
まとめ
配偶者控除の廃止や年収の壁の変化は、パートで働く主婦の方にとって、大きな転機となるでしょう。
扶養内に収めるか壁を超えて働くか、それぞれにメリットとデメリットがあるため、慎重に判断することが求められます。
ぜひ一度、ご家庭でまとまった時間を確保して話し合ってみてください。
また、各種制度の改正については様々な情報が飛び交うケースもありますので、冷静に最新の動向をチェックしましょう。
家計の事など、お金に関するお悩みがございましたら「あしたば」がお手伝いさせていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
【あしたばライター 藤友アヤ】
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