FPとして

外貨建保険販売資格試験を受験してきました。

こんにちは! ファイナンシャルプランナー(FP)の安藤宏和です。

今朝、「外貨建保険販売資格試験」を受験してきました。

とりあえず合格ラインは突破できたようなので一安心ですが、この資格についてはちょっと思うことがあるので、簡単に綴っておきたいと思います。

「外貨建保険販売資格試験」の概要

この資格は生命保険協会が運営している制度で、2020年度から始まりました。

現在は移行期間ですが、2022年4月からは同試験に合格してライセンス登録をしないと、保険募集人有資格者でも「外貨建保険」は販売することができなくなります。

今までも、外貨建保険を販売するためには保険会社所定の研修・試験を受ける必要はあったのですが、内容は保険会社に委ねられていたので正直かなり緩い内容でした。

それを大きく方針転換して、「業界共通・それなりの難易度・ライセンス制」に変更したのです。

ちなみに、合格ラインは70%(100点満点なので70点以上)となっています。

試験制度導入の背景

銀行窓販での「苦情」急増が主な理由

なぜこの試験がスタートしたのかと言うと、「外貨建て保険に加入した契約者からの苦情が、どんどん増えてるから」というのが結論です。

特に多いのが銀行をはじめとする金融機関の窓販。

生命保険協会の作成資料においても、「銀行等代理店」と名指ししています。

背景・課題認識(銀行等代理店における外貨建保険苦情の動向)

(出所:生命保険協会

ご存知の方が多いかと思いますが、銀行は「マイナス金利政策」の影響により本業である融資事業の収益が大きく悪化しています。

そこで目を付けたのが、投資信託や保険の販売。

中でも手数料率が高い「一時払いの外貨建て保険」は経営上とても魅力的なので、大きなノルマを設定し、行員に積極販売させてきたわけですね。

FP安藤
FP安藤
投資信託は販売手数料が投資金額の3%程度ですが、一時払いの外貨建て保険は5~8%程度もあるんですよ!

銀行員の知識・スキル・マインドに問題が…

自由に書くと決めたブログなのでやや失礼なことも書いてしまいますが、銀行で投資信託や保険の販売に従事するスタッフの方の知識・スキルは、決して高くないというのが正直な印象です。

僕のオフィスにご相談に来られる方でも「銀行で外貨建て保険を勧められて加入した」というケースはたくさんありますが、その経緯や申込時の説明について聞くと

思わず「ええ!?」という声が出てしまうほど、超低レベルな場合が本当によくあります。

そのお客様の保有資産の総額や種類のバランス(アセットアロケーションやポートフォリオと言います)とかしっかりヒアリングせず、「この人これだけうちで預金があるから、これくらいは売れるよね」みたいな発想で提案しているのが見え見えです。

これは決して銀行員の方だけに問題があるのではなく、むしろ雇用主である銀行の販売方針・教育方針が劣悪であるというのが最大の問題と言えるでしょう。

大きなノルマを課して、十分な教育(商品知識だけでなく金融リテラシーと倫理観も必要)もせず、「とにかく支店ノルマ達成のために売って来い!」と言われたら、経験値が低い行員を中心に無茶な売り方をするのは明らかです。

そんな惨状ですから、出るわ出るわの苦情の数々。

苦情事例とかも公表されてますが、引きますよ、ほんと(汗)

日経新聞など各メディアで取り上げられるようになり、金融庁も問題視するレベルまできて、今回の試験制度(資格制度)導入が決まったのです。

外貨建保険に対する個人的な思い

書きながら「顧客本位でない」銀行(全てがそうとは言いませんが)に対する怒りがわいてきたので、つい長くなってしまいました。。。

今回は仕方なく試験を受けましたが、実のところ僕は「外貨建保険をほとんど販売しない」スタイルです。(独立系FPですが、保険募集人の登録はしていますので、保険の販売もしているんですよ~)

外貨建保険は円建に比べて予定利率が高く、支払う掛金に対して目先の保険金額(保障額)を大きくとれるのはメリットだと思います。

しかし、一般生活者が資産形成目的で加入する場合、得られるメリットは少ないし、むしろ大きなリスクを抱えることにもなります。

銀行をはじめ保険代理店の募集人は「円より高金利の通貨で運用するので、長期的にはかなり増える期待が持てますよ」みたいなことを平気で言いますが、

いやいやいや…という感じ。

購買力平価により、長期的に抱える為替リスクは大きい

試験問題にも出る「購買力平価説」で考えれば、長期的に見ると高金利の国はそれ相応にインフレが進むので、低金利の国より通貨安になる可能性が大きくなります。

つまり、低金利の国である日本の円は高くなり、外貨は安くなる傾向にあるということですね。

それを知っていれば、資産形成は外貨建保険をメインにしたらどれだけ大きな為替リスクを抱えることになるか分かるので、積極的に勧めるようなことはしないのです。

上記のようなリスクをちゃんと説明せず、「20年後には●●●%の戻り率なので、今と同じ為替レートで解約したら●●円も増えますよ」とか「為替リスクはありますが、▲▲円くらい円高になってもトントンですから」みたいなトークをしている人が圧倒的に多いというのが現状。

正直、保険も取り扱う「同業」でもある身としてはウンザリしますね。

最後に誤解ないよう書いておきますが、銀行や一般保険代理店などで外貨建保険を販売する人が「全て悪」とは言いませんよ!

目先の保障を大きく取りたいのであれば外貨建保険も選択肢の一つだと思いますし、丁寧にリスクを伝えて募集している方もたくさんいますから。

今回の「外貨建保険販売資格試験」がスタートしたことにより、いろんな意味で保険業界が少しでも健全化されていくことを切に願っています。

 

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