国の制度

年金改革法成立

2020年5月29日、「公的・私的年金の改革法」が参院本会議で与野党の賛成多数で可決され、成立しました。

長寿化が進む中で、老後資金を確保するための選択肢が大きく広がる内容です。

 

昨年末の税制改正大綱が発表されて以降、今国会の重要法案として私たちFPも注目していましたが、ニュースに出てくる国会審議内容は新型コロナ一色。

そのような状況下で無事に成立したことに安堵しています。

 

みなさんに直接影響があるポイントをまとめましたので、ぜひ確認しておきましょう!

(ご職業やお勤め先の規模等によっては、影響がない項目もあります。)

<1> 改正スケジュール

2020年10月~

・個人型確定拠出年金(iDeCo/イデコ)に事業主(会社など)が掛金を上乗せできる「中小事業主掛金納付制度(イデコプラス)」の対象企業を、従業員「100人以下」から「300人以下」に拡大

2021年4月~

・公的年金と確定拠出年金(DC)の脱退一時金受給要件を緩和

2022年4月~

・公的年金の「繰下げ受給」の上限を75歳に延長

・「繰上げ受給」の1ヶ月繰上げるごとの減額率0.5%を0.4%に

・65歳未満の「在職老齢年金」の減額・支給停止基準を、47万円(65歳以上と同額)に緩和

・65歳以降も厚生年金に継続加入する場合、在職中でも1年ごとに年金が増える「在職定時改定」を導入

・iDeCo/イデコ・企業型確定拠出年金(企業型DC)の受給開始時期の上限を、70歳から75歳に引き上げ

2022年5月~

・iDeCo/イデコの加入上限を60歳未満から65歳未満に引き上げ

・企業型DCの加入上限を65歳未満から70歳未満に引き上げ

・新規加入は60歳未満しかできなかったが、60歳以降も新規加入できるように

2022年10月~

・企業型DCとiDeCo/イデコの同時加入がほぼ一律可能に

・従業員「100人超」の会社で短時間労働者(一定の要件を満たすパート・アルバイトの方など)を厚生年金加入対象に

2024年10月~

・従業員「50人超」の会社で短時間労働者を厚生年金加入対象に

<2> 特に重要なポイント

今回の改正法成立につき「短時間労働者への厚生年金適用拡大」にスポットライトを当てているメディアも多いようですが、この記事では、「公的年金の受給」「確定拠出年金(DC)の加入・受給」にフォーカスしていきます。

(「短時間労働者への厚生年金適用拡大」については、該当する方にとっては重要な改正点です。しかし、勤務時間を調整すべきかどうか?といった個別具体的な話になるため、ここでは説明を省きます。詳細のご相談は個別相談にて承ります。)

①公的年金の「繰上げ・繰下げ」受給について

公的年金は原則65歳から受給スタートとなりますが、現状、このスタート時期を60歳~70歳まで調整することが可能です。

 

「繰上げ」は65歳よりも早くから年金をもらう方法で、1ヶ月繰上げるごとに0.5%減額(60歳まで繰上げると30%減額)になるルールでした。

この減額率が0.4%に縮小されることになり、60歳まで繰上げると24%減額ということになりました。

※しかしながら、縮小されたとはいえ「減額は一生涯続く」ことになるので、注意が必要です。

 

「繰下げ」は65歳よりも遅くから年金をもらう方法で、1ヶ月繰下げるごとに0.7%増額(70歳まで繰上げると42%増額)されます。

今回の改革法では、増額率は現状のままで、「繰下げ可能年齢が75歳まで」になりました。

(75歳まで繰下げると84%増額)

「増額も一生涯続く」ことになりますので、“長生きリスク”への対策として重要な選択肢となるでしょう。

 

ただし、繰下げでもらわなかった金額を増額分で取り戻せるのは、「70歳~受給開始で82歳弱」「75歳~受給開始で87歳弱」です。

 

言葉を選ぶのが難しいですが、、、

「長生きすればするほどお得」な反面、「長生きできなければ損になる」制度ですので、その点もふまえて制度利用を検討する必要があるでしょう。

 

なお、増額になると税金や社会保険料の負担が増えたり、厚生年金の加給年金がもらえないなどの注意点もあります。

実際に年金を受給する時期が来る前に、年金事務所や私たちのようなFPに相談しておくことをおすすめします。

②確定拠出年金(DC)の加入について

今回の改革法で、DCは個人型・企業型共に、かなり使い勝手が良くなります!

次の点は特におさえておきたいポイント。

 

・iDeCo/イデコに「65歳未満まで」加入できるようになった

・企業型DCに「70歳未満まで」加入できるようになった(企業による)

・iDeCo・企業型DCの受給スタート時期を、75歳まで引き延ばせるようになった

・iDeCoと企業型DCの「同時加入がほぼ一律OK」になった

 

加入年齢上限の引き上げはインパクト大

これまで、DCは“老後の資産づくりのための制度”といいながら、特にiDeCo/イデコは60歳未満までとなっており、昨今の長寿化に対応できていないと批判が多くありました。

 

今回延びたのは5年ですが、例えば会社員の方の上限額(企業年金なし)月2.3万円を積み立てると、2.3万円×12ヶ月×5年=138万円もの増額になります。

これに節税効果と運用効果を加えたら、更に大きな金額も見込めますよね。

 

たかが5年と侮るなかれ!

老後資金づくりの手段として、より重要な位置づけになりそうです。

 

今まで50代の方からご相談を受けると、

「始めたところであと10年もないからやめておく」というケースも多かったのですが、そんな方にもぜひ改めて加入を検討していただきたいと思います。

 

iDeCo/イデコと企業型DCの「同時加入が一律OK」も多くの方に恩恵あり

これまで、「企業型DC導入企業に勤める方がiDeCo/イデコに同時加入」するためには、企業側が『規約変更(企業年金制度のルール変更)』をしてくれない限り【不可】となっていました。(併用できる企業は、制度導入企業のわずか4%)

 

なので、会社員の方に「iDeCoに入りたいのですが」と相談を受けても、「現状は加入が難しそうです」となってしまうことも多かったのです。

 

それが、規約変更なしで【ほぼ一律OK】に!(マッチング拠出をしている場合は不可)

iDeCoと企業型DCにはそれぞれ、加入状況によっての「有利不利」があったので、どんなケースでも柔軟に組み合わせて活用することができるようになり、多くの方に恩恵がありそうです。

終わりに

以上、いろいろと良い方向に改正されることになりましたが、、、

 

DCの活用方法については、公的年金以上に専門家のアドバイスが必要であると感じます。

勤め先の制度によって対応が異なりますし、税金も、そして運用も絡んできますので。。。

 

※「受給スタート時期を75歳まで引き延ばせるようになった」ことによるメリットの説明は、あえて割愛しました。

「DCの受給方法をどうするか(もらう年齢だけでなく一括か年金形式かなど)」「公的年金をどのように受給するか」によって【納める税金にも影響が出る】など、かなりややこしい話になってくるためです。

 

ぜひ、税理士や私たちのようなFPに相談してみましょう。

(DCは特殊な分野なので、税理士・FPでも専門分野にしていないケースがあります。ご注意ください。)

 

この記事では書ききれないこともありましたが、公的年金もDCも「老後資金の要(かなめ)」となる存在ですので、今後も法改正等を含めて適宜情報を発信してまいります。

 

セミナーも対面・オンラインで開催していきますので、ぜひご参加ください!

疑問点や気になる点があれば、お気軽に私たち横浜のFPオフィス「あしたば」のファイナンシャルプランナーにご相談いただければと思います。

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