こんにちは。あしたばアシスタントFP(ファイナンシャルプランナー)の舘野です。
身の回りの物がじわじわと値上がりしており、物価上昇のニュースを耳にする機会が増えました。
そこで大切なのが資産運用。
銀行にお金を置いているだけで預金が増える時代は終わり、さまざまな金融商品を活用しながら自分の力で資産を形成していくことが求められています。
資産運用の一環として、生命保険会社から販売されている年金保険を活用する人もいるでしょう。
その年金保険の中に、トンチン年金と呼ばれる商品があることをご存知でしょうか。
今回はこのトンチン年金について詳しく解説します。
トンチンとはどういう意味?
では早速ですが、ここでクイズです!
トンチン年金を考案したのはどこのだれ?
①イタリアの銀行家 L・トンチさん
②日本の資産家 頓地(とんち)さん
③中国の大富豪 トン・チンさん
↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓
↓ ↓ ↓
正解は①イタリアの銀行家 L・トンチさんです!
イタリアの銀行家であるL・トンチさんが考案した終身年金制度をトンチン年金といいます。
トンチン年金が考案された時代は、「出資者が死亡すると、その年金が、(年金を)受け取る権利を持つ出資者に移される」という仕組みでした。
イメージとして、年金を受け取る権利をリレーのように受け継いでいく様子を想像するとわかりやすいですね。
この仕組みが転じて、現在の日本では、トンチン保険とは低解約返戻金型の(個人)終身年金保険のことを指し、解約返戻金を低く抑える代わりに生きている限り年金を受け取ることができる保険として知られています。
トンチン年金の仕組みは、このあと詳しく解説します。
トンチン年金の仕組み
ここからはトンチン年金の仕組みについて解説します。
結論からお伝えすると、トンチン年金は長生きリスクに備える年金保険です。
このことを念頭に置きながら、まずは下の図をご覧ください。
引用:第一生命「とんちん年金『ながいき物語』」
ポイントとなるのは、図の左側である保険料払込期間です。
赤字の点線は、支払う保険料の総額を表しています。(契約年数に応じて、徐々に支払った総額が増えていくことがわかりますね。)
保険料を支払っているとき(=まだ保険会社から年金を受け取っていません)に、死亡した場合はどうなるのでしょうか。
一般的な年金保険の場合、これまで支払った保険料にいくらか上乗せされた死亡保険金(ここでは死亡返還金)を遺族が受け取ります。
しかし、トンチン年金の場合は保険料を支払っている期間中に死亡した場合、これまでに支払った保険料よりも死亡保険金(死亡返還金)の金額が小さくなります。(図の中でも赤い線=死亡返還金と青い線=解約返戻金が赤い点線を下回っていることがわかります。)
その理由は、本来支払うべき死亡保険金(死亡返還金)の金額よりも小さくして、その分のお金を年金原資に充当し、年金の受け取りが始まればより多くの年金を受け取ることができるように設計されているからです。
同様に、保険料を支払っているときに解約すると、解約時に受け取る解約返戻金は、これまで支払った保険料の総額を下回ることになります。
(※これを低解約返戻金型といいます。)
保険料を支払っている期間中に死亡した(もしくは解約した)場合は、受け取ることができる死亡保険金(もしくは解約返戻金)は、これまで払った保険料の総額を下回ります。
なぜなら、死亡保険金(解約返戻金)を小さくして、将来保険会社が支払う年金原資に充てているため。
そして、保険会社から年金を受け取り始めると、トンチン年金の多くは終身年金(死ぬまで年金を受け取ることができる保険)です。
死亡保険金(解約返戻金)は小さくなるものの、長生きすればするほど受け取ることができる年金の総額は膨らんでいくという仕組みです。
トンチン年金のメリット
①長生きすればするほど多くの年金をもらえる
従来の年金保険は、年金を受け取れる期間を「10年」「15年」と定めていることが一般的でしたが、トンチン年金は、被保険者が生きている限り年金を受け取ることができます。
つまり、長生きすればするほど受け取る年金の総額は大きくなります。
②保証期間がある
長生きすればするほどメリットが大きくなるトンチン年金ですが、例えば年金を受け取り始めてから2年が経った頃に亡くなったとしたら…ほとんど年金を受け取ることができず非常に残念ですよね。
しかし、トンチン年金の多くは保証期間が設定されており、例えば「年金の受け取り開始後まもない時に亡くなったとしても5年分の年金は受け取れます」などと、一定期間の年金受け取りを保証している年金がほとんどです。
トンチン年金のデメリット
①受け取ることができる年金の総額がわからない
自分自身がいつ亡くなるかを知っている人はいませんよね。
そのため、トンチン年金として受け取れる総額は誰も把握できません。
そうなると、支払う保険料が妥当なのかなかなか判断ができず、「長生きすればお得だけど…実際どうなるのだろうか」といった疑問が浮かぶことになります。
従来の(確定)年金保険に比べて、受け取り総額の不確実性は高いといえるでしょう。
②死亡保険金・解約返戻金が一般的な年金保険よりも低く設定されている
繰り返しになりますが、保険料を支払っているときに死亡・解約すると損してしまいます。
セカンドライフをより豊かにするために加入するトンチン年金ですが、「意外と若くして亡くなった」なんてケースも想定されます。
死亡保険金・解約返戻金が(従来の年金保険よりも)低くなるという点を理解した上で加入することが大切です。
トンチン年金はどんな人におすすめ?
「長生きに備えたい!」という人は誰でもトンチン年金に加入してセカンドライフに備えることができますが、中でも独身の方は加入のメリットが大きいといえます。
(※独身の方だけにトンチン年金を推奨する、もしくは既婚者にトンチン年金は不向きであるなど、加入者を選別・断定するような意図はありません。)
トンチン年金は死亡解約金・解約返戻金が低く設定されているため、例えば配偶者・家族がいると、「保険料の払込期間に亡くなってしまった…死亡保険金は少ないし…トンチン年金に加入していなかったらもっと多くのお金を受け取ることができたのに…」と配偶者・家族が嘆く事態にもなりかねません。
一方、独身者は「配偶者・家族にお金を残す」という必要性が低く、むしろ自分自身が長生きした場合にはさまざまなお金がかかるため、自分自身の長生きリスクのためにもトンチン年金に加入しておくメリットは大きいといえるでしょう。
もちろん、既婚者であっても長生きリスクに備える必要はあり、家族構成や体調、資産状況を考慮し、必要に応じてトンチン年金を活用することが大切です。
これからは「長生き」も1つのリスク
トンチン年金について、理解が深まったでしょうか?
ここでもう一度トンチン年金の特徴をおさらいしましょう。
- トンチン年金は低解約返戻金型の年金保険
- 長生きリスクに対応した商品で、生きている限り年金を受け取り続けることができる
- 保険料を払っている期間の解約返戻金や死亡保険金は従来よりも低く設定されている
トンチン年金の仕組みやメリット・デメリットを正しく理解し、老後に備える選択肢の1つとして覚えておくと良いでしょう。
大好評の「無料iDeCoセミナー」も随時開催中!